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132.メイドと主人と


~国境を越えた見知らぬ土地~


 木々が生い茂る森の中。

 広がる奇怪な声。


「うわああああ」


 断末魔のような悲鳴をあげているが、死体を見つけたわけでもモンスターが現れたわけでもない。

 これは私の嘆き。

 自身の貴重な報酬が『移動魔法』へと消えてしまった悲しみ・怒り・絶望etcを凝縮した何かである。


「いつまでそんな姿晒してんだよ、おい」


 こちらは追放仲間のレイズ様。

 仲間といっても一緒に追放されたってだけで、現在に至っては、絶望の淵に立たされダンゴムシのように丸まってしまった私を平然とした顔で足蹴にしている。


「おい、クソメイド。いい加減に動けよ」

「……ざまぁで……ハッピーエンド……」

「は?」

「ざまぁでハッピーエンドな物語を所望します」

「うわっ」


 レイズ様はバランスを崩したように身をよじった。

 何故なら私が服を掴んだから。


「馬鹿、おい、離せっ!」

「終わってる、この物語は終わってますよ!」

「終わってるのはお前だっ!」


 一理ある。

 私は掴んでいた服を手離した。


「こうなったらやり直しましょう、もう一回転生して最初から……!」

「うるさい! なんだか知らないけど、1人でやってろ!」


 酷い捨て台詞だ。

 こういう時って普通、2人でこれから一緒に頑張っていこうとか前向きな言葉が出てくるもんじゃないの?

 乱れた服を整えるレイズ様を見上げ、私はわざとらしく大袈裟に呟いた。


「あーあ」


 木々から僅かに光が漏れる。

 追放されようがされまいが、空の色はどこも同じなんだなぁ。


「なんだよ」


 目を細めていた私を、レイズ様は訝しげに見下ろした。


「なんでこんな事になったかなぁと思いまして」

「そんなのお前の自業自得が招いた結果だろ」

「やだなレイズ様じゃあるまいし」


 レイズ様の場合は、悪役なんたら物のレールに乗ったあり得るべき追放劇かもしれないけど、私の場合はそうじゃない。


「こんな私のような凡人が追放なんて、私はいつから悲劇のヒロイン枠にジョブチェンジしたんですかねぇ?」

「悲劇……ああ、救いようが無いって意味でか?」


 違うわ。

 私は顔を逸らした。


「さてと。あ、このキノコ食べられるかな」

「人の話聞け」


 やだよ。


「……おい」

「分かってますよ」


 さっきの話のことでは無い。

 レイズ様の呼びかけに私は気怠く返事をした。

 周りの空気が変わっている。

 音も匂いも色も、さっきまでの森の様子とは全然違う。

 モンスターの群れ。

 いつの間にか私達は囲まれていた。

 ゴブリンと思しき彼らは、手に棍棒のような物を握りしめている。


「来るぞ」

「はいはい。じゃあちゃんと守ってくださいね」


 私は高らかにパチンと指を鳴らした。


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