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127/151

127.君のその手を離さない?


 あれから数分後、我々の醜い争いはとりあえず一旦終結を迎えた。レイズ様の勝利という結果で。


「ごめんね、ルセリナちゃん」

「そいつに謝る必要ない」

「……」


 今の会話でもあらかた察しがつく通り、敗者になったのは私の方。

 理由は簡単。私との争いに埒が明かないと思ったレイズ様は、卑怯な事に友人の力を借りたのだ。2対1じゃそりゃ勝ち目はありませんって。


「おいベル、その手は間違えても離すなよ」

「はいはい」


 惰性で相槌を打つベルさん。

 そんな言わなくても逃げられないけどね。こんななりだがベルさんだって一応成人男性。まともに腕を捕まれたら私の力じゃどうにもならないのである。こうして緩く握っているように見える状態でさえ、私には抜け出せない。まあ、私が非力っていうのもあるかもしれないけど。


「レイズの今の発言、友達が自分の好きだった子と付き合う時に言いそうな台詞だよね」

「あ、分かりますー」

「お前らちょっとは黙ってられないのか」


 呆れ声のレイズ様のだった。

 そんな事言わなくても。

 現実の私は紐でつながれた犬みたいになってるんだから大目に見て下さいって。


「それで、シュタイン。追放までは後どれくらいだ」


 レイズ様がシュタイン先輩に尋ねる。


「追放までの時間は」


 先輩は淡々とした様子で誓約書に目を向けた。そういえばこの人に至っては私の方に見向きすらしないな。


「あと5分ですね」


 とても機械的な回答。というか待って。


「5分!?」


 私の声が室内に響いた。だって5分って。


「そんな。5分じゃもう何も出来ないじゃないですか!」


 出来るとしてもカップ麺くらいだ。しかも食べる時間はほぼない。


「うるさい」


 レイズ様はこちらも見ずにぴしゃりと切り捨てた。眉間に皺が寄っている。


「お前がうだうだ言ってるからこんな時間になったんだろ」

「違いますー元はといえばフェ……」

「シュタイン」

「はい」


 あ、おい、話を聞け。

 私が皆まで言う前にレイズ様は次なる会話を始めた。


「誓約書に施された『偽装魔法』があるのは分かった。制限時間も」


 腕を組み、トントンと指で弾く。先輩は黙ってそれを聞いている。


「でもただ不安を煽るためだけに俺達の前に現れたとは考えにくい。フェリクスの一件があるなら尚更だ」


 いや分からんよ。先輩の事だから単に不安を煽っているだけかもしれない。それこそフェリクス様に指示されたとか何とか言ってさ。

 私は首を大きく横に振り、それは無いと思うと必死に訴えた。一瞬だけレイズ様がこちらを見た。


「……って事は、何か回避する方法があるんだな?」


 あれぇ? 今のジェスチャー伝わらなかった?

 私の反応をスルーして、普通に質問を続けたぞ。回避方法なんて無い無い、無いって。ね、先輩!


「仰る通りです」


 あれ、あるの?

 先輩はレイズ様の言葉に頷くと、何も無い空間に手をかざした。

 ふわり。羽根が舞ったような軽い動き。そこには一瞬のうちに一枚の紙切れが現れたのであった。


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