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122/151

122.過去の男の記憶は頭の中からどころかこの世から消したい


 一瞬にして場が凍る。レイズ様もベルさんもシュタイン先輩も何も言わない。無言で私を見つめている。

 そうか、そういう事なのか。被害者だと思っていた自分が、実は犯人だったのか。そんなミステリー小説みたいなオチ、誰が予想出来ただろう。少なくとも犯人である私は予想出来なかったよ。

 これからどうする? とりあえず今は犯人らしく悪い笑みでも浮かべとくか? こう威圧感たっぷりに。


「ぐふふふふ。よくぞ気が付きましたね。そう、私こそが犯人で……」

「何馬鹿なこと言ってるんですか」

「あれ?」


 シュタイン先輩に一言でばっさりと切り捨てられてしまった。馬鹿なこと? 折角みんなの空気を読んで悪役っぽい感じで振る舞ったのに。カッコいいポーズまで決めたのに。私、何か間違えてましたか?


「そ、それは……どういう事でしょう?」


 私はそっと厨二病感満載の、片手で意味ありげに顔面を覆うポーズを解除して先輩に聞いた。わー、先輩の表情が全然変わってない。本心読めない。


「誰が貴女が犯人だなんて言ったんですか。私はただ『偽装魔法』が使われていると言っただけです」


 そりゃあそうだけど。


「でも『偽装魔法』が使えるって言ったら私ぐらいなんじゃ」

「何故そんな風に思うんです。貴女くらいが使える魔法なら、他の人だって使えるはずでしょう?」

「私くらいって」


 私の顔を見ると、シュタイン先輩は呆れたようにため息をついた。


「いいですか、これはルセリナさんの魔法じゃありません。フェリクス様の魔法です」

「ふぇり、くす、さま?」


 私の聞き間違いだろうか。今、先輩、フェリクス様って言った? もしかしてフェリクス様ってあれ、あの私の大嫌いなクソガキ様か……?

 それが何かの聞き間違いであることを切に願い、私は先輩を見つめ、それからレイズ様を見つめた。聞き間違い、なんだよね?


「なんで身に覚えがないみたいな顔してるんだよ。『あの』フェリクスだろうが。俺の弟の」

「はい、レイズ様の仰る通り、そのフェリクス様です」

「忘れてやるなよ。好かれてる癖に」

「や」


 好かれてねえよ、馬鹿野郎!! なんで自分の命を狙ってくる奴に好かれなきゃいけないんだ! 私は究極のドMか。悲惨な目に合い過ぎて感性バグっちゃったか!? そんな奴さっさと忘れるよ! 封印したい過去だよ!

 ……よし大丈夫、私の殺意はまだ健在だ。


「レイズ様」

「なんだ」

「次それ言ったら、本気でこの仕事辞めますからね」

「はあっ?」


 私は本気だ。


「さて」


 今のやり取りが何事も無かったかのように手を叩くと、シュタイン先輩は再び口を開いた。


「貴女が屋敷を出て行った後、私はある一つの異変に気が付いたのです」

「異変?」

「ええ」


 そう言うと、シュタイン先輩は私の手から例の誓約書を抜き取った。



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