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113/151

113.墓まで持っていくほどの秘密では無いけど、外出てその辺までなら持っていく秘密


 えーテステス、マイクテスト。大丈夫、ちゃんと使えるな。うん。ここでミスったら生涯笑いものになるからな。ちゃんとビシッと決めよう。


「マリアさん」

「何?」

「真の悪とはこういうものですよ………………偽装魔法、解除!」


 パチンと甲高い音を立て、私の指は高らかに鳴り響いた。


「……」

「……」


 辺りがしんと静まりかえる。

 まるで時間が止まったように。

 別に派手な魔法が飛び出たわけでも何でもない。

 今までと何も変わらない景色の中で、私達はただ黙ってその場に静止していた。


「……これは」 


 それはベルさんの言葉だった。

 恐る恐る周囲を見回し、そこに何も変化が無いことを確認すると、彼はゆっくりと首を傾げる。


「別に何も起こってないように見えるけど?」


 そうです、その通り。ベルさん大正解。

 私は心の中で拍手を送った。


「なんの真似かしら?」


 マリアさんはそう言って私の顔を見つめた。


「残念だけど、何も起こらなかったようね」


 勝利を確信したように、彼女の口元にうっすらと笑みが浮かぶ。

 それを見て私もニヤリと口元を緩めた。


「さて、それはどうでしょう? よくよくご確認下さい。貴女自身を、持ち物を、財産を」

「私、自身……?」


 彼女は自分の姿に目を移す。

 あくまで冷静に、余裕のある女性を装っていたその表情が強張った。

 ようやくお分かりいただけましたかね?


「……どういう事?」

「そういう事です」


 さっきまで煌びやかに飾り付けられていたはずのマリアさんは、まるで夢でも見ていたかのように、ごく普通の黒いシンプルなワンピースを纏った女性に戻っていた。


「あなたがあると思っていた財産も、それで買った服も何もかも、全ては偽りだったんですよ」

「偽り?」

「ええ。だってレイズ様の財産なんてものは既に存在しないんですから」


 レイズ様のこの街での財産。私が偽装したのはその全てだった。現金から装飾品、所持しているという意識も含めて全て。


「お前、そんなのいつの間に」

「ちょっととある方に再会しまして、その時に」


 シュタイン先輩と再会したあの日の夜、私は彼からある提案をされた。レイズ様を無事追放させる事ともう一つ。


「『レイズ様の所有する財産を全て処分せよ』とのご命令がありまして、その通り実行させていただきました」


 下手に財産があると、追放されたフリだけして街に残る可能性がある。そこを懸念しての処分せよとの判断だったようだ。


「よく俺の財産なんて全部把握出来たな」

「そこはまあ……私、優秀なメイドなので」


 本当は全部シュタイン先輩情報だけど。さすが毎度レイズ様に付き合わされてただけあって、その辺は怖いくらい詳しかった。こういう人に財布握られたら、たぶん私は死ぬ。


「俺のメイドとか自称してた奴が聞いて呆れる」

「だから最後に確認したじゃないですか。『レイズ様が受け入れてくれるなら』って」

「誰がこんな事待ってると思うか」

「思いませんよね」


 だからずっと黙ってたんだし。

 私だってこんな事にならなきゃ、この街出るまでは偽装してようって思ってたよ。



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