111.ヒロインみたいな反応は台本に載ってない。
マリアさんの魔法で苦戦を強いられてた私。
助けてくれなかったレイズ様に散々文句を言ってたら、どうやら実は助けてくれようとしていたらしい……?
いや待て、それじゃ私が性格悪い女みたいじゃないの。
「そ、そうだったんですか。私の、ために、わざわざ。あり、がとう、ございま、す?」
ばっきばきのロボットみたいになりながら、恐る恐る感謝の言葉を口にする。
本当の本当に感謝していいんだよね? ドッキリとかじゃなく。
「なんでそんなに警戒した口調なんだ」
「や、だって、やっぱりまだ信じられなくて」
「信じろよ」
そう言われても。
「レイズ様」
「うん?」
「具合悪くなったりしてませんか?」
「なんで」
「慣れないことして」
「……」
薬なら確か私の収納魔法にストックしてあった気がする。この場合は何の薬だ。精神安定剤かな。
「はぁ。こういうのがあるから俺は正直に言うの嫌だったんだよ」
なんて大きなため息だろう。
「えーっと……幸せが逃げていきますよ?」
「お前が言うな」
レイズ様は頭を抱えていた。
うん、いや、まあそうだよね。そう言いたい気持ちもよく分かる。それに。
私もついレイズ様と同じように自分の頭を抱えた。
「んーですよね。でも、正直なところ、私の方もこのような展開でどんな反応をするのが正しいのか分かりませんでして」
だってそうだろう? 我が身大事の悪役令息ポジションの男が、実は優しかったとか一体どんなツンデレムーブだよ。違うでしょ? レイズ様は悪役街道まっしぐらでぎゃふんと言わされちゃうタイプのお方でしょ? 私に彼の優しさのギャップを垣間見てしまったヒロインみたいな反応求めないでくれ。
「……」
「あはっ☆」
じろっと睨まれた気がしたので、取りあえず愛想笑いだけ振りまいておいた。☆もおまけで付属しておいた。もういいでしょ、こんなもんで。
「ふふっ」
マリアさんが笑った。他人事だな、ほんと。
「まあまあまあまあ」
私は手を広げ、この場を鎮めるように腕をパタパタさせた。
「レイズ様の助力もあって、ご覧の通り、私は見事、マリアさんの魔法を跳ね除けたという訳ですね!」
「俺は何の役にも立たなかったけどな」
おま、そういう事言う。
「いやいや~そのお気持ち、お気持ちこそ大事なんですよ。結果じゃなくて、過程が大事。ですよね、ベルさん?」
「あ、うん……そうだね」
「ベルさんもそう言ってますし、ね?」
そういう事にしようよ。
「そうね」
「でしょう?」
マリアさんには言ってないけど、この際いいか。
「ええ。だからこそ彼は賭けに負けた」
「そうそう賭けに負け……ん?」
何言ってるんだこの人。
「ルセリナさんが魔法の力をねじ伏せて、無理矢理告白を成功させてしまったから、彼は私の魔法を『解けなかった』」
「……」
「???」
言ってる意味がさっぱり分からない。解けなかったからなんだってんだ。告白は成功したんだからいいじゃないか。
「彼は言ったのよ。貴女の魔法を『解ける』って。賭けてもいいって」
マリアさんは一呼吸間を置いた。
そして私達に向かってにこやかに笑いかける。
「どう、この意味分かったかしら?」
分かりたく、無かったなあ。




