表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/151

108.煩悩の数が足りないので0を三つくらい付けてください


「という訳で、はいこれ」

「……これ?」


 何が『という訳』なのかというツッコミはさておき、食事も終わって別室に移動した私達を前に、ベルさんは一枚の紙切れを差し出した。真ん中にゼロがいくつもある数字と領主ヒューベルのサイン。


「今回協力してくれたお礼。この街のルール自体が変わったから上級市民権って訳にはいかないけど」

「ふむ」

「好きに使っていいよ」

「そうですか、好きに使って……このお金をですか?」

「そうそう」

「……なるほど」


 ……えー、おわかりいただけただろうか。

 単刀直入に言おう。

 

 富豪になった。


「レイズ様」

「なんだ」

「今まで大変お世話になりました。お暇をいただきます」


 この物語、完。

 ご愛読ありがとうございました。

 次回からは『富豪になった女、異世界転生して一発逆転人生』をお送りいたします。


「いやちょっと待て」

「なんですか」


 私はこれから第二の人生謳歌するんだから手短に頼むよ。


「どういうつもりだ」

「どういうつもりって、ねぇ?」


 誰だって宝くじが当選したら即会社辞めるでしょ? 辞表叩き付けるでしょ? 一生遊んで暮らすでしょ?


「メイド、辞めようかなって」

「辞めてどうする」

「このお金で遊んで暮らそうかなって」

「追放は?」


 追放。ああ、そんなのもあったなあ。今となってはシュタイン先輩に握られた私の給与など、はした金に過ぎないけど。


「フリでいいんじゃないですか? 追放されたフリ。あとは念のために、関係者にお金握らせて黙らせておけばオッケーみたいな」


 お金があるんだ。如何様にも出来る。お金こそ全て。よっ待ってました。


「はぁ……馬鹿なのか」

「私はとても真面目ですよ」

「そうか、じゃあこれを見せてやる」

「はいはい、何でもどうぞー」


 レイズ様が空間に手を差し伸ばした。ばしゅっという音と共に光が放つ。

 そこにはまたしても、一枚の紙が握りしめられていた。


「……これは?」

「見て思い出さないのか」

「さっぱり」

「誓約書だ」

「何の」

「俺とお前の追放の」


「……」


 ……。


「えっ」


 そんなもん、あったの?

 でもよく見ると、確かに誓約書の下の方に、私の名前できっちり署名してある。やだ怖い。


「あのー……」

「なんだ」

「記憶に無いんですが」


 きっと誰かが私を罠に嵌めようと偽装したに違いない。そう、例えばフェリクスとか!


「ちょっと手ぇ貸せ」

「あ、はい」


 言われるがままに手を差し出すと、レイズ様はぐいと掴んで例の紙切れへと触れさせた。じんわりと手が温かい。


「光ってる」


 触れた私の名前からは、青白い光が輝いた。これは所謂、反応してるというやつか。


「どう見てもお前だろ」

「ですね」

「お前のことだ、どうせ面倒な事務処理か何かだと思って、内容も読まずに適当にサインでもしたんだろ」

「……かもしれませんね」


 そういえば追放までの事務処理が妙にスムーズだったよね。


「ちなみに」


 下から見上げるようにしてレイズ様の顔を覗く。そんな私を蔑むように、顔だけは整った男がこちらを見下ろした。


「これ破ったらどうなります? まさか死ぬとか?」

「やってみるか?」

「やめときます」


 結局のところ、私は追放から逃れることが出来ない運命にあるらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ