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お食い初め

拙作を読んでいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。やっと食べ物が出てくる記述ですが、のりちゃんはまだ食べられません。これじゃぁ飯テロ詐欺だ。すいません。

 のりちゃんが生まれてから100日が経った。丸々としたほっぺた、腕にも足にも輪ゴムがはまったような窪みが入ってすくすく育っている。僕はのりちゃんの真ん丸なほっぺたが可愛くて、ついつい何度もキスしてしまう。たった100日なのにどんどん姿が変わるから、毎日何枚も写真を撮っては『チームわらし』のグループLINEに投下してるんだ。そして今日は満を持してのお食い初め。僕は、この日の為に張り切ってのりちゃん用の外側が黒塗りで内側が朱塗りの漆器の祝い膳を取り寄せた。

 お食い初めの献立を見て、「わらしさまに赤飯なんて炊かせられません。」と、隆と舞が血相を変えて止めに来るという騒動があったけど、のりちゃんがここに居るのに家出するわけないじゃないか。それに小豆ご飯と赤飯は別物だよと内心呆れたが、僕は食べないからと言うと、しぶしぶ引いてくれた。そう言えば大雑把な舞は翔のお食い初めどうしたんだったっけ?

 首が座ったのりちゃんをおんぶ紐でおんぶしてお食い初めのメニューを作り始めた。おんぶ紐は、最初キッズブランドのしっかりしたものを取り寄せたのに、拘束感があるらしくのりちゃんがむずがったから、いろんなおんぶ紐を取り寄せた。その結果、両腕がだらんと出る簡易式の物と、布製のばってんになった間に跨がせる抱っこ紐を使ってる。のりちゃん何気に自由人だよね。

 鯛に塩を振ってグリルで焼く。茹でた小豆の煮汁と塩を炊飯ジャーに入れてもち米を炊いたら、小豆と混ぜてゴマ塩を振る。おすましにはのりちゃんが好きだった花麩と三つ葉にゆずの皮ひとかけ。筑前煮に、白ワインで煮た黒豆、なますに、おばぁちゃんの梅干し。

 漆のお膳に少しずつ盛り付けた。

 歯固めの石は、オレに任せろ!と言ったいなりが用意してくれた。

 本日渡辺一族に召集をかけた僕は、母屋から出て別邸によそ行き着に着替えさせたのりちゃんを抱えて行った。豪邸を嫌がったのりちゃんも大勢で楽しめる娯楽施設の建設には首を縦に振ってくれたから、体育館くらいの広さの平屋を敷地内に建てたんだ。

 すでに渡辺一族は席に着ていた。お誕生日席に用意された僕が作ったお食い初めの料理の隣には、渡辺一族の中で最年長のさつき婆がスタンバっていた。

 僕がお膝にだっこしたのりちゃんに、さつき婆は、フルフル手を震わせながらお赤飯を口元に持っていく。のりちゃんは何をされているのか分からずキョトンとしていた。お吸い物を口に寄せようとしたさつき婆は、さっきよりもっとブルブル手を震わせていた。お吸い物は冷めているから火傷はしないにしても危なっかし過ぎる。……最年長に拘り過ぎたかもしれない。反省。再びお赤飯、次に鯛の塩焼き、またお赤飯。この流れを3回繰り返すのに恐ろしく長い時間がかかった。退屈になってきたのりちゃんはむずがるし僕は、何事もほどほどにする事が大切だと悟った。


 やっと歯固めの儀式に移れるとほっとして、大事なのりちゃんが怪我をするといけないと思った僕は、やんわりとさつき婆から箸を受け取って、いなりの用意した石に箸で触れてその箸をそっとのりちゃんの歯茎にちょんちょんと当てた。どうかのりちゃんの歯が石のように丈夫に生えていなりの桃を食べてくれますように。

 予想外の出来事もあったけど、無事にのりちゃんのお食い初めを終わる事が出来た。参加した渡辺一族に後は無礼講でよろしくと伝えて、のりちゃんと翔を連れて母屋に戻った。

 哺乳瓶に粉ミルクを入れて調乳ポットのお湯を注ぐ。哺乳瓶を振っていると、翔が


「わらしさま、ボクがのりちゃんにミルクあげたい。」


 4歳児にさせて良いか少し考えた僕は、胡坐をかいて座り、その真ん中に翔に足を延ばしたまま座らせた。のりちゃんを翔の膝の上にそっと寝かせ、のりちゃんを片手で支えながら翔の持つ哺乳瓶に手を添えた。


「のりちゃん、おにいちゃんがミルク飲ませてあげるよ。」


 のりちゃんが、小さな紅葉みたいな手のひらで哺乳瓶を握った。ゴクゴクジューゴクゴクジューと飲む途中で飽きたのかゴムの乳首をペッと舌で押し出した。


「のりちゃん、たくさんミルク飲まないと大きくなれないよ。」


 グイグイと口にゴムの乳首を押し込もうとする翔に、そんなに強引に押し込まなくていいよと、注意した。翔が根気よくのりちゃんにミルクを飲ませようとしていたが、のりちゃんはもうミルクから興味を失くしていた。

 哺乳瓶を置いてのりちゃんを抱き上げてげっぷを出させてると、膝の上の翔がやりたがったが、もう少し大きくなったらねとなだめすかした。


「翔が上手にミルクを飲ませてくれたから、のりちゃん眠そうだよ。」

「ボクものりちゃんとお昼寝する。のりちゃんおやすみ。」


 チュッと、のりちゃんのほっぺたにお休みのキスをしてのりちゃんの隣にコロンと寝転がった。 翔はとってもいいお兄ちゃんなんだ。僕が育てたんだから当然だけどね。

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