おちょぼ稲荷ドライブ
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。えーっと。これでまぢでROM専戻ります詐欺終わりたいと思います。甘酒苦手感ある方多いでしょうが一度チャレンジしてみてください。
最近、客足が途絶えたと思う。やっぱり私の料理の腕では、社会に通用しないのかな?
ため息を吐いた私にコーキが眉間にしわを寄せて詰め寄って来た。
「のりちゃん、ため息ついてどうしたの?僕が何でものりちゃんの悩みを解決するよっっ。」
コーキがいつになく本気120%。これ暴走しそうなやつでコワイ。
「そんなに深刻じゃないんだけど、最近お客さんが来る数が減ったから、私の作るお菓子美味しくないのかなぁって不安になったの。」
「なぁんだ。そんな事か。のりちゃんの作るお菓子はとても美味しいよ。ただ今年の夏は、暑かったから胃が疲れてるお客さんが多いんじゃないかなぁ?」
「ああ、そうか。私はこんな涼しいところにいるから、お客さんの痒いところに手が届くができなかったんだね。」
「のりちゃんは、僕が養うんだからこのパティスリーは、繁盛しなくてもいいんだよ。」
寧ろ1人もお客が来なかったら僕はずーっとのりちゃんを独り占め出来るのに。
「コーキと結婚したけど、私も自分の力を試してみたいのっっ。」
「のりちゃんが、そこまでパティスリーの商売繁盛を願うのなら、おちょぼ稲荷に行ってみる?」
「それ何?」
「商売繁盛の神社だよ。まぁ、行ったところでいなりに会うだけだろうけど、月末は屋台も出るから賑やかだよ。僕車出すから今から行こうか?」
「……どんなとこか一回見てみようかな。」
「のりちゃん、今晩は夜店で買い食い三昧だから手ぶらだよ。ほら。早く用意して。」
コーキに促されて、おちょぼ稲荷に行く準備をして車に乗り込んだ。
今日は、スヌーピーみたいな型の車だ。コーキがどんな基準で運転する車を選んでいるのかは、解らないけど、いつも助手席は快適だし寝てても良いよと優しく諭されるので、私はコーキの運転中結構な割合で寝落ちしている。凄くそれが子供じみていて恥ずかしい。
確かにコーキに育てられたんだから、コーキが私の事を子供扱いするのはしょうがないと諦めているが、たまには頼って欲しいし、対等な関係になりたい。
座敷童のコーキと人間だった私では釣り合いが取れない事は、分かっているんだけど。
油揚げとロウソクを奉納して、冷えた棒キュウリの漬物をかじっているのに、今晩はいなりが出て来ない。いなり仕事が忙しいのかな?
チコちゃんや、カハクちゃんにも相談したいけど、やはりコーキの親友のいなりに意見を聞きたい。クラマは、あんなに親身に勉強をみてくれても、コーキのことに関しては全く後方支援さえしてくれない。
グツグツ泡立つ油に串カツがドンドン投げ込まれ揚げたてをバットにドンドン持っていく店先で、串カツに味噌カツかソースを着けてここで食べろ。と言われた屋台は、溢れた味噌やソースで靴底がベタベタして嫌だと思うのに、他のお客さんは美味しそうにはふはふと次々に揚がった串カツを口に入れて行くので、私も周りから浮かない程度には頑張って串カツを食べた。
全ての夜店を覗けるくらいには往復した私達は、車に乗り込んで我が家に向かう。
「流石しょっぱいものばかりだったから、デザート欲しくない?」
「確かにそうだね。コンビニがあったら寄ってみよう。」
車のHDDから流れる曲は聞きなれない鼻声の男性シンガー。
「コーキこの人好きなの?」
「違うよ。僕が失ったものを取り戻した記念に再生してみたんだよ。のりちゃんが生まれるずーっと前の昔の曲なんだ。ドラマの主題歌で、愛しい人が亡くなった哀しみを表現したんだって。」
「へぇ〜私達の真逆だね。デザートはヨーグルトに甘酒かけて食べない?」
「のりちゃんは、ラブ要素より食い気優先だね、そんなとこも大好きだけど、それじゃぁ今晩のデザートはヨーグルトの甘酒がけにしよう。」
コーキは、優しく笑って最寄りのコンビニを目指してくれた。おちょぼさんに参拝したけど、お店が繁盛するとコーキを疎かにしてしまうから、来月からはおちょぼ稲荷に行くのを止めようと心に固く誓った。
だってコーキを他の人に取られたくないと強く思ったんだもん。




