その後の二人
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。毎度ROM専戻ります詐欺すいません。完結するとランキングに入っちゃう仕組みを忘れておりました。日間ランキング入り&評価100件超えありがとうございます。遊牧少女を花嫁にを今電子書籍で読んでいますが、WEB版より更にブラッシュアップされていて、アユとリュザールに萌え萌えしております。
サツマイモと、リンゴをオレンジジュースでコトコト煮ながらレーズンにお湯をかけて油抜きをしていると、コーキが後ろから抱き着いてきた。
「コーキ火傷するからちょっと離れてて。」
「のりちゃん冷たい。僕今のりちゃんに甘えたい気分なんだけど。」
ぎゅっと抱きしめて首に顔をうずめるコーキはいつになく悄然としている。
「レーズンお鍋に入れたら手が空くからちょっとリビングで待ってて。」
「のりちゃんと離れたくない。」
尚更ぎゅっと抱き込んでコーキが離れてくれない。くっつき虫になったコーキをぶら下げてレーズンをお鍋に入れる。後は静かにコトコト煮詰めるだけだ。
「それでどうしたの?」
「のりちゃん……子供欲しい?」
何を唐突に。
「だって、赤ちゃんが生まれましたの写真付きの年賀状がちらほら届いていたでしょう?」
「う~ん。こればっかりは授かりものだし、コーキって子供作れるの?」
「作ったことがないから分からない。」
「コーキはどうやって生まれたの?」
「気がついたら古い家屋にしゃがんでいた。」
それって自然に発生した系なんじゃないだろうか。コーキ妖怪だもんねぇ。
「それは気合入れても子供はできないんじゃないかなぁ?」
「でものりちゃんお母さんになりたいでしょ?」
「特に今お母さんになりたいわけでもないし、お母さんになりたくなったら養子を貰ってもいいんじゃないかな。」
さらにぎゅぅっと巻きついたコーキが震える声で問いかける。
「本当にそれでいいの?僕のりちゃんが産んだ子供なら父親が誰でも愛せる自信あるよ。」
ムカついたのでべりっとコーキを背中から引きはがすと、両方のほっぺたを引っ張った。餅のようにほっぺたを引き延ばされて美形も台無しである。
「のりちゃん痛い。」
「痛くなるようにやってるんだから痛くなかったら困るし。」
私はリビングから一旦出て深呼吸を繰り返した。一体この憤りをどうしてくれようか。ガチャンとドアが開いてまたコーキがくっつき虫になる。
「のりちゃん怒った?」
「当たり前でしょっっ。何が悲しくて旦那さんに浮気の推奨されなくちゃいけないのよ。」
「でも僕のりちゃんをお母さんにしてあげられないよ。」
「いつ私がお母さんになりたいって言ったのよ?大体お兄ちゃんだってまだお父さんになってないんだよ。やっとお店も軌道に乗ってきたところなのにそんなことまだ考えられない。」
「じゃぁ、お母さんになれなくてものりちゃん僕から離れていかない?」
コーキはどれだけ私を人でなしだと思っているんだろうか。
「そこはさぁ、絶対離さない。くらい言ってくれても良いんじゃないの?」
「のりちゃんにはいつでも笑顔で幸せでいて欲しいから。」
私はもう一度コーキのほっぺたをびよーんと引っ張った。
「私の幸せはコーキの隣にいる事だよ。ちゃんと桃も食べたでしょ?悠久を一緒に過ごすんでしょ?私だって生半可な気持ちで不老長寿になる事を決めたわけじゃないからね。」
「のりちゃんっっ。愛してる。」
ぎゅうぎゅうと抱きしめるコーキの腕をバシバシたたいて苦しいと苦情を言うとリビングのソファーまで縦抱っこで運ばれた。
膝の上に座らされてまじまじと顔をのぞき込まれる。
「コーキ顔近い。」
「のりちゃん、チューして。」
「恥ずかしいからいやだ。」
プイっと顔を背けると、親指をアゴに当てて上を向かされた。啄むようなキスを何回も落としながら
「僕の『のりちゃん』どんな願いもかなえるからずっと僕の隣にいて。」
キスしながらしゃべるって器用だなオイと思いつつも
「コーキの隣に居るから、膝からおろして。」
「嫌だっ。」
どんな願いでもかなえてくれるんじゃなかったのかい。
「お鍋が焦げるといけないから火を止めたいの。」
「僕が止めてくる。」
またまた縦抱っこで台所まで運ばれるとコーキはコンロの火を止めた。何が不安なのかよく解らないけど、私もコーキの事アイシテルってほっぺたに口づけた。恋愛初心者の私からしたら精一杯の愛情表現だ。
感極まったコーキにぎゅうぎゅうと抱きしめられて身動きが取れなくなった私は、お鍋の火を消しておいて正解だと思った。




