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私じゃないのりこちゃん後編

拙作を読んでいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。本好きの下克上外伝が出ていたなんてノーチャックでした。田舎の本屋はすぐに平積みされないので、楽天ブックスで注文したものが今朝届きました。今晩はこちらを楽しみたいと思います。

 カラメル色に上がった春巻きをバットにコーキが乗せるから、お皿にペーパーナフキンを乗せてトゥロンを盛り付けようとしたら、


「のりちゃん、カラメルをペーパーナフキンが吸っちゃうから、もう少しカラメルが固まるまで待ってそのままお皿に盛り付けてくれる?」

「わかった。」


 油切りをしてるんじゃなくてカラメルを固めるためにバットに乗せてたのかぁ。私はカラメルが固まったのを確認してお皿に盛り付けた。

 盛り付け終わったお皿を食卓テーブルに並べていく。『チームわらし』が勢ぞろいするから、トゥロンの量も多い。

 紅茶の葉をどれにしようか迷ったからコーキにどれにするか聞くと、どれでもいいよと言う。キームンや、アールグレイじゃ、トゥロンが負けちゃうんじゃないかな?食べたことないけど。私は無難にセイロンの葉を準備した。

 庭にカハクちゃんを呼びに行って二人で戻ってきたら、いなりも、チコちゃんも、クラマも席に着いていた。


「トゥロンか。懐かしいな。」

「兄さまとわらしが食べつくすから、のり子さんプンプンに怒っていたよね。あたしもあの時お替りしたかったから、他の屋台で買おうとしたけど、他の人の分に残しておこうねって、のり子さんに窘められたんだよ。今日はたくさん食べてやる。」


 いなりとチコちゃんの話し声が聞こえた。また違う『のりこちゃん』の話だ。どんな人だったんだろう。

 温めたポットに茶葉を入れてお湯を注いで蒸らす。ティーセットなんかで出そうものならすぐにお替りを淹れなくてはいけないので、それぞれのマグカップになみなみと注いだ。


「クラマもフィリピンに行ったの?」

「その当時はわらし達と俺はつるんでいなかった。」

「ふ~ん。じゃぁクラマは違う『のり子ちゃん』の事知らないの?」

「知っているが、直接会った事は無い。」


 今まで一度も違う『のり子ちゃん』の話を聞いたことがないのに、なんで急にそんな人の話題が飛び出してきたんだろう。面白く無いなぁ。


「のりちゃんの知らない人の話されてもつまらないよね。ほらふてくされないの。」


 片手で両頬をコーキにぎゅっと潰された。そんなにほっぺた膨らましていたかなぁ。


「のりちゃんは、すぐ口がとんがってくるんだよ。」


 すぐ顔に出て悪かったわねぇ。カハクちゃんがスマホをささっと操作してある写真を見せてくれた。

 その画面には、ハワイアン・レイをぶら下げたコーキ達とおじいさんとおばあさんが写っていた。


「カハクちゃんこのおばあさんが違う『のりこちゃん』なの?」

「そうだよ。このおばあさんが違う『のりこちゃん』。」


 なぁんだ。おばあさんだったのかぁ。ちゃん付けしてるからてっきり若い人だと勘違いしたよ。紛らわしい。そのおばあさんの写真をコーキも懐かしそうに眺めていた。


「のり。もう食べてもいいか?」


 律儀に待っててくれたクラマが早く食べたくて催促してきた。


「うん。召し上がれ。みんなも食べよ。」


 みんなでいただきますをしてトゥロンを食べた。

 ゲロアマだったらどうしようと、恐る恐る口に入れたら、カラメルのお陰でほろ苦いパリパリの皮が美味しい。そして、サバはバナナと言うよりも、お芋みたいだった。これはたっぷりお砂糖使わなかったら、おやつにならないわ。納得。


「久しぶりに食べたけど、こんなにトゥロンってうまかったっけ?」


 バクバク食べるいなりにコーキが


「そりゃぁ、屋台のおじさんがつくったトゥロンよりも、のりちゃんが作った方が美味しいに決まってるじゃないか。」


 当然の顔をしてそう言い放った。


「本場の食べた事無いから分からないよ。」

「じゃぁ、今度のりちゃんをフィリピンに連れて行ってあげるね。他にも行きたい国はある?」

「う~ん。思いつかない。」


 カハクちゃんもチコちゃんもクラマも黙々とトゥロンを食べて旅行の話に乗ってきてくれない。


「のり子、今度の差し入れはこれ作ってくれ。」

「サバどこで買ってくるのよ?」


 ガタっとカハクちゃんが立ち上がって


「庭にサバ生やしてくるから、今からのりこちゃんお替りのトゥロン作って。」

「あたしも収穫手伝う。」


 チコちゃんも庭に出ていった。2人ともフィリピンでお替りできなかった事がよっぽど悔しかったんだなぁ。


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