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はなかちゃんとおデート前編

 待ちに待った土曜日の朝、私はいつもよりも早く目が覚めてしまった。コーキが入れてくれたフルーツグラノーラを黙々と口に入れてる間中、知らない人について行っちゃいけません的な注意事項をコーキがしつこくしてくるのに辟易してしまう。洗面所でコテを巻いていたら、お兄ちゃんが、火傷しそうで怖いから僕が巻いてあげると後ろの髪の毛にカールをつけてくれた。色付きリップを塗って、ポシェットの中身をチェックした。ハンカチ、お財布、携帯、ICカード。うん。忘れ物は無いね。

 待ち合わせのバス停には既にはなかちゃんが居た。


「はなかちゃんおはよ~。おまたせ~。」

「のりちゃんおはよう。まだ待ち合わせの時間より早いよ。」

「家に居てもコーキがうるさいから出てきちゃった。」

「わらしさま過保護だもんねぇ。」

「何がそんなに心配なんだろうね。危ない事なんてないのに。」


 定刻通りに来たバスに乗り込みいざ出発。はなかちゃんと、初めて電車で街まで行くのはドキドキするけど、大人になった気分だ。

 電車を乗り継いでたどり着いたデパートは、上ボタンを押してもちっともエレベーターが来ないから、故障かと思って何度も上ボタンを押してしまった。こんな事ならエスカレーターの方が早かったかもね。なんて言い合い、ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターで7Fまで上がった。チケットコーナーで大人2枚下さいって言うのもちょっと緊張した。

 会場に入ると、独特なお香がどこからともなく漂っている。これぞ『和』ってイメージだ。水槽自体が花瓶になっていてお花が活けてある水槽を優雅に泳ぐ金魚は、鯉くらいの大きさがあるんじゃないかと思うほど大きくて、ひれを見せびらかすかのようにゆらゆら揺らしていた。

 スマホで写真を撮っては実物を眺め、肉眼で見るのと写真じゃ随分違って見えるね。とお互い撮った写真を見せあっこした。着物の形になった水槽の辺りから長蛇の列が出来ていたからはなかちゃんと並んで待っていたら、場内スタッフが並ぶ必要など無いから好きに展示を見て下さいと何度も声をかけられたけど、これだけ並んで待ってる人を押しのけて展示を見る勇気は二人には無かった。後ろのカップルの会話がちょいちょい聞こえてきて、彼氏が彼女に良い恰好をしたいのが見え見えではなかちゃんと、小声であんなすかした彼氏は嫌だねと、コソコソ相槌を打ち合った。

 結構な時間を待っただけの事はあったなと思うくらい、美しい切子の鉢に入れられた『水泡眼』は、目の下の袋をフルフルして泳ぐのがユーモアがあって、写真を撮ろうとスマホを出したら、後ろからグイっと一眼レフを構えたおばさんが押してきたから、びっくりした。大人だからってマナーがいい人ばかりじゃないんだね。


「おばさん、芸術家気取りもいいけど、カメラ持ってれば何しても許されると思ったら大間違いだよ。私達も同じ入場料払ってるんだから。それとも上乗せして入場料払ってるわけ?」


 ……はなかちゃんツヨイ。そうだそうだと、周りから同調する声が聞こえてきて、気まずくなったのかおばさんは人込みに紛れてこの場を去っていった。


「はなかちゃん、かっこよかったよ。」

「ああいう大人マヂ許せないんだよね。」

「そう思っていても声に出せない人多いから、はなかちゃん本当にカッコイイ。」


 はなかちゃんは、照れたのかプイっと横を向いて、次の展示見に行こうと私の手を引っ張った。

 すべての展示物を見終わって、会場を後にした私達は、自分たちのお小遣いで買うには敷居が高いお土産を手にとっては、うわっ高っと冷やかして、お腹もすいてきたので、遅めのお昼ごはんにすることにした。

 ずらりと並んだ椅子に座って待ってるお客さんを見て一瞬ひるんだが、『ここで15分待ち』と看板があったから、座って待つことにした。メニューを渡されてどれにしようかと顔を突き合わせて悩んだけど、名物のわらじトンカツに挑戦することにした。

 わらじトンカツは本当に『わらじ』くらいに大きなトンカツで、びっくりした。こんな大きいのに、すいませんごはんお替り下さいって声が飛び交っていて更にびっくりした。みそだれがたっぷりかかったとんかつを食べてると、確かにご飯がすすんだ。



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