パラちゃんは今日も元気後編
「のり子、お前到頭水やりだけで霊力を高められるようになったのか。」
「そんなの知らないよ。」
「流石僕の『のりちゃん』。」
「もうおうちに戻ってもいい?」
半べそになってるパラちゃんが可愛そうになって、いなりにパラちゃんの腕を放すようお願いした。
「パラちゃん、今度はお兄ちゃんがいる時に、変身してね。きっとお兄ちゃん喜ぶよ。」
「うん。」
ニホントカゲに戻ったパラちゃんをそっと水槽の中に戻してあげた。大好きなパラちゃんとお話ができるようになったと知ったらお兄ちゃんパラちゃんの好物を聞き出してひたすら食べさせてそうだな。
「お兄ちゃん早く帰ってこないかなぁ。」
ボールの中のバナナを潰してバター、卵、砂糖、ホットケーキミックスを混ぜる。パウンドケーキの型に流し混んだら予め予熱しておいたオーブンに入れて後は焼くだけ。
「いなり、パウンドケーキの味、バナナと紅茶と人参でいい?」
「全部バナナでもいいぞ。」
「そんなにたくさんバナナが無いよ。それに、バナナばっかり焼いてたら台所が甘ったるい香りになり過ぎるからヤダ。」
「そんなもんか?」
「そんなものなの。」
「弟妹弟子達は、のり子が作るものなら何でも喜ぶぞ。」
「う~ん。リクエストしてくれた方が何作ろうか悩まずに済むんだけどな。」
オーブンで焼いてる間、食卓テーブルで宿題を片付けている。
「のり子そこ間違ってるぞ。」
「え?どこどこ。」
「3問目。」
手持ち無沙汰になってたいなりが、勉強を見てくれた。コーキはいそいそと夕飯の支度をしていた。小学生の時に、コーキが何でも手と口を出すからキレたら、勉強中はそっとしておいてくれるようになったのだ。
3回オーブンでパウンドケーキを焼いて、冷めたものから切り分けてお尻の部分を味見した。うん美味しい。ホットケーキミックスは、魔法の粉だね。それから1個ずつ包装していなりの弟妹弟子へのお土産完成。
1度お兄ちゃんが帰ってきたから、パラちゃんの事を言おうとしたけど、コーキに翔が塾でソワソワして気もそぞろになったらかわいそうだから後にしなさいと言われた。ちぇっ。早くお兄ちゃんに教えてあげたかったのに。
お弁当を持ったおにいちゃんが塾へ出かけて行った後、3人でコーキの作った晩ご飯を食べた。
土曜日にはなかちゃんと、アートアクアリウム展に行く約束をしたと話すと、いなりが弟妹弟子を増員しておくかとつぶやいてスマホをいじっていた。どこに弟妹弟子を増員するんだろう?
コーキからは、知らない人について行っちゃだめだからね。とか、道を聞かれても自分も分からないと言いなさいとか、またまた口うるさくあれこれ言うからふてくされてしまった。
もう中学生なんだから、知らない人になんかついて行かないっての。
食後にコーキが剥いてくれた梨を食べて、いなりはお土産を持って帰って行った。
お風呂に入った後、パラちゃんの水槽の前でお兄ちゃんが帰って来るのを今か今かと待ちわびていると、コーキがドライヤーを持ってきて髪の毛を乾かしてくれた。どうして髪の毛を乾かしてもらうと眠くなるんだろう。
「ただいま~。」
「お兄ちゃん。お帰りっ。パラちゃんがね。」
「パラちゃんがどうしたの?」
「パラちゃんが、人間に変身したんだよ。」
「わらしさまどういうこと?」
「水やりだけでも霊力が高まっちゃったみたいで、パラちゃん、いなり達みたいな神使に進化しちゃったんだよ。」
「じゃぁ、パラちゃんと話もできるの。」
「そうだよお兄ちゃん。パラちゃん小さな女の子だったよ。」
お兄ちゃんを引っ張っていき水槽の蓋を開けた。ちょっと小声で
「パラちゃん、お兄ちゃん帰ってきたから、変身して。」
パラちゃんは水槽から出てきて変身してくれた。
「お兄ちゃんこんばんは。」
「パラちゃん。かわいい。」
まだビクビクしているパラちゃんのあたまをお兄ちゃん優しくなでて好きな食べ物を聞いていた。コオロギが好きと小さな声で言うパラちゃんに、人間に変身してる時はコオロギは食べないでねって真剣にお願いしてるお兄ちゃんを見てゲラゲラ大笑いしたら、のりちゃん笑い過ぎとお兄ちゃんにたしなめられた。




