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パラちゃんは今日も元気前編

「コーキ、お弁当のおかず作るの手伝うよ。」

「じゃぁ、アスパラのベーコン巻きを作ってもらおうかな。」

「イエッサー。」


 ピーラーでアスパラの皮を剥くと、根元の硬い部分を切り長さを半分に揃えて切った。くるくるとベーコンを巻き付けてフライパンに巻き終わりを下にして乗せていくと蓋をしてさっと時計を見た。時間になって蓋を開けてベーコンの焦げ目をチェックしたら裏返して焦げ目がついたら、醤油とみりんを回し入れて煮炒める。お弁当箱に詰めたご飯を冷ましている間に朝ごはんを食べる。

 コーキは最近、朝食にフルーツグラノーラをよく出す。フルーツグラノーラにココアを勝手に振ってくる。たまにコーキは私じゃない誰かの面影を探しているようでそういう時はなんだかイラっとする。


「パラちゃん、行ってきます。」


 水槽の中に出来上がった自然世界の住人パラちゃんにそう告げたら、いつもは顔を見せないのに、オズオズと這い出してきて久しぶりにパラちゃんを見た。


「おに~ちゃ~ん。パラちゃんが顔出してるよ。」


 ドドドと階段を慌てて降りてきたお兄ちゃんが、水槽に顔を近づける。私が捕まえたパラちゃんをお兄ちゃんはとっても大切にして可愛がっている。パラちゃん今日も元気だなぁ。ずっと長生きしてほしいな。パラちゃんが顔を見せてくれたから今日はきっと良い事があるねと二人で笑っていたら、コーキに遅刻するよと急き立てられた。

 待ち合わせ場所に先に着いていたはなかちゃんが、手を振ってくれた。


「はなかちゃんおはよ~。お待たせ。」

「のりちゃんおはよう。全然待ってないよ。行こっ。」

「うん。」

「のりちゃん、今度の土曜日金魚見に行かない?」

「あ、TVで宣伝してたやつだよね。行きたい。」


 はなかちゃんと、土曜日はデートだ。楽しみだな。


「陸川さん、渡辺さんおはよう。何盛り上がっていたの?」

「小鳥遊さんおはよう。土曜日にはなかちゃんとお出かけしようねって話してたんだよ。」

「私も一緒に行きたいな。」

「のりちゃんと、二人で出かけるんだから、わらしさまは来ないよ。」

「な~んだ。じゃぁ行かない。」


 嫌だな、このガツガツ来る感じ。小鳥遊さんとコーキに接点なんて全くないのに、ちょいちょいこうやってコーキに会えるタイミングをうかがってるのが怖い。そのうち家にアポなし突撃してきそう。せっかく今朝はパラちゃん見れたのに、小鳥遊さんのお陰でちょっと胸の奥がもやもやする。

 授業が終わって、はなかちゃんは部活に行くと言うから一人で帰ろうと校門まで歩いていたら、


「のり子迎えに来てやったぞ。」


 いなりが校門の外で待っていた。


「いなりっ。どうしたの?」

「ああ。今朝のり子んちからうっすら霊気が漂った気がしたから覗きに来た。」

「えっ?お化け?」

「違う。わらしが居るのにのり子の家に悪いものが憑くわけないだろう。」

「あっそっか。コーキって凄いんだったね。うちに居ると口うるさくて暑苦しいから、コーキが凄いって忘れちゃうんだよね。」

「お前なぁ。少しはわらしの努力を労ってやれよ。」

「わかってるよぉ。でもさ、私もう中学生なのにコーキがすんごい子ども扱いするんだもん。」

「のり子は、まだ子供だろ。この前もクラマに高い高いしてもらって喜んでいただろ。」

「あれは、テストの点数が良かったご褒美だもん。」

「ご褒美に高い高いして欲しいなんてねだってる様じゃまだまだ『おねんねちゃん』だ。」


 そう言っていなりが頭にポンポンと手を置いた。ふんだ。そのうちいなりがビックリするくらいカッコイイ大人になってやるんだから。わたしは心の中で新しい目標を立てた。


「ただいま~。いなりがきたよ~。」

「のりちゃんおかえり。」


 家に帰ると、リビングにいなりの手を引っ張って連れて行った。いなりは、ぐるりと辺りを見回していたが、パラちゃんの水槽をじっと睨んで、


「おい。隠れてないで出てこい。」


 パラちゃんが姿を現すと、水槽からパラちゃんを掴んで出した。


「いなり。パラちゃんに何するの!」

「お前、人化できるようになっただろう。」


 パラちゃんは、小さな女の子に変身した。


「怖いよぅ。怒らないで。」

「怒ってない。お前、神使に進化したんだな。」

「コーキー。パラちゃんが人間になったよ。」


 台所からエプロンで手を拭きリビングにやってきたコーキに私は素っ頓狂な声をあげた。







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