恥ずかしい入学式
台風大丈夫でしたか?
今日は、いつもより緊張してる。はなかちゃんと同じクラスになれればいいんだけど。
中学の制服はぶかぶかだし、髪の毛も結ばなくちゃいけなくて堅苦しい。パンをかじっている私の髪の毛をコーキがブラシで梳いて耳の下で二つに結んでくれた。クラス別名簿が張り出されたそれをドキドキしながら名前を確認したら、はなかちゃんと同じクラスだった。陸川 花果 渡辺 のり子、ちゃんと上下に名前があった。良かった。はなかちゃんと今年も同じクラスで1年を過ごせる。
はなかちゃんと抱き合って今年も一年よろしくねをしていたらコーキが、スーツ姿で近づいてきた
「のりちゃん、はなかちゃんと同じクラスでよかったね。」
ニコニコと笑いながら近づいてくるコーキにあわてて
「そうだよ。はなかちゃんと私の愛は最強だからねっっ。コーキは先に体育館に行っててよ。」
「うん。体育館でのりちゃんを撮影するスタンバイしておくね。」
「やめて。恥ずかしいから。」
「のりちゃん、諦めてね。のりちゃんの入学式を撮影してくるのを条件に今日みんな欠席してるんだから。」
カハクちゃんも、いなりも、チコちゃんも、クラマでさえ顔立ちが整っているから、居るだけで眩しいオーラが漂って目立つ。私の行事がある度に誰かが参加するから私も衆目にさらされてた。私は目立たず平穏に過ごしたいのに。
はなかちゃんと、話していると知らない女の子が近づいてきた。
「初めまして。私小鳥遊 姫乃です。」
「あ、初めまして。渡辺 のり子です。」
「陸川 花果です。」
はなかちゃんが教室内の温度を冷凍室並みに下げている。
「はなかちゃん、穏便に。」
「小鳥遊さん何の用?」
「渡辺さんと先程話をしていた男性はお父さんじゃないよね?」
「コーキはお父さんじゃないよ。」
「コーキさんは、渡辺さんのお兄さん?」
「ちょっと、小鳥遊さん、わらしさまを名前で呼んで良いのはのりちゃんだけなんだよ。」
「あらそうなの?」
「わらしさまは、のりちゃんを溺愛してるから、小鳥遊さんなんてお呼びじゃないんだから。」
保育園も、小学校もおませな女の子がコーキにべたべたしようとすると、はなかちゃんがいつも追い払ってくれた。はなかちゃんの勇ましい姿にほれぼれしていると、暖かな両腕が優しく私を包み込んだ
「僕がなりたいポジションはのりちゃんの旦那さんだからね。はなかちゃんありがとうね。」
「コーキっっ。そういう恥ずかしい冗談やめてって言ってるでしょ。」
「わらしさま初めまして。小鳥遊 姫乃です。姫乃って呼んでくださいね。」
「小鳥遊さん、のりちゃんと仲良くしてね。のりちゃんも、はなかちゃんも早く体育館に行かないと、遅れちゃうよ。」
「らじゃりんこ~。はなかちゃんいこっ。」
自分でも生ぬるい返事だとは思うけど、めんどくさそうな小鳥遊さんを置いて、はなかちゃんと手をつないで体育館へ向かった。
滞りなく入学式が終わり、教室へ戻ってくると出席番号順の席順だから、廊下側の後ろの席にはなかちゃんと前後して座った。廊下側の窓を開けるよう先生に言われたから窓を開けたらコーキが立っていた。手を振りながらビデオ撮影してるからすごく恥ずかしかった。
家に遊びに来たいと食い下がる小鳥遊さんをスルーしてはなかちゃんと仲良く帰ってきた。
はなかちゃんと、すし太郎で寿司ケーキを作る約束していたんだもんね。
タイマーをセットして出かけたから、ご飯も炊けている。ボールに移したご飯に、彩ちらしの具とすし酢を入れて切るように混ぜるはなかちゃんの隣で、私は魚肉ソーセージを花形にくり抜いていく。牛乳パックを5センチくらいに切って四角い型に代用する。お皿に牛乳パックを置いて桃色になったちらし寿司をぎゅうぎゅうに詰めて、コーキが焼いてくれた錦糸卵を乗せて、魚肉ソーセージのお花を飾った。はなかちゃんも同じように牛乳パックにちらし寿司を詰めてトッピングしている。牛乳パックを外して四角いちらし寿司ケーキ完成。コーキとお兄ちゃんの分もテーブルに運ぶ。テーブルには、コーキが作った冬瓜と油揚げの煮物も置いてあった。とろみがついた冬瓜の煮物は、私の大好物なんだ。
「のりちゃん、はなかちゃん入学おめでとう。コーラで乾杯。」
「「「かんぱ~い。」」」
4人で食べたお昼ご飯は、とっても美味しかった。




