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のりちゃんの自由研究

「コーキ、夏休みの自由研究、去年は鳥さんの観察だったけど、今年は、はなかちゃんと鳥さんのお家を作ろうって約束したの。カハクちゃん教えてくれるかなぁ?」


 確かに『チームわらし』の美術班カハクちゃんだけど、なぜ僕に頼ってくれないんだっっ。


「都合のいい日聞いておくよ。はなかちゃんはいつがいいのかな?」

「午前中だったらお稽古無いからいつでもいいって。」


 カハクちゃんにLINEで都合を聞いたら、来週の水曜日なら行けると返事が返ってきた。

 翔も作りたいというから、『巣箱製作キット』を3つ取り寄せた。


 ◆◇◆


 新聞をしいたテーブルの上で、翔が青、のりちゃんが水色、はなかちゃんが緑の『巣箱製作キット』を梱包された箱から出して、パーツが全部そろっているかを確認している。

 まずはカハクちゃんが持ってきたアクリル絵の具でそれぞれ思い思いの絵を描くことになった。


「この板が屋根になる板だからね。この穴が開いているのが正面、こっちの二つが横で、この大きな板が背面で、この正方形が床だよ。まずはこの紙に描いてある巣箱に自分が描きたいものを描いてみて。」

「カハクちゃんはいめんってなに?」

「後ろの面の事よ。」

「わかった~。」


 流石美術班。先に図案を考えさせるなんて、夏休みの宿題ごときにも全力で挑むんだ。

 翔は鉛筆でメジロを描きだした。真ん丸でコロンとしたフォルムが上手く表現されていると感心した。翔はこの6年間、ポスターや絵で入賞することが多かったんだ。

 のりちゃんは、ダイナミックに虹を描いているが、虹の色の順番が間違っている。


「のりちゃん、虹の色の順番が違うよ。」

「順番なんてあるの?」

「そうだよ。上から赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫の順番だよ。ほら。」

「ほんとだ。」


 僕はスマホで虹の写真を検索してのりちゃんに見せた。のりちゃんは、画面を見比べて虹を描きなおした。

 はなかちゃんは、ひたすら花を描いている。よく落書きで描くような丸い花びら5枚のアレを何個も何個も描いていた。

 それを見たのりちゃんが、


「はなかちゃんのマークがいっぱいだね。」

「お花畑が巣箱だったら素敵でしょ。」

「うん。かわいいね。」

「カハクちゃん、底がどこにも描いてないけど、どこに底を描けばいい?」

「のりこちゃんは底にも描きたいの?」

「うん。」

「のりちゃん、底は木に設置する時に見えないよ。」

「だってパラちゃん描きたいんだもん。」


 カハクちゃんがフリーハンドで四角を描いてここにパラちゃんを描くように言った。翔が下書きをカハクちゃんに見せて、アドバイスを貰って描きなおすと、黙々と本番に没頭していた。

 はなかちゃんも、カハクちゃんにOKを貰ったので、アクリル絵の具で花を何個も描いている。OKと言うよりよその子の事はどうでもいいんだと思う。底にパラちゃんを描いたのりちゃんには、カハクちゃんがパラちゃんを撮った写真を見せて細かくチェックを入れていた。数少ないパラちゃんのベストショットを持ってるカハクちゃんのスペック恐るべし。

 絵だけ描かせて組み立ては僕がやろうと思っていたのに、カハクちゃんは、組み立ても本人達にさせると言い出した。翔は6年生だからいいけど2年生には危ないと思う。それでも、カハクちゃんは注意点をとうとうと述べて強行した。


「あ、のりちゃんそれ気をつけないと歪んじゃうよ。」

「……。」

「金槌で指ぶつけないように気を付けるんだよ。」

「……。」

「もうあぶなっかしいなぁここは僕がやってあげるよ。」

「もうコーキさっきからうるさいっっ。私の宿題だから自分でやるのっっ。」

「わらし、過保護すぎ。」


 のりちゃんはキレるし、カハクちゃんにはあきれられた。

 カハクちゃんに台所へ追い立てられた僕は、カルピスをコーラで割って軽くかき混ぜると、氷を足して出来上がった巣箱の評論会をしているテーブルに持って行った。

 どうかこの『天国と地獄』(カルピスのコーラ割の名前)でのりちゃんの機嫌が直りますように。



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