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プロローグ

前作と違いラブ要素が入ります。ラブ要素が不要な方はブラウザバックでおねがいします。

  のりちゃんが他界してから眼球が溶けるのではないかと思う程に泣き暮らした。

 思い起こせば小豆ご飯に飽きた僕が、グリンピースの炊ける香りに誘われて数十年ぶりに家出した先がのりちゃんちだった。

 のりちゃんは、天涯孤独で、無職。これは、僕の能力を遺憾無く発揮出来ると張り切っていたのに、のりちゃんは、保護者のように僕を可愛がる。

 今までの家主は、自分の家が栄える為に僕を繋ぎとめようと必死だったのに、のりちゃんは、僕の生活状況をいつも心配していた。のりちゃんは、近所のちびっこの面倒を見るような気軽さで僕を受け入れてくれたんだ。

 そんなのりちゃんに恋をしない訳がない。

 僕は自分の持てる力をありったけ使ってのりちゃんにアピールしても、いつも子供扱いされて虚しかった。

 iPad にダウンロードされてるのりちゃんの本棚を読み漁って、のりちゃんのお好み男子を演じても笑いネタとしか受け取られず、しまいにはカハクちゃんに同じことをしてはいけませんと説教までくらった。

 僕がのりちゃんを幸せにしたいのに、のりちゃんはいつも、「わらしさまありがとうね。私は幸せだよ。」と言う。そう笑うのりちゃんの孤独は相当根が深い。だから、僕は今世の、『のりちゃんの心』を諦めた。

 のりちゃんの孤独を埋める為にのりちゃんの伴侶も見つけた。大介はもやし男でのりちゃんを預けるのには業腹物だったが、『ヒモ』の大介より僕の方が有能だとアピール出来るから我慢した。思いの外大介はいいやつで、いろんな実験をした結果、僕はのりちゃんの家以外にも移動する手段を手に入れた。これであの写真集のおばあちゃん達みたいにのりちゃんをどこにでも連れて行ってあげられる。僕は着々とのりちゃんの自由の為に準備を重ねた。

 のりちゃんと大介が結婚をして、子供を産む頃には、大介に負けない為に育児にいそしんだし、育児が終わったら、あの写真集のおばあちゃんみたいになれるよう、服もバックも揃えて自家用ジェットで飛び立った。

 僕がどれだけ懇願してものりちゃんは、いなりが用意した不老長寿の桃を口にしてはくれなかった。

 縮んでシワシワになったのりちゃんの細い腕に太い針がつき刺さり、ポタポタと点滴が落ちる様は許しがたく、この辺一帯を焼き払いたい程の苛立ちにかられたが、のりちゃんの子孫が居る事を頭にとどめ自粛した。

 ……のりちゃん、僕いつまで我慢すればいいかな?

「そろそろ最期のお別れを。」と医者に言われ、僕はあざとさ200%でわんわん泣きながら、いなりから預かっている不老長寿の桃をのりちゃんに食べさそうとした。


「わらしさま一生養ってくれてありがとうね。私世界で一番幸せなおばあちゃんだよ。次の人生もわらしさまの住む家に生まれて来るから少しの間待っていてね。」

「指切りげんまん?」

「指切りげんまん。」


 僕とのりちゃんは、新しい(・・・)約束をした。

 のりちゃんが生まれ変わっても迷子にならないように僕はのりちゃんのおばぁちゃんの家にずっと居座り続けた。所有地がどれだけ広がろうとも、この家を建て替えたがらず、縁側からカハクちゃんの丹精込めたお庭を眺めるのが晩年の、のりちゃんの楽しみだった。次に生まれてくるのりちゃんの為に僕は、見た目はそのままに保ちながら、家自体の強度を上げた。

  のりちゃん、早く生まれてきて。

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