のりちゃんと秋の空
拙作をお読みいただき、ブックマークありがとうございます。すいません。恐ろしく先の予約投稿になっていた事に今気がつきましたので今から投下します。
あんなに前世の『のりちゃん』は、グリーンカーテンを拒否していたのに(それは、僕らの事を思ってだったと今なら解っている)今世の『のりちゃん』は、ゴーヤーのグリーンカーテンをカハクちゃんにお願いしていた。
ゴーヤの佃煮も毎年作っているが、今年は完熟させて、実が黄色くなった物を半分に割る。
育った赤い種の周りが甘いらしいと聞いてわざと完熟まで待ったのだ。
ミラクルフルーツの時もそうだったけど、のりちゃんは、化学変化のように、何かを足したり引いたりすると変化するレシピに弱い。だから、ゴーヤーみたいに、苦い野菜が甘くなる事が不思議でしょうがないみたい。
「カハクちゃん、ごーやなのに、この赤いブヨブヨはにがくないね。」
「のりこちゃん、周りのブヨブヨを食べたら種は、ぺってするのよ。」
「は~い。ぺっ」
スイカの種飛ばし競争の影響か、のりちゃんの『ぺっ』は勢いがいい。
「コーキ、黄色いごーやもあまい?」
「このゴーヤは、苦くないけどシャキシャキしてないから食べないよ。」
「ふ~ん、」
「のりこちゃん、ゴーヤの種を食べ終わったら、今度はオキナワスズメウリを収穫するよ。」
「は~い。」
蔦をを長めに切り分けて、ネットから外すと、のりちゃんに渡す。のりちゃんはその蔦の葉をせっせと毟るのに夢中だ。今はまだ緑に白い縞が入った緑のウリボウだが、次第に黄色になって最後には赤く染まる変化が楽しくて、去年リースを作ってクリスマスまで飾っておいたのがいたくお気に召したのりちゃんが、「今年はのりちゃんがリースを作るんだからっっ」と張り切っているんだ。
結構な量が収穫できたのは、もちろんカハクちゃんのお陰だ。美術班のカハクちゃん監修のもと今年はハート型のリースに挑戦するらしい。せっせっと葉を毟っていたのりちゃんが庭の草陰にぱっと走って何かを捕まえて来た。
両手で包み込んでいる隙間から、緑色から瑠璃色に変わる美しいグラデーションが付いてる尻尾がはみ出ていた。
「コーキ、カナヘビ!!のりちゃん、一人でつかまえられたよ。」
「のりちゃん、それはカナヘビじゃなくて、ニホントカゲだよ。」
「にぃにが、ぱそこんで見せてくれたのこれだよ。にぃに、カナヘビのお世話したいって言ってたもん。」
「翔が間違えた名前を教えたんだね。のりちゃんは、翔にその子をプレゼントしたいの?」
「うん。にぃによろこぶよ。」
「水槽持ってくるから待ってて。」
「もう持ってきた。」
カハクちゃんがずいっと、水槽のふたを開けてのりちゃんに、ニホントカゲを入れるように促していた。カハクちゃんの動きは、相変わらずくノ一じみてる。
「ニホントカゲは臆病だから、隠れる場所を作ってあげなくちゃね。」
のりちゃんが毟ったオキナワスズメウリの葉を数枚水槽の中に入れた。その後も、スイミングから帰ってきた翔へ渡す時にどうやってびっくりさせようか、あ~だこ~だ言いあってるうちに、オキナワスズメウリの収穫は無事に終わった。
今年のグリーンカーテンを外す頃には季節がもう10月に入ろうとしていた。空を見上げれば、波状雲になっているから、午後からは天気が崩れるだろう。今日は収穫を午前中にして正解だったと思う。オキナワスズメウリを入れたザルを持って、カハクちゃんとのりちゃんはリビングに移動していった。
手を洗った僕は、台所で素麺を茹でた。水で締めた素麺を氷水で冷やしている間に、トマトを角切りにする。大葉は千切りにして、鯖の水煮缶の身をほぐす。水気を切った素麺をそれぞれのお皿に並べる。いなりと僕はスピード勝負だったから、のりちゃんは、デーンと出すことが多かったけど、まだ食べるのが遅い僕の『のりちゃん』は、デーンと出すと麺が固まってうまく一口ずつ取れない。だから、親指と人差し指で摘まんだ素麺をお皿に小さな円を描くように並べていく。これなら、のりちゃんも素麺がくっついて取れないと騒がなくて済む。盛り付けた素麺の上に、鯖、トマト、大葉を乗せたら、チューブのしょうがを溶いた麺つゆをかけて今日の昼ごはんは完成。
「ただいま~。」
「にぃに、カナヘビ!!!」
あ~あ。びっくりさせる作戦どこにいったんだよ。翔が欲しがったカナヘビ改め「ニホントカゲ」を自分で捕まえられた事をいち早く伝えたかったんだろうな。それはともかく、ニホントカゲは小さい子でも捕まえられるのに、捕まえられない翔の運動神経が、僕は心配。
どこかのTV番組で鯖缶特集されたらしく1ヶ月以上鯖缶がスーパーに並ばないまま、鯖缶のレシピだけたくさん教えられてもだもだしてました。
本日、スーパーに鯖缶あったよと、職場に差し入れしてくれた友人のオススメレシピを取り上げてみました。




