大騒動のプレゼント
「へんっしんっっ。」
TVの前で決めポーズをとる翔。
秋から始まった特撮ヒーロー番組は、大のお気に入りになって録画したそれを暇さえあれば再生して見ている。子供って同じ作品を何度も見る方が愛着を持つよね。抱っこしたのりちゃんに頬ずりすると、むずがっている。30分近く抱っこをしているが、ちっとも寝ついてくれない。手を握ると温かいから、のりちゃん自身も眠いのに寝れない事へいら立ちを感じてる様子。ぽんぽんと背中をたたき、ゆらゆら体を揺らす。首に腕を巻き付けたのりちゃんはやっとウトウトし始めた。
翔はリモコンで巻き戻しをしてまた同じ話を再生した。
まだお布団に寝かすとのりちゃんは起きちゃいそうだから、翔が再生する特撮ヒーローを見て身体をゆらす。
やっとお布団に寝かせれたのりちゃんが起きないうちに、おやつの材料を食卓テーブルに用意して、翔とクリスマスツリーの飾りつけをした。倉庫に行けば大きなクリスマスツリーもあるが、まだ小さいのりちゃんが触れて倒さないように小さいツリーを出した。てっぺんに星をつけて大満足の翔が心配そうに
「わらしさま、サンタさんボクのプレゼント間違えずに持ってきてくれるかなぁ?」
「翔はサンタさんに何をお願いしたの?」
「〇×ライダーク〇ザの変身ベルト!」
「心配だったらサンタさんに手紙書く?」
「うん。」
来春から小学校に上がる準備で、平仮名は書ける様になった翔は何かにつけて、手紙を書くようになった為、リビングには翔専用のレターセットが常備されている。やる気のない卵があちこちに描かれたその便せんは、見ているだけで脱力してしまう。郵送しておくからと書きあがった手紙を受け取った。後で隆と舞にこっそり渡しておこう。
お昼寝布団からむくりと起き上がったのりちゃんにお茶を飲ませた。
「さぁおやつを作ろうか。翔、手を洗っておいで。」
「は~い。」
のりちゃんは、トコトコと自分のスモックを取りに行った。
翔が縦半分に切ったイチゴを、のりちゃんと握った花の型抜きで一緒に型を抜いていく。野菜だとまだ固いから上手に抜けないのりちゃんも、イチゴくらい柔らかいと、上手に型抜きできた。
翔が一口大にちぎったカステラの山にイチゴをちりばめてお花畑を作ったら生クリームとハーシーズのチョコレートシロップを振りかけて今日のおやつは完成。
「「「いただきま~す。」」」
翔は上手にフォークを操って食べているが、逆手にフォークを持ったのりちゃんは口の周りが生クリームとチョコレートソースで悲惨な事になっていた。
「のりちゃんが型抜きしたイチゴ美味しいよ。はいあ~ん。」
翔は、何かにつけてのりちゃんに自ずから食べさせようとする。この前も風船ガムをのりちゃんに食べさせようとしているのを見つけ、慌てて止めた。
「にぃにおいしいね。あ~ん。」
お返しとばかりに、フォークにぶっ刺したイチゴを翔にグイグイ押し付けている。喉の奥まで押し付ける勢いなのりちゃんの『あ~ん』は凄くデンジャラスだ。
◆◇◆
翔とのりちゃんを寝かしつけた後、こっそり隆に、サンタさんへのリクエストレターを渡した。心得たとばかりに楽園で商品検索していた隆が、うめき声を出した。
「わらしさま、完売しています。密林のテンバイヤーも品切れてます。」
「値を吊り上げようと品切れを装ってるんじゃないの?」
「どうでしょうか。当日までに見つかればいいんですけど。」
それから数日、ありとあらゆるコネを使って〇×ライダーク〇ザの変身ベルトを探した隆は、憔悴しきった様子で、翔をトイ〇ラスへ連れていき、〇×ライダーク〇ザの変身ベルトの販売コーナーに張り出された『入荷未定』の札を見せた。
「翔、サンタさんも〇×ライダーク〇ザの変身ベルトが欲しい子供達の分全部用意するのは大変だと思うよ。」
「……ボク、サンタさんがくれる物なら何でもいいや。」
隆から事のあらましを聞いた僕は、ため息をつてクラマにLINEした。
わらし:〇×ライダーク〇ザの変身ベルト手に入らない?
クラマ:のりは、そんなもの欲しいのか?
わらし:翔が欲しがってる。
クラマ:3日あればなんとかなると思う。
わらし:thanxのりちゃんと、クッキー作って待ってるよ。
クラマ:りょ
◆◇◆
雪が降り積もった庭で、スノーボートに乗せたのりちゃんと散歩してると、クラマがやってきた。
無言で例のブツをクラマが渡して来た。
「助かったよ。ありがとう。」
「クラマ~たかいたかいして~。」
僕も無言でクラマに抱っこ紐を渡す。
「のり、今日は寒いからちょっとだけだぞ。」
「は~い。」
「……もう1回は、ナシだからな。」
「は~い。」
抱っこ紐を装着した、クラマに抱かれ飛び立って行ったのりちゃん。
空の散歩なら、自家用ジェット飛ばしてあげるのに、のりちゃんはクラマに抱っこされて飛ぶ方が喜ぶ。
ちぇっ。今回はクラマのお陰で翔のクリスマスプレゼントがゲットできたから、クラマに花を持たせてやる事にした。




