4話
エルフを選べなかったことに心底、がっかりしながら結局、ゴブリンを選ぶ。
あとから弟のマサシにバカにされそうだけど、ゴブリンにする。いちおう2つ理由がある。種族の説明文が人間よりマトモだったのと、見た目はリザードマンよりマシだったから。
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〜種族「人間」〜
法律を生み出した種族として有名。
肉体的には脆弱。
このゲームの舞台「サイフィク」では繁殖力が高い種族で人口が最も多い。
反面、成人するまでの期間が比較的に長い
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読んだ瞬間、「繁殖」っておかしいでしょ!と突っ込んでしまった。なんだろう、この文章から感じる違和感は。
普通のゲームでは
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〜「人間」〜
長所もないが短所もない。
様々なことができる。
どんな特性を持つかはアナタ次第☆
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こういう可もなく不可もない種族じゃないんだろうか。人間の前にわざわざ種族をおいてあったり、肉体的に脆弱とか人口が多いとか、何様視点なの、神なの?そうなの、あなたが神だったの!
そんなわけあるかい!
と一人でのりつっこみに疲れたのと、今後、ゲームをすすめる上で自分のステータスを確認するたびに、この説明文が思い出されるのはイヤだなぁと思った。リザードマンは全身にウロコは私にはムリだ。こういうのが癒される人もいるが私はダメ。ゴブリンは見た目がアバターが少し灰色になるのと、頭にコブみたいな角がはえるくらいだ。
まぁゴブリンの説明文もひどいが、ゴブリンだものしょうがないよねと諦められる。
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〜種族「ゴブリン」〜
最も生息域が広い種族として有名。
夜目が利き活動時間も長く採集が得意。
人口は多くないのは平均寿命がやや短いためで繁殖力も人間には劣る。
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説明文はひどいが、だってゴブリンだもの。まぁゲームとして昼夜の設定があり、夜目がきくのは良いことだ。社会人なのでゲームのプレイ時間は限られる。ログイン時間の都合で夜ばかりになり、まともに弓で狩りが出来なくなったら悲しい。
ここは消去法でなくポジティブにゴブリンにしたことにしよう。そうしよう。
ちなみに選ばないけどリザードマンの説明文がこれ。
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〜種族「リザードマン」〜
「サイフィク」では戦闘が得意な種族。
賭け事や決闘で物事を決める風習が強く残る。
ケガからの回復力が高いが生息域が温帯に限られ、繁殖力もかなり低い。
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全体的に種族のチョイスといい、説明文といい、お客さんのやる気を削っていくスタイルなの?
キャラクター作成を終えると、今日のところは出来ることはない。エルフが選択肢にないのは衝撃的だったが、種族は3種類というのは少ない。少なすぎるのだ。ここから進化か、なんらかの方法で種族が増える可能性もある。あると信じたい。
そう思いながらキャラクター作成画面を閉じようとすると
「未記入の項目があります!」というミニウィンドウが表示される。なんのことかと思うと『name』の欄が赤字で反転している。
「名前か、どうしよう」ゲームの名前は考えてなかった。弓を使うから弓子にしようかと思ったが、安直すぎるのもどうかと思い、悩んでしまう。
まぁ、安直でもよいかと思い、本名を少しモジることにする。
「アイ・ハ」っと入力を終える。「こんどこそ完了ね」
明日からのゲームにしても色々と予想外のことが起きそうな予感がする。弟にもどんな風にゲームをすすめるか相談しよう。
「まさしー、私は種族、ゴブリンにしたけど、あんたのキャラはどうするのー」種族名はちょっと早口で言ってみた。
「ハッ!姉ちゃん、まさかモンスタープレイするの?がんばって」
しっかり聞き取っていたようだ。「それより、あんたはどうするのよ」
「え!やらないよ」
まだ、モンスタープレイを引っ張るのか、くそぅ
「いいじゃない。種族なんてやってみてダメだったら変えればいいじゃない。一緒にゴブリンやろ」
とすすめると
「やだよ。モンスタープレイするゲームなんて。動画でみるだけならよいけど。だいたい友達と約束したし」と弟は家族より友情を優先してくる。
「えー、じゃあ人間にするの?」モンスタープレイということはリザードマンもいやだろうから消去法で人間になるので確認すると、
「うーん、種族は獣人にするよ。バリバリ前衛やりたいしね」
「え!何言ってるの。獣人なんてないでしょ?」弟が変なことを言い出した。
「姉ちゃん、もしかして俺もPGOやると思ってるの?」と意味不明なレベルの発言にかたまっていると
「そもそもPGOはやらないよ、クラスメイトとエンダゲエム一緒にやるって約束したし」と驚愕の裏切り発言。
「やらないの?じゃあ私が弓引くときに肉壁になるはだれがするの?」
「姉ちゃんの本音は分かったし、絶対にやらないよ!」
「そんなアホな!弟に裏切られるなんて!」