2話
そのあとマサシからPGOの正式リリース前の事前登録サイトを聞いて登録だけしといた。
正式サービス開始までにクローズβテストを遊んでいる人のブログや動画を遠距離武器を中心に調べてみた。
攻略ブログなどで弓が使いづらいというは意見は多い。
いわく「弓の狙いが付けられない、弓の耐久度がすぐに減る、矢がまっすぐ飛ばない、だから弓は初心者にはおすすめしない」とある。ただ少数だが正式版では弓を使うと言う意見もある。そのほとんどは「格好良い」から。現実の弓道やアーチェリーを始めるのも同じ理由が多い。
弓矢には百発百中の狙撃手、狩りの女神、魔弾の射手、疾風の弓とか、かっこよさを伝える物語、神話は多い。こういったイメージは大事だ。弓道が礼儀作法を大事にする理由は、そのほうがかっこよいという理由だと私は思ってる。前向きな気持ちがモチベーションにつながる。夢、憧れ、中二病は大切にするべきだ。楽しいのが一番だ。
格好良いの次に多いのは現実的な理由だ。役割分担で後衛を担うことになったから、というものだ。
PGOでは攻撃方法は距離によって3種類に分かれる。前衛、中衛、後衛だ。弓や弩、投槍などの遠距離武器、つまり魔法以外で遠くから攻撃するものを後衛に分類しているようだ。逆に魔法はすべて中衛だ。公式HPのイラストでは剣、杖、弓にされている。これらは強弱の関係にある、剣は弓に強く、弓は杖に強く、杖は剣に強い。
「うーん。弓が最強ってわけにはいかないかー」ちょっと残念になりぼやくと
「しょうがないよ、姉ちゃん。PGOは領地をとりあったりするから、対コンピューターじゃなくて対人戦闘もおおいもの。どの武器にも長所と短所をつくらないといけないんだよ。」
と弟のマサシはいう。
「そのわりには弓が欠点だらけにされてない?」
「いやいや、ブログで言われている欠点にエア反論しまくる、姉ちゃんが言っても説得力ないよ。」
「うぅ、それはそーだけどさぁー」
エア反論というのは『指摘される欠点が道具の欠点ではなく人間の使い方が悪いのだ』ということをブログ主ではなく弟に語ることだ。ブログの制作者宛にメールしたり、コメントするのは怖くてできないから弟に語るのだが「エアプ」「エア反論」と馬鹿にされるようになってしまった。
ただ『弓の狙いが付けられない、弓の耐久度がすぐに減る、矢がまっすぐ飛ばない』のは、それぞれ理由がある。
狙いがつけられないのは、おそらく片目をつぶってるのだ。狙うというと片目をつぶる人がいるが距離感が狂うので狙いはつけられなくなる。片目眼帯ハードボイルドでワイルドな弓使いは『夢』とまで言わないが、かなり難しい。
耐久度が減るのはメンテナンスを怠るから。これは弓に限った話ではなくPGOの武器や道具類すべてに言えることで、水分のついた剣や斧はきれいに拭かないと錆びる、木製品もカビたりする。ただ弓だけ耐久度減りやすいのは弓の保管方法を調べず、他のゲームのように弦を張りっぱなしにしているからだ。弓の弦は張っている状態で射つわけだけど、使わないときは弦を緩めないと弓も弦もいたむ。妙な所でリアル志向にしているのは戦うことでなくゲームとして生産や開拓をメインにしたいからなのだろう。『憧れ』の世界のアイドルもご飯を食べるしトイレにも行く。
弓矢にも日常のメンテがいるわけだ。
矢がまっすぐ飛ばないは理由は色々とありすぎるくらいだが、和弓はまっすぐ飛ばないように出来ている。それを射型の訓練してまっすぐになるようにするのだ。(まっすぐ飛ばしたければ作成難易度の高い弓を作るか、和弓の射型を学ぶのがよいと思う。話は長くなるが弓道は道具の不備を射型、つまり体の動きで補っている部分がある。弓道にはよいところはたくさんあるが、洋弓にくらべて命中率ではどうしても劣るのだ。)
中二病武器の一つに刀があり、私を含め日本人は近接武器最強は刀だと思っている。しかし世界の弓の中で和弓は評価がよいとは言えない。美しさなどは高評価だが飛距離や命中率は海外の弓に劣る。『中二病』は弓は辞めて刀と魔法の世界にお帰りくださいというのが実情だ。
と言う話を長々としてたら弟に「夢や憧れを持った中二病の人たちにゲーム内でPKされたくなかったら、そういう話はしないほうが良いよ」と忠告されました。
夢、憧れ、中二病は大切にするべきだ、といったけど現実に疾風の魔弾を射つ百発百中の狩りの女神はいない。ゲームとしてはびっくりするくらい現実に近いところもあるからPGOで弓の扱いはまっとうだと思う。努力して、工夫して、上手くなっていくのがアーチェリーの楽しさだ。PGOでも使い方次第、使い手の工夫や努力で弓を最強にできるように思える。
「いいえ、私がPGOで最強の弓使いになるのよ!!」思わず決意が声に漏れた。
「あ、姉ちゃん、さっき公式HPでβテスターの声を受けて、遠距離武器に大幅な変更の予定あり!お楽しみに!だって」
「そ、そんなアホな!」
本文中に弓道の命中率の低さを上げていますが現代アーチェリーと現代弓道だと、アーチェリーのほうが命中率に優れます。というか、競技アーチェリーは命中率にのみこだわったスポーツなのです。
ただ戦国時代の弓などは現代の弓道より速射性に優れるなどの話もあり、武器としてみた場合、和弓が世界の弓に劣っているかは、正直わかりかねます。
清朝の弓を復元したところ和弓より飛距離で劣るという実験結果もあり、難しいとこです。