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VRMMOで弓削師〜弓矢のつくりかた  作者: 辻屋
押してダメなら引いてみろと世間では申しますが、両方同時にやってください
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閑話 矢を作る話3

登場人物

アイハ:主人公、女性。現実で学生時代に洋弓・アーチェリーをやっていた経験がある。特に指定がない場合はオハナシの都合で3人の内、最初に喋る。

サダ:主人公の仲間、男性。3人の中で色んなゲームに詳しく、戦闘指揮もする。特に指定がない場合はオハナシの都合で3人の内2番目に喋る。

メハシ:主人公の仲間、男性。3人の中で現実の歴史に詳しく色々と考証したり、検証する役割がある。特に指定がない場合はオハナシの都合で最後に喋る。

「あ〜肩凝った!羽根の細工って緊張するわよね」

「そだなぁ!でも、あと2本だ」

「・・・ぃ、いま、なんて言いました、サダさん」


 メハシくんが震える声で問いただす。やっと終わる作業に感動したのだろうか?ん?あと2本?本?


「サダくん、ねぇ、サダくん、あと2本って?」

「どうした?アイハまで。あと矢が2本で納品分の矢の作業が完了だぞ」

「サダさん、切ってない羽は1本、、、矢羽が、、、あと2枚しかありません」


 1本の矢には3枚の矢羽が必要だ。2本の矢に必要なのは6枚の矢羽だ。


「(矢羽が)足りないじゃない!」

「(納品分に)足りないぞ!」

「(事前に数量の確認が)足りませんでしたね」


「どうするの?(矢羽を)買ってくる?それとも狩りに行く?」

「どうするって言っても(不足分の矢を)買ったり借りたら赤字だろ。今回は(納品量を)減らして、次回に増やそうぜ?」

「すみません。(確認回数を)減らしてないはずなんですが、次回はキッチリやります」


 Product&Gathering Onlineはゲームなので現実にはない便利な仕様もあるが、他のゲームにはあって当然のことがなかったりする。その1つが、インベントリとかアイテムボックスとかいう物をしまう機能、あとそれに付いてくる機能っていうか、アイテムボックスにある物の数ってすぐ分かるじゃない?

 今も完成した矢が、ここに何本あるか?というのを自動で算出してくれたりしない。


「(矢羽を)減らしたら不良品で危ないし、(矢羽を)増やしても意味が無いわよ」

「おいおい、ちゃんと先方には(納品量を)減らすことを連絡するぞ、無許可なら危ないが、そんなに危ない真似はしない」

「うーん。なにか話がズレてきてませんか?矢の確認の話ですよね?」


 正確には、そういった数量を調べたりする事務管理系というスキルがあるのだが、私たちは不得手分野だ。

 なので手作業で(かぞ)える必要がある。

 Product&Gathering Onlineのゲームレビューで最も言い得て妙なのが『定時で仕事終わった?それはリアルか?ゲームの話か?』というもので、ゲーム内の生産作業を仕事にたとえる人も多い。


「そうよ?矢羽の話でしょ?」「確認?その矢羽がないから納品できないって話だろ?」

 そういって私とサダくんがメハシくんを見ると、


「お二人とも話の先が行方不明ですよ」

「行方不明なのは矢羽でしょ?」

「なんだ、矢羽の話か、納品する本数だとばかり思ったぜ」

 その後、紆余曲折はあったが先方と話し合って、一本減らして納品することになった。もちろん次回に無料で矢を1本サービスすることになった。




「なぁ、そういやさ、なんで矢羽は3本なんだ」

「アイハさん、矢羽を減らすと危険って言ってましたね」

 後日、サダくんとメハシくんに聞かれた。

「えぇ!矢羽の意味知らないの?」


「おぅ、教えてくれよ」

「ですね。色んな絵とかイラストでも3本ついてるから、そうするものだと思ってましたけど」

「……えっと、それが一番よく飛ぶのよ!」


「だろうな。で、なんでだ?」

「よく飛ぶのはわかりますが、その理由は?」

「か、カミソリだって二枚刃より、三枚刃じゃない?そんな感じでよく回るから、よく飛ぶ?」


「じゃ、なぜ4枚の羽にしない?」

「そうですね。矢羽のぶん重くなっても、飛距離などの性能がアップするなら4枚でも良い気がします。作る時の計算も楽ですし」

「ごめんなさい。調べてくる」


 知らないことは知らないって言えるのも強さですよね、はい。ジト目になった仲間2人ですが、本気で非難してるわけではない様子。


 いや、まったく知らないわけじゃないのよ。矢羽で矢を回転させてるのは知っている。たぶん、そのへんの効率が良いはずなんだけど、人に説明できるほど詳しいわけじゃない。


「調べてきたわよ!」

「おぉ。俺もググ○たらわかったぜ」

「ジャイロ効果なんですね」


 なんで言っちゃうの!メハシくん!そして調べてくるの?サダくん!

 まぁ、最も効率的に矢を回転させるのが3枚の羽っていうのは理解できた。ものすご〜く簡潔に言うと、矢羽2枚だと空気を全部は受け止められない、4枚だと回転する気流が他の羽にあたって無駄になる部分ができる。


 そしてサッカーとかで無回転のシュートが不規則な軌道をえがいて飛ぶという話を聞いたことがあるだろうか?

 あと鉄砲の銃口の内部でライフリングという処置がされていて、銃弾が回転しながら飛ぶようにされている事を聞いたことあるだろうか?

 ジャイロ効果っていうのは、だいたいは、そうゆうことである。回転してる方がまっすぐに飛ぶ、

 つまり


「急がば回れってことよ!」

「いや、違うだろ」「アイハさん限定でなら、それで良いと思います」




「まぁ、いいや。ゲーム内の設定がどうなっているか調べようぜ」

「そうね。そうしましょう」

「ジャイロ効果はあくまでリアルの話ですし。普通のゲームだと矢羽3枚ないと矢が作れないとか、そういった仕様ですが、このゲームなら2枚羽でも4本羽でも矢と認識されますからね」


 Product&Gathering Onlineは面倒な仕様が多いゲームだが、リアルの物理法則をすべて網羅できているわけではない。というか、それが出来る性能のマシンは存在しない。だから、どこかでゲーム的に処理してる可能性もある。

 たとえば矢羽3枚で性能100%として、2枚での性能が95%という風に設定されているとしたら、廉価版の商品としてアリかもしれない。

(ちなみに現実では矢羽を減らしたり、なくしての実験は危険なので、ぜったいにマネしないでください)


「うーん、矢の鑑定データは性能は25%落ちてるけど、、、飛距離が短くなってるわけではないのね」

「命中率はだめだな。数字通りだ。数が36射だから、たぶんだけどな」

「威力もですね。木に刺さる深さが浅くなってます」


 できるだけ同じ体勢で射つ、的に刺さった場所を紙に記録していく。それを繰り返す。そうすると紙の上に印がまとまっていく、そのまとまりが円になる。その円が大きいほど命中率が悪い、小さいほど良い。

 究極的にいえば、毎回、同じ場所にあたるのが命中率が一番高い。

 ゲーム的にいえば命中率の良い矢は半径10センチの円の中にランダムで当たる。悪い矢は半径20センチの円の中にランダムヒットするってところだろうか?

 正直、この命中率マップ作成は弓のメンテナンスや性能チェックで大事なこと、けど、正直、本格的にやるなら100射くらいやった方が良いんだけど、面倒なのよね。


「4枚だと、逆に性能が落ちるってほどでもないね」

「あぁ。だが無意味な羽根を増やすのはコストにしかならんからな」

「作るのに手間も増えることを考えると4本羽根はダメですね」


「ふーむ。2枚羽根は戦術の1つとしてありかもなぁ」

「どういうことです?」

「あぁ。防衛戦とかで補給がない時に矢を節約になるだろ」

「たしかに。でも商品としては微妙ですね。補給できないなら売りにもいけないですよ」

 男性陣2人が話し込むけど、私は他のことが気になって考え込む。


 しばらく黙っていると


「どうした?黙り込んで」

「アイハさん、気になることでも?」


「ちょっとね。矢の回転数が減ったら、威力も下がるなら逆もありえるのかな」

「・・・たしかに」

「・・・考えられますね」


 全員が口を揃えて

「やってみよっか」「作ってみるか」「試してみましょうよ」

 違う台詞を言う。


「チームワークがなさすぎじゃない?」

「バラバラだなぁ」

「・・・失敗の予感が強くします」


 そ、そんなアホな、なんで、ここまでチームワークないの。


読んでいただき、ありがとうございます。

やや反則ながら、改良型の矢については続きます。


またジャイロ効果など分かりづらい点あれば聞いてください。

自分が誤解してたら、申し訳ないですが、だいたい合ってるはず。


2月9日 登場人物一覧を追加、命中率に関して、追記。その他、誤字修正。

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