短編 異世界退魔伝
眼が覚めると森の中だった。
はて?確かに部屋の布団で寝たはずなんだけどな?
「ここは何処だ?」
「知らねーよ」
答えたのは三本足の烏だ。
此奴は八咫烏のヤタ、俺の相棒だ。
「なんだお前もいたのか?」
「いたのかじゃねーよ。なかなか起きねーから付近を見て来てやったぞ。あっちに道があるみてーだ。」
口は悪いがなかなか気の利くいい奴だ。
ヤタの案内で道に出てみよう。
道は補装されてない幅の広い山道って感じだった。
「上から見て道路はなかったのか?」
「ねーな。遠くに街らしき物が見えるがなんかおかしいんだよ。日本じゃないみてーだ。」
日本じゃない?外国か?
「んじゃ何処だよ?」
「だから知らねーよ!」
怒らなくてもいいじゃないか…
「助けてー!」
道の先から悲鳴が聞こえた
「ヤタ!」
「おー!」
俺たちは急いで駆けつけると小柄な緑色の怪物5匹に恰幅の良いオッさんが襲われていた。馬車があるが馬はいない。既に逃げたのだろう。ってか今時馬車?
怪物といい馬車といい色々疑問はあるが先ずはオッさんが先だ。
しかし、オッさんは緑色の怪物が振り下ろした棍棒を頭にくらい倒れている。気絶しているだけか、死んでいるのか分からないが、先に怪物をなんとかしよう。
「ヤタ!武装だ!」
「おー!」
ヤタが突き出した俺の手に乗ると眩く輝いた。次第にヤタは形を変え、刀になった。黒光りする刀身からは不思議な力を感じる。
俺は刀を振るい怪物に斬りかかった。
「退魔一式、閃!」
振るわれた刀は怪物を両断する。
退魔一式、閃。
簡単に言うと物凄い速さの居合斬りだ。ただ、物凄い速いうえに連続して繰り出せる。ただ連続する場合は集中が必要な為に動けないのが欠点だ。
そうして、5匹の怪物をあっと言う間に斬り裂いた。
「生身だな」
怪物の死体を見ながら俺が呟く。
「あぁ。物の怪の類じゃなさそうだ。」
ヤタ答える。分かったかも知れないが俺は妖退治を生業としている。って言っても陰陽師見たいな術は使えない。侍の妖怪退治みたいな剣技で戦っている。それにヤタの力が加わってやっていけてる感じだ。
一先ず怪物はおいといてオッさんの様子を見る。
脈を見てみるが…ダメだ。絶命している。
「遅かったか…」
「仕方ねーさ」
仕事柄こう言った事もないわけじゃない。俺は神様じゃないから出来ない事もある。そう思わないとやってられない。
ガサガサ
馬車から物音がする。
覗くと頭からピンっと張った犬耳を生やした女性がいた。髪は銀に近い白髪、お尻には尻尾が見える。首には黒い首輪をして手足は鎖で繋がれていた。白い少し汚れたワンピースを着ている。そういう趣味なのかな?
日本語が通じるか分からないが、放っておく事もできないので女性に近づこうとすると…
「ひっ!」
「怯えなくてもいいよ。外の怪物は倒したから」
「ごっゴブリンを倒したのですか⁉︎男はどうしましたか⁉︎」
日本語で通じるみたいだ。でもここ日本語じゃないよな?
「残念ながら息を引き取ったよ」
申し訳なさそうに言うと女性は何か考えてから話した。
「貴方様は…?」
「俺はカズマ。八崎一馬だ。こっちはヤタ。俺の相棒だ。」
「ども。」
「ひっ!まっ魔物⁉︎」
「害はないから安心して」
「ヤザキ様?でよろしいでしょうか?ヤザキ様は貴族様なのでしょうか?それに従魔…テイマーなのですか?」
「カズマでいいよ。ヤザキが性でカズマが名前だよ。貴族でもテイマーでもないよ」
「では…」
「ちょっとまって、俺にも質問させてくれないか?」
「はい。」
「その耳と尻尾は取れるの?なぜ繋がれてるの?」
「カズマ様は獣人を見るのは初めてでいらっしゃるのでしょうか?」
獣人…さっきの怪物がゴブリン…ここ、異世界か⁉︎
「そうだね…どうやら違う世界に来てしまったみたいだ…」
「はい?」
「信じられないと思うけど、俺はこことは違う世界にいたんだ。何故か分からないが起きたら森の中にいてね。助けを求める声がしたから駆けつけたんだけど…兎に角、そんな訳で何も知らないんだ。良ければ色々教えてくれないか?」
「はぁ?」
「じゃ、さっきの質問の続きからだね。何故繋がれいるの?」
「私が奴隷だからです…」
奴隷がいるのか…
「ご存知…ではないのですね。きっと。この国は人族至上主義で獣人は捕らえられれば殺されるか、奴隷にされてしまうのです。普段獣人は森の深くで村を作って生活していますが、運悪く見つかってしまいまして…」
「なるほど…事情はわかった。恰幅の良いオッさんが主人でよかったのかな?亡くなられた場合君はどうなるの?」
「はい、主人が亡くなられた時の解放もしくは共に死ぬ設定をしてなければ所有者いない奴隷となります。今回は後者ですね。その場合は最初に見つけた方に所有権があります」
「俺に所有権があるって事?」
「はい。カズマ様さえ良ければ私はカズマ様の奴隷としていたいと思います」
「解放は望まないの?」
「解放は奴隷商の店でしか出来ません。ですから、店を出た瞬間から襲われる危険があるのです。でしたらカズマ様の奴隷としていたいです」
「俺ならいいの?」
「カズマ様は違う世界からいらっしゃったんですよね?そちらは獣人に偏見はございますか?」
「獣人自体いない世界だから偏見はないな〜でも、君は可愛いからそういうのは望むかもよ?」
「それくらいでしたら奴隷として捕まった時に覚悟はできております。暴力を振るったりしないと約束して頂ければ十分です」
この世界の奴隷の扱いは結構酷いみたいだな…
「わかった。俺はこの世界の知識もないからお願いするよ」
「畏まりました。改めてよろしくお願いいたします。私はリーフィアと申します。では、この首輪に手を当てて下さいませんか?」
「首輪に?」
「これは奴隷の首輪です。魔道具になっていて、主人を登録すると主人の命に逆らえなくなります。逆らうと首輪が締まり、最悪死にいたります」
「物騒な首輪だな。登録しなきゃダメなの?」
「登録されてないと、不意に他人が触った時に私が奪われてしまいますよ?私の為にお願いします」
「分かった。」
そっと首輪に触れると鈍く輝きだした。
そして少しすると修まった。
「これで登録完了になります。よろしくお願いします。ご主人様」
「なんかむず痒いからカズマでいいよ。よろしくリーフィアさん」
「奴隷ですからリーフィアとお呼びください。ではカズマ様とお呼びしますね。あまり軽い呼び方ですと、他の方にカズマ様が舐められてしまいますので」
「分かった」
そうして、亡くなった男の懐から鍵を探し、リーフィアの鎖を外した。
さらにリーフィアのアドバイスで男の所持金とゴブリンの耳を削いで持って行くことにした。なんでも、こう言った魔物に襲われた人達の遺品は発見者に所有権が移るそうだ。だから奴隷のリーフィアもそういう扱いになるそうだ。
ゴブリンの耳は討伐部位って言って、冒険者ギルドという所に持って行けば買い取ってくれるそうだ。お金がない俺たちにはありがたい。
冒険者は腕っ節に自信があるなら誰でもなれるらしく、ギルドカードと呼ばれる証明書は身分証の代わりにもなるそうだ。
そういう訳でリーフィアの案内で近くの街を目指す事になった。馬車は馬がいないので使えないから徒歩だ。
リーフィアは靴を履いていなかったが、馬車の中にあった物を履かせている。あと服も着れる物を着替えさせた。白のワンピース…透けるんだもの。下着つけてないしドキドキしたよ。
3時間ほど歩くと高さ3mくらいの石壁が見えてきた。魔物がいる世界だからこれくらいの塀が必要なんだろう。
俺たちは門番に話しかける。
「コムラの街になんのようだ?」
街の名前はコムラというらしい。
「田舎から、冒険者登録したくてきました。こっちの奴隷は途中ゴブリンに襲われた馬車の中にいました。主人と思われる人物は既に事切れていましたが、奴隷を救う事が出来たので私の奴隷として登録しました。3時間ほど歩いた場所に馬車の残骸があると思いますので確認して貰えれば分かります。こっちのカラスは私の従魔です」
「うむ、筋は通っているな。見たことない魔物だが、様子を見る限り大丈夫だろう。冒険者ギルドで登録する時に従魔登録もするといい。証を付けていれば街でも安心だ。後で馬車の確認をさせよう。暫くは滞在するのか?」
「はい、少なくとも2、3日は滞在しようと思います」
「分かった。宿が決まったら教えてくれ。手間だと思うけどこちらも仕事でな」
「分かりました。冒険者登録後、宿が決まったらここに来ます」
「よろしく頼む。では、ようこそコムラの街へ」
歓迎されて街に一歩踏み出す。
街並みは中世ヨーロッパって所だろうか?科学はそんなに発展してない感じだ。
「俺は従魔かー?」
「しょうがないだろヤタ。この世界じゃ魔物扱いになるんだから。大丈夫、お前は俺の相棒だよ」
そんな話しをヤタとすると…
「ヤタさんって喋るんですね…かなり高位の存在なんじゃ…」
リーフィアの前で喋ってなかったっけ?
「ヤタも俺と一緒にこっちの世界にきたんだよ」
「カズマ様の世界にも魔物はいるんですね」
「いや、いないよ。それにヤタは魔物じゃないね」
「えっ?それじゃ…」
「その話はまた後でゆっくりとね。ほらアレが冒険者ギルドだろう?」
盾と剣の看板が出てる大きな建物が見えてきた。これが冒険者ギルドだ。
中に入るとカウンターに女性が何人かいて、壁には張り紙がある。テーブルもいくつかあり、ガタイの良い男達が酒を飲みながら話している。冒険者ギルドでは軽食もだしているみたいだ。
俺はカウンターの女性に話しかける。
「すみません。冒険者登録と従魔登録をしたいんですが」
「はい、登録ですね。では此方に名前と得意な武器、出身地を記入して下さい。あと従魔も書いて下さいね」
名前はカズマっと。苗字は書かない。苗字があるのは貴族だけらしい。リーフィアは最初に貴族か聞いてきたのはこのせいだ。
武器は…刀って書いてわかるかな?剣にしとこう。
出身地…未記入じゃだめかな?
「すみません。小さな村出身なので村の名前がわからないんですが未記入でもいいですか?」
「はい、かまいませんよ」
いいらしい。あとヤタの事を書いて受付の女性に渡す。
そう、何故か俺はこの世界の読み書きができる。もしかすると喋ってる言葉も日本語じゃないのかも知れない。
「あっ、奴隷でも登録できますか?」
「はい、主人の方の署名があれば大丈夫ですよ。そちらの獣人の女性ですか?」
「はい。お願いします」
「では、此方に記入お願いします」
「カズマ様?私もですか?」
「身分証としてもあって損はないでしょ?」
記入して受付嬢さんに渡す。
「はい、確かに。それではこのカードに血を一滴垂らしてください」
言われたままにナイフを借り、血を垂らすと文字が浮き出てきた。
名前 カズマ
10級冒険者
討伐数 0
依頼成功回数 0
冒険者は10級から1級まであり、以来や魔物の討伐数でランクが上がっていくつからしい。なかに特級なんてのもあるみたいだけど、世界を救った英雄レベルみたいで、ここ数年では二人しかいないみたいだ。今討伐数が0なのはギルドに討伐部位を持ってきて付けてもらう事で数が増える仕組みだそうだ。倒すと勝手に数字が上がるとか夢見たいな魔道具ではないらしい。
「そちらがギルドカードとなります。紛失の際は再発行に手数料がかかりますのでご注意ください。それで今回は初回登録料で一人銀貨1枚です。お二人で2枚ですね」
金かかるのかよ!そういうのは事前に言おうぜ!リーフィアが遠慮気味だったのはこのせいか…
男の遺品の金から銀貨2枚を支払った。
「あっ!このゴブリンの耳を買い取ってもらえますか?」
「畏まりました。討伐数もおつけしますのでギルドカードの提示をお願いします」
ギルドカードとゴブリンの耳を渡す。
「ゴブリンの耳が5つで銅貨5枚ですね。お受け取り下さい。討伐数も5になりました。10になると9級にランクアップしますので、頑張って下さい」
10級は所詮入門者ランクらしく上がるのは簡単みたいだ。冒険者登録は13歳から出来るようで、危険過ぎないよう調整もあるんだろう。
「ありがとうございました。ついでに良い宿はありませんか?」
「でしたら、ギルドの隣が宿になっております。獣人の奴隷でも同じ部屋なら入れてくれますよ」
この世界の奴隷、特に獣人奴隷には厳しく普通の宿は泊めてくれず、馬小屋で過ごさせるそうだ。女性と同じ部屋なのは気恥ずかしいが部屋にいれてもらえるのは助かる。
「ありがとうございます。行ってみます。」
「はい、またお待ちしてます」
ギルドを出て隣の宿へ向かう。
宿屋《翡翠亭》
中にはいるとスレンダーな女将さんが出てきた。
「いらっしゃいませ。ご利用でしょうか?」
「はい、獣人の奴隷でも大丈夫だとお伺いしたのですが」
「はい、大丈夫ですよ。ただ、他のお客様の目もありますので、お食事は別で部屋もベットは追加できませんがよろしいでしょうか?」
「かまいません。他処では部屋にもいれてくれないでしょうから。部屋に入れて別とは言え食事まであるなら寧ろありがたいです」
「そういって頂けると嬉しいですね。冒険者の中には奴隷でもパートナーのように大切にする方もいらっしゃいますので、ギルドの隣ですからそう言った配慮をしております。大体の方は奴隷を使い捨てにしてるみたいですが…見ていて気分の良いものではないですから」
この女将さんは良い人だな。
「ですね。では一部屋で二泊お願いします。あっ!この従魔は部屋にいれても大丈夫ですか?」
そういってヤタを見せる。
「そちらのカラスでしょうか?その大きさなら大丈夫ですよ。大き過ぎれば馬小屋になりますが」
「ありがとうございます。この後一旦門番さんの所に行ってきますので、食事はそのあとお願いします。奴隷一緒に部屋で取りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。お戻りの際お声掛けください。では二泊で銀貨2枚と銅貨40枚です」
袋から銀貨3枚取り出し女将さんに渡す。お釣りで銅貨60枚渡されたから銀貨1枚は銅貨100枚のようだ。
「では行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
宿を出て門に向かう。先ほどの門番さんはまだいたようだ。
「おぉ来たか。宿は決まったのか?」
「はい《翡翠亭》に泊まる事にしました。無事に冒険者登録もできましたよ」
「お前さんは奴隷を大切にする奴だったか。獣人でも人だもんな、貴族とか腐れ冒険者の扱いみると反吐がでるよ」
門番さんもいい人だな。会う人大体奴隷に寛容なんだけど本当に差別あるのかな?…あるんだろうな。最初のリーフィアの状態がそれだもんな。
「オォォオォォゥ‼︎」
そんな事を考えていたら門の外から唸り声がした!門番さんと外をみると…あれは…鬼?
「お、オーガ⁉︎」
オーガってやっぱり鬼か。
「まずい!応援を呼べ!俺たちだけじゃ厳しい!」
門番さんが叫ぶ。相方さんは応援を呼びに駆け出した。
「俺が引きつけます!ヤタ!リーフィアは待機!」
「おっおぃ!無茶だ!」
「カズマ様!」
二人の制止を振り切り、門の上から飛び降りてオーガと対面する。ヤタは既に刀なっている。
向かうとヤッパリでかいな。3m近くあるんじゃないだろうか?
オーガは持っている金棒を振りかざし襲ってくる。
「退魔三式、流!」
振り下ろされた金棒をいなし懐に飛び込むと一気に斬り裂く!真っ二つとはいかなかったが、オーガは致命傷を受け霧になって消えた
「カズマ様!」
リーフィアは門から飛び出してくる。
「お怪我はありませんか⁉︎」
「傷一つないから安心して」
「良かったぁ」
リーフィアがほっとした顔してると門番さんが近づいて来た。
「お前さん凄いな!オーガ相手に無傷か!」
「運が良かっただけですよ」
「いやいや、見た事ない剣になる従魔にあの動きは凄いと思うぜ。しかし、なぜ死体が消えたんだ?お前さんの技か?」
そう、魔物なら死体が残るはずなのに霧になって消えたのだ。あれはこの世界の魔物と言うよりは…
「いえ、俺の技ではないですよ。何故消えたかは分かりません。討伐部位が勿体無いな〜って考えてましたよ」
「違いない。一応周辺を探索してなんかわかったら教えよう。お前さんの腕を見込んで応援依頼するかもしれないな」
「分かりました。今日はこの後宿で休みます。何かあれば其方にお願いしますね」
「おぅ!分かった」
門番さんと別れて宿に戻る。
女将さんに声を掛けて部屋に案内してもらったら、リーフィアと一緒に食事をとった。
「カズマ様?本当にご一緒にいただいてよろしいのでしょうか?」
「一人で食べるより二人で食べた方美味しいでしょ?それにずっと見られてるのもなんか食べづらいし」
「私は奴隷です。主人の後、床で残飯食べるだけでもいいんですよ?」
「それは俺が嫌だな。そんな扱いにがいいなら他の主人当たってくれないか?」
「いえいえ!嫌だなんてありません!寧ろ奴隷なのに優遇され過ぎて…いいのかなって」
「俺だからいいの!」
「リーフィアとやら、諦めたらいい。こいつは頑固だからなー」
「はい!分かりました!頂きます!」
「うん。それでいい!」
「やれやれ…」
食事が終わった後でリーフィアが質問してきた。
「それで…ヤタ様は何者なのでしょうか?」
ヤタが様づけだ。
「ヤタは様じゃなくていいとおもうよ?」
「しかし、主人の相棒さんと言うのであれば敬意を示さねば…」
「人前じゃ従魔扱いなんだからさん付でいいんじゃないかな?なぁヤタ」
「様って言われると悪い気はしないがむず痒いな。さんがいい」
「分かりました。ヤタさんとお呼びします。それで…」
「ヤタは妖怪ってものなんだ。俺の世界にいる魔物みたいな存在。一般的には周知されてなくて、影で存在するものたち。実体は無くて、倒されれば消えるけど、実体がないから普通じゃ倒せない存在なんだ。さっきのオーガみたいな」
「それって…あのオーガは…」
「それよりベットは一つだね」
「私は床で寝ますからカズマ様はベットでお休みください」
「それは俺が嫌なんだ」
「しかし、私は奴隷ですから流石に主人を床で寝ることはできません!奴隷の誇りにかけて!」
奴隷の誇りって…リーフィア奴隷に誇り持ってたの?
「なんかセリフが可笑しいけど、それじゃ一緒に寝るしかないね」
「ふぇ⁉︎」
「だって、リーフィアは俺を床で寝せたくない。俺はリーフィアを床で寝せたくない。じゃあ二人でベットで寝れば解決じゃない?」
「そっそうですが、」
「俺は最初に求めるかもよって言ったよ?」
「かもよってちょっと早過ぎです…心の準備が…」
「奴隷になった時に覚悟出来てたんじゃないの?」
「でっですが…」
「問答無用!」
「ふぁ⁉︎」
俺はリーフィアに襲いかかり抱きしめる。
犬耳を撫でたり、尻尾をモフモフしたりギューっと抱きしめたり。
「かっカズマ様…もうちょっと優しくお願いします…」
人にはないから興味あったんだよね。
暫くリーフィアを堪能していたら
ドガーーン‼︎?
爆発音が響いた!
「何だ!」
「カズマ!あれを見ろ!」
ヤタが外を指す。
そこには忘れもしない相手がいた。
「あんな大きなスケルトン…見たことありませんよ…」
あれはスケルトンじゃない…ガシャドクロだ。俺があと一歩の所で逃してしまった相手…なぜ異世界で?
俺は急いでガシャドクロの元へ向かった!ヤタは既に刀になっている。
ガシャドクロのもとへ着くとガシャドクロの上に黒いローブを着た男がいた。
こいつが元凶だろう。
「おい!」
男に声かける
「ん?おぉ!先刻我輩のオーガを倒しおった若造ではないか!」
「やはらあの鬼もお前が呼び寄せたんだな!」
「はっ!気づいておったか、呼び寄せた事まで…お前は何者だ?」
「他人に聞く前に名乗ったらどうだ?」
「若造が頭に乗るなよ!やれスケルトン!」
ガシャドクロが攻撃してくる。
「退魔五式、連!」
攻撃してきたガシャドクロの腕に無数の斬撃を浴びせる。幾ら硬いガシャドクロの骨でもヤタで斬れない妖はいない!
ガシャドクロの腕は崩れ落ちた!
「我輩のスケルトンが⁉︎己!」
「そいつはスケルトンじゃない、ガシャドクロってんだ!」
「なに⁉︎こいつの名前を知っておるのか⁉︎ではお前も異世界から…そう言えば先日召喚したのに何も現れなかった事があったのぅ…あれはもしや」
「この世界に来たのはテメェのせいか!」
「そのようだの。では主従の契約を結ぼうか?」
「断る!退魔七式、断!」
上段に大きく構え、ガシャドクロを一刀両断にする。前回は逃しちまったから今回は全力で留めを刺しに行く。
ガシャドクロは霧になって消えた。
後には黒いローブの男が残っていた。
「さぁあとはお前だけだぞ?」
ヤタを向け男に宣言する。
「はっはっはぁー」
「何が可笑しい?」
「普通じゃ倒せぬ我輩の配下を意図も容易く倒すとは恐れ入った。だが、まだ捕まる訳にはいかんのだ」
男の周囲が怪しく光る
「眩しい!」
不意に目を離してしまった。
男は火車を召喚して空を逃げていく。
「また会おうぞ!」
「会いたくねーけど、ケリは付けに行ってやる!」
会いたくはないな…
そうして男を逃してしまった。
「カズマ様!」
リーフィアは走ってくる。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ。なんかリーフィアそればっかになってるな」
「申し訳ございません。私も少しでも戦えるよう精進いたします」
「大丈夫だよ。どのみち彼奴が召喚した妖怪達は俺じゃないと倒せないだろうから…」
「どういう事でしょうか?」
「妖は普通じゃ斬れない。俺は同じ妖のヤタを武器に使ってるから切れるんだ。この世界に妖に通じる武器や手段があるかは分からないが、分からないから彼奴をほっておく事ができない」
俺とリーフィアは辺りを見渡す。ガシャドクロの被害で塀は崩れ落ち、家は倒壊している。
「俺は彼奴を追うが、一緒にくるか?」
リーフィアには責任はない。危険に巻き込む必要もない。
「お供いたします」
真っ直ぐな目で返された。覚悟があるようだな。
「じゃぁ一緒にいくか?」
「はい!」
こうして俺たちは男を追い倒す旅が始まるのだった…
おわり