ーーー帰り道ーーー
翔「ハァハァ、勝った、ハァハァ、勝ったぞ。」
工藤「ハァハァ、中々、ハァハァ、やるぢゃねーか。ハァハァ。」
紗季「翔ー!おめでとう!流石だね!」
蓮「なんだろう。凄く悔しいぞ。なんだろう。」
翔「ざまぁみろ‼︎はい!今日バイトだから帰る!サイナラ!」
紗季「帰ろー帰ろー!」
工藤「つ、次は負けないからな。」
翔「はいはい!いつでもどーぞー!ぢゃあ!サヨナラ先生!」
紗季「サヨナラー!」
蓮「ブツブツ...」
勝負はこれで7勝7敗。
最高に気分が良かった。
今までずっと負け続けきたのに、今年は五分五分だ。
入隊までに後一回勝負をして、決着を付ける。
それが、先生への恩返しでもあると考えていた。
そして、帰り道。
道中は敢えて蓮が警察官になる話には触れなかった。
河原へ到着し、一息ついて始めて、蓮に言葉を投げかけた。
蓮「やっぱここだよなー!さいっこう!」
翔「言えよ。」
蓮「え?」
翔「警察官になる理由。」
蓮「だから、言ったろ!」
翔「ちげーだろ。本当の理由を聞かせろ。」
蓮「ほ、本当だって!」
翔「お前から聞いた後色々考えてみたんだよ。お前、大学も指定校推薦で合格してんのに、何回も工藤と進路相談室で話をしてた。しかも、もう2月だぜ。俺も自衛隊の試験受けてるから分かるけど、就職する事を前提に話を進めてないと今の時期に行くか行かないかを決める事は出来ない。
記念受験なら受かって直ぐに就職辞退するはずだろ。
なぁ、俺も話したように、お前も俺に話してくれないか。」
数分間の沈黙が続いた。
俺は別にそれでも良かった。
話すなら、良く考えてから話してほしかったから。
蓮は俯いてる状態から一気に顔を上げ、天を仰いだ後に口を開いた。
蓮「色々な思いがあったんだ。たくさんの。確かにきっかけは翔だよ。でも決めたのは俺だからさ。」
翔「そっか。親は納得いってんの?」
蓮「行ってる訳ないだろ。最近はずっと会話なし。
でもさ!もう気持ちに嘘はつけねーんだよ!昔、俺がイジメられてた時、公園でプロレスごっこって言って皆にボッコボコにされててさ、そしたら近くの交番の警察官が助けてくれたんだよ。そん時に思ったんだよ。こんな大人になりたいって。でも、家を継ぐ話とかもあって諦めてた。
そんな中紗季は小さな頃から夢だった看護師の学校を受験するって言って、翔も自衛隊に入るって言って、ぢゃあ俺はなんなんだって考えたんだよ。俺は、俺はいったいなんなんだってさ。俺だって本当は誰かを救うことの出来る仕事がしたい。お金とかぢゃなくて、この手で!バカだろ。本当に。笑うなら笑え。」
翔「フフッ。 かっけーぢゃん。やれよ。」
蓮「決めたんだ。俺も行く。」
翔「分かった。これで三人の本当の進路が確定したな!」
紗季「なんか、男の子って本当熱くるしい。」
翔「いやいや!君が夢の話ししてる時が一番熱いからね?」
蓮「ハハハハハ!確かに!先ず話が長すぎる!」
紗季「はー?怒った。もう2人に何も貸さない!」
翔「わりーわりー怒んなよ!とりあえず良かったぢゃねーかよ。今日は特別な日だな。」
蓮「俺は、警察官に。」
紗季「私は、看護師に。」
翔「俺は、自衛官に。」
翔「結局全員離れ離れだな!」
紗季「ねー。残された私、可哀想。」
翔「お前に我が母を任せた!」
紗季「了解です!大佐!」
翔「なんだよ大佐って!」
蓮「おい、俺も混ぜろ!」
翔「混ぜねーよ!もう真っ暗だし、バイトだから行くね!またな」
紗季「行ってらっしゃい!」
嬉しかった。
きっと蓮はこれから大変だろうが、俺たち三人が、
それぞれの本当の夢に向かって走ることが出来て。