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人を救うためなら、この後自分がどうなっても構わなかった。
病気の母親を少しでも楽にするために、
高校を卒業し直ぐに陸上自衛隊に入隊した翔。
そこに待ち受ける数々の試練を、
家族をも超える仲間と共に乗り越え、
人間としても、自衛官としても大人になっていった。
そんなある日、未曾有の大災害が日本を襲う。
家族や恋人の安否が確認出来ない中、
翔は逃げ遅れた人達を救う為に、現地へ向かった。
そしてその大災害が、
翔の人生を大きく変えることとなってしまった。
現実を元にした。
本当の物語。
「アルファ01、こちらデルタ2、隊員が一名救助活動中に
ヘリから落下!繰り返す!隊員一名がヘリから落下!」
気が付いたら目の前の世界は、ヘリコプターと厚い雲に覆われた灰色の空だった。
いや、正確には落下している間は数十分、数時間と言っても過言ではない位たくさんの事を考えた。
今までの人生を振り返り、嬉しいことも悲しいことも、
自身に大きな変化や衝撃を与えた出来事全てを思い出した。
そして、地表へと差し掛かる瞬間に考えたことは、
ーーー終わったーーー
ただ、それだけだった。