表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

重たいものでした。

住職さんに後部座席のドアを開けてもらい、車に乗り込みました。


赤信号で車は止まりました。

しょげて、小さくなっているわたしに、住職さんは優しく声をかけてくれます。

「そんなに落ち込まないで、…壊そうと思った訳ではないでしょうし…。鍵をかけないでいた私も悪いのですし、…」

「そうなんですか…。」

わたしはなんとか言葉に出しますが、声がデクレッシェンド(段々弱く)していきます。

思考回路はセーフモードに突入しそうです。

「鍵開いてたんだ…開いてたんだ…閉めちゃった…言ってくれれば良かったのに…。」

やっぱり、ほう・れん・そう は大切ですね。などと、わたしは呟いた後、考えていました。

すると、


「どうやら、降ってきましたね。」

「…」

わたしは、住職さんの声に、一拍おいてから、ゆっくりと反応し、窓の外に目をやりました。

「…ゆ…き…。」

暗く黒い夜空から、真っ白な小さな雪が静かに降ってきました。

「積もらなければ良いのですが…。」

そう言って、住職さんはゆっくりと車を走り出させました。


小雪の舞うなか、車は街を抜け小高い丘に差しかります。

すると、車は右にまがりました。

「もうすぐ、着きますよ。」

住職さんは、ルームミラー越しに、こちらを伺うように、声をかけて下さいます。

「はい…。」

まだ、セーフモードのわたしは、返事をするだけでした。

「そんなに大切に持ってなくてもだいじょうぶですよ。(笑)」

わたしは、左手にしっかりと、握られたドアノブに目をやり、あわててシートの上に置きました。

「えっと…。」

無理して何か話そうとしましたが、何も思い付かず、言葉を濁してしまいました。

そんなようす知ってか知らずか、にこやかに話を続ける住職さん。

「おや、今日は珍しくお出迎えがいるようですね。」

そう言われて、外を見たのですが、何も見えませんでした。

「こんな寒い夜に珍しいですね。」

「さぁ、着きましたよ。」

暗くてよく見えませんが、数寄屋造りの立派な建物の横に車が停まります。

わたしがドアを開け降りようとすると、何かが生い良いよく飛び込んできました。

「きゃ!」

小さく短い悲鳴を上げてしまいました。

見れば、丸々した黒い猫がこちらを見ています。

『ヌァ〜』

猫らしからぬ泣き声です。

…ちょっと、可愛くないかも…そんなことを考えていると、ツカツカ歩みより、デ〜ンと、わたしの膝の上に乗ってきました。

大きなオハギのような、それは温かくは、ありましたが、それなりに重たいものでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ