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星宮 玲衣

住職さんが、祠を前に怪しげな呪文を唱えはじめました。

麻衣ちゃんは、両手をあわせて、目を閉じています。

私もあわてて麻衣ちゃんの真似をしました。

一瞬の静寂の後、静かに優しい声で、住職さんが話始めました。

「さぁ、目を開けてください。玲子さんは姿勢を低くしていただけますか?」

わたしは、言われるまま姿勢を低くすると、目の前に、麻衣ちゃんの顔が迫ってきました。

「一緒になろうね。」

彼女の呟きとともに、翡翠色の瞳が近づいて来ます。

その瞬間、わたしの唇に柔らかい感触を覚えました。

わたしは、突然のことに驚き硬直してしまいました。

すると、麻衣ちゃんの身体が、輝きはじめました。

そして、光の粒になり、わたしの身体を包み込みます。

「えっ?…ハックシュン!」

麻衣ちゃんが、消えた瞬間、寒さを感じ思わずくしゃみが出てしまいました。

「麻衣ちゃんはどこ?」わたしは、住職さんに聞きました。

「大丈夫。貴女の中に彼女もいますから…。さぁ戻りましょう。」

住職さんに促されるまま、わたしは車に乗り込みました。


今は、住職さんの運転する車の中です。

ルームミラー越しに見るわたしの姿は、栗色のロングヘアーに翡翠色の瞳少し丸顔の可愛らしい女の子になっていました。

見た目、十五歳位でしょうか?

わたしは、鈴木玲子と麻衣ちゃんの二つの魂を宿した存在であること、住職さんが宮司さんの真似事をしたために、中途半端に失敗をしてしまった事を説明されました。

「実在する幽霊ですか…」

わたしは小さく呟きました。

住職さんが、申し訳なさそうに、また説明をはじめました。

「本当に申し訳ない。人と同じように、見たり、聞いたり、話したり、感じたりできる、見た目、普通の人間と変わらないけど、存在事態は幽霊のままです。」

「人間には戻れないのですか?」

「現世での玲子さんと麻衣ちゃんの役割を果たせれば、人間になれるとおもうのですが?」

住職さんに問いかけると曖昧な回答がかえってきました。

ただ、くやしいとか、悲しい感情はなく、なんとなくこのままでもいいかなと、思えてしまいました。


元自分のお通夜が終わるのを、住職さんの控え室で待っていると、聞き覚えのある人達の声が壁越しに聞こえてきました。

少し悲しい気持ちになりましたが、何故かどことなく他人事の様にも感じました。

自分であって、自分じゃない。

今のわたしは何者なんでしょう?

そんなことを考えてあると、頭の中で麻衣ちゃんの声がしました。

「おねぇちゃんは、これから、みんなを幸せにするの。おねぇちゃんはわたし。わたしはおねぇちゃん。星宮玲衣だよ。」


「星宮 玲衣…」

何故か涙が溢れそうになりました。

「…頑張ろう…。」

誰にも聞こえないような小さな声が、畳に吸い込まれるように消えていきました。

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