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「びっくりした?麻衣もびっくりしたもん。」

少女が笑顔で話しかけてきました。

なんですか?、栗色ショートヘアの小動物的な女の子…可愛すぎます。

すると、今度は隣のお坊さんが、静かに手をあわせて、黙祷(もくとう)の様な仕草をすると、不思議な事に、口も開いていないのに、話始めました。

「私は、壮大寺、住職 (たいら) (おさむ)。あなたの名は?」

私が、素直に自分の名を言うと、住職さんは少し驚いた様に一瞬、目を見開きました。

そして、また話始めました。

『あなたの心に直接、話かけています。わたしには、あなたの姿がはっきりとは見えないので、返事をしてください。』

「はい。」

『よろしい、今、貴女は、自分の名を持ったまま魂が抜け出しているようですね。さて、…』

「住職さん?」

『麻衣はどうする?』

「麻衣は楽しいのがいい。」

『よし、わかった。』

「早くして。おねぇちゃん消えちゃう。」

『あそこに、星の宮の祠があったな。』

なにやら、いろいろと、前置き無視で二人で話し合っています。

「あの…。」

「おねぇちゃん、ちょっと待ってて。」

話しかけようとしたら、麻衣ちゃんにとめられてしまいました。

すると、今度は住職さんが、とつぜん三文芝居を始めました。

「あ、いけない。とんだことだ。失敬。失敬。」

そして、急ぎ足で葬祭場を出て車に乗り込み走り出しました。

なんですか?このドタバタな展開は、頭が痛くなってきました。

そして、住職さんが唐突に話を始めました。

「今、貴女は生きているとも死んでいるとも言えない状態です。そして、現世の名前を持ったまま亡くなってしまった。」

「私はやはり…。」

わたしがそう言いかけてると、話を遮る様に住職さんが、話をつづけます。

「余り時間がないので、一つだけ質問します。貴女は生きていきたいと望みますか?」

「はい。生きたいです。」

唐突な話でしたが、素直にそう答えました。

車は十数分走ると、見覚えのある雑木林の脇に止まりました。

「ここです。さぁ、行きましょう。」

住職さんに言われるまま、降りた所は、意識だけになった私が、最初に目覚めた場所でした。

「ここは?」

「星宮の祠のある場所です。今から、麻衣を巫女として、分かりにくいかもしれませんが、麻衣を人柱にして二つの心を一つにして、貴女を現世に呼び戻します。」

「えっ!本当にそんなことができるのですか?」

「出来ます。今ならば、貴女の魂に戒名が無い、今ならば、新たに生きることが出来ます。ただ…」

そう言いかけて、住職さんは、一息ついてまた、話始めました。

「ただ、成仏出来なかった。水子の霊である麻衣と貴女の二人分の業を背負っていくことになります。そして、今までの貴女の記憶はなくなり、新しい人生をいくことになるでしょう。それでもよいですか?」

「はい、お願いします。」よく分かりませんが、生きられるなら、生きていたいから、私は、そう答えました。

落葉の絨毯の上に、少し苔むした小さな祠が佇んでいました。

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