幼なじみを豚顔に変えてみたら・・・
あたしは、さやか。顔はブスだ。それこそドブスと言っていい。
毎朝、鏡を見るたびに、養豚場から出てきたんですか!?っていうぐらいの自分の顔を見るのがつらい。
暗い顔してると、もっとブスになるから明るくなれ!
なんて、そこまで顔に不自由していないであろう連中に言われると、ムカつくのよ。
あんたらも、この顔になってみろって!
親には、あたしを産んでくれたこと自体には感謝してるけど、正直、心の中では、
なんでこんな顔に産んだのさ!って思ってる。
あ~、誰でもいいから、顔を私みたいな豚の顔に変えてみたいわー。
仲間が欲しいってわけじゃないけど、学校で1人だけ豚扱いされるのもキツイのよ。
女子校なら中学みたいにいじめられないかなとか思って、入ったけど、
現実は私の認識不足だったわ。
はっきりとした、いじめというわけではないかもしれないけど、何か陰湿。
そして布団に入ると、天の声が聞こえてくる。
?「お主、人を豚顔にしたいじゃと?」
さやか「だ、誰?」
?「わしはイタズラ好きな仙人じゃ。お前がそれを望むなら、
人間を1人だけ豚みたいな顔に変える能力を授けてもいいんぞよ。その能力欲しいかな!?」
さやか「欲しいわ。わたしだけ豚顔なんてもう耐えられない!」
仙人「それでは、その能力を授けよう。ただし注意点がある。
この能力は1回しか使えず、また、元の顔に戻すことはできないので、後悔しないようにな。
そして豚の顔になった人間の、周囲の記憶は変えられる。すなわち、その人は最初からそういう顔だったと周囲には認識されるわけじゃな。」
さやか「どうやって使うの?」
仙人「まずは君の右手の中指に豚顔化させる文字の刻印をほどこす。」
そして、あたしの右手の中指には、豚顔化という文字の刻印が目立たないながらも、ほどこされる。
仙人「そして、相手に向かって、こうやるんだよ。」
仙人「豚になーれ。ブヒ。と言って、相手の鼻を触るのじゃ。」
仙人「そうすると鼻を起点として、豚顔化が始まるからのう。」
さやか「そうなんだ。どうもありがとう。使ってみるわね。」
仙人「喜んでくれてありがたいわい。ただし再度、忠告するけどの、
元に戻せないから、慎重に相手を選ぶんじゃぞ。」
さやか「分かったわ。」
と言って、目が覚める。
なんだ夢だったのかな!?
いや、でも自分の右手の刻印は残ったままだ。
さやか「よーし、誰を豚の顔にしてあげよっかな。」
今日も学校に登校すると、
女集団「あんたのおはようのブヒー聞かないと、元気でないのよ。いつものようにブヒーブヒー鳴いて。」
さやか「ブヒーブヒー。」
女集団「きゃははは。ありがとう。」
と、いつも通り豚扱いされる、あたし。
昼には、
女集団「私たち、今ダイエットしてるんだ。だから、豚ちゃんさぁ。
私たちの残飯全部食べてくれない? 豚ちゃんはもっと食べて太った方が立派な豚になれると思うわ。」
さやか「それじゃあ、もらうわね。」
女集団「せっかく可愛い豚になるように餌与えてるんだから、もっと感謝しなさいよ。
語尾にブヒもつけて。」
さやか「あたし、立派な豚になるブヒ。餌をくれてありがとうブヒ。」
女集団「アハハハハ、うけるー」
自分でも何を言っているんだという状況ではあるが、
入学して半年が過ぎ、もうこのポジションとか、どんな台詞を言えばいいのかとかが分かってきた。
分かってきたけど、辛いのよね。
でも、こんな風に自分だけが辛いと思うのも、今日で終わりよ。
ということで、私は豚顔化の対象を決める思考をする。
とはいえ、大体決まっているんだけどね。
幼なじみの、「美保」よ。
美保は中学生まで一緒に仲良くしてたんだけど、この高校に入ってからは、
美保は可愛い女子グループに入った。
あたしのことを露骨に豚扱いしないまでも、
あたしが豚扱いされているのも見て見ぬふり。
そりゃあ、あたしを助けたら次は自分が標的になるんじゃないか?
って不安があるのは分かるんだけど、それでもひどくない?
だから、あたしは「美保」を豚顔にすることに決めたわ。
放課後
美保に、メッセージを送る。
さやか「久しぶりに、一緒に、帰らない。」
美保「急に、どうしたのよ。」
さやか「久しぶりに、美保と一緒に帰りたくなって。」
美保「・・・・分かったわ。ただ学校からだと無理だから、地元の駅で待ち合わせして一緒に帰りましょう。」
あたしと一緒に学校から帰っているのが、他のクラスメイトに見られたら困るんだろうなー。
中学時代はいつも一緒に帰っていたのに、なんでこうなっちゃったんだろー。
憎いわー、美保。
しかし、それも今日で終わりよ・・・。
17時頃、自分達の最寄駅の改札で、美保と待ち合わせをする。
美保「どうしたの、急に帰りたいだなんてさ。」
さやか「たまには、いいじゃない。最近、話もできてなかったし。」
そして、家の近くの公園に着く。
田舎でもあり、人はほとんど来ない。
さやか「ちょっと、ここでゆっくり話しましょ。」
さやか「ねぇ。美保さぁ。何で最近冷たいの?」
美保「冷たいって、何が。」
まーた、とぼけちゃって。
さやか「あたしが他の子から豚扱いされてても助けてくれないじゃない。」
美保「あ、そうなんだ。嫌だったんだ。豚扱いされてるの楽しんでるように見えてたんで。
助けるっていう気持ちが起きなかったわ。ごめん。今度から助けるよ。」
なんさい、そのとぼけ方は。
そのとぼけ方はムカつくし、仮に本当にそう思っていたのなら、その無神経さにムカつくわ。
さやか「ちなみに、美保って、あたしの顔はどんな動物に似てると思う?」
美保「・・・・・。」
さやか「思った通りでいいのよ。」
みほ「皆も言うように、顔は豚に似てるかな。でも可愛い豚よ。とても愛くるしいの。
ただ最近は学校でも、ぶすっとした顔になってるから、笑顔を絶やさなければ可愛い豚だと思うよ。」
おいおいおい、上から目線かよ。だいたい、美保も他の奴と一緒か。
この顔で笑顔でいられるわけねーだろっつうの。
さやか「ふーん。じゃー可愛いってことは、美保もこういう顔になりたい?」
美保「そういうわけじゃないけど。」
さやか「うんうん。遠慮しないで、し・て・あ・げ・る。」
そうすると、美保の正面に立ち、
さやか「豚になーれ。ブヒ。」と言って、
右手の中指を、美保の鼻に押し付ける。
美保「??????」
次の瞬間、美保は顔を手で押さえ始めて、あおむけに倒れた。
美保「何これ、顔が熱いんだけど。」
そして、美保の鼻が変形し始める。
美保の、しゅんとした小鼻は、上に持ち上がり、
鼻の穴が丸見えに。
次に、目は、
ぱっちりとした大きな目が、どんどんどんどん細くなっていった。
そして頬など顔全体の肉付きが良くなり、
あたし以上の豚顔になった。
目を覚ました、美保に向かって、
さやか「美保。鏡見てごらん。」
鏡を見た、美保は「いやぁぁぁぁぁぁぁ~」
と泣き叫ぶ。
さやか「ごめんね。でもあなたの望み通り、可愛い豚顔にしてあげたわ。
あなたも笑えば可愛いと思うわよ。」
そんな顔になった美保が、怒りで殴り掛かってくるかなとも思えたが、
美保は自分の顔が豚のようになったということに、
現実感が持てず、その場から動けなくなっていた。
さすがに19時近くなり、親御さんが心配してはと思ったので、
美保の家まで送ることとする。
さやか「美保、家まで帰るわよ。」
美保「いやだ。お母さんに何て言われるか分かんない。」
さやか「大丈夫よ。美保の元の顔を知ってるのは、美保とさやかだけだから。
他の人は、美保が最初から、この顔だったって認識に変わってるはずだから大丈夫なはずよ。」
仙人に言われたことを思い出して言うも、
本当にそうなのだろうか?という不安はあった。
美保「仮に、そうだとしてもさぁ・・・・シクシク(泣)」
美保は泣き止む気配がなかった。
さすがに悪いことをしたかなぁ・・・ブスのひがみといえばそうだしなぁ・・・
とは思いはしたけど、仙人が言うように元通りにできないんだから、
あたしの自分勝手とはいえ、この世界を楽しく生きるしかないじゃない!!
自分勝手と思いながらも、
さやか「ほら、美保。泣いてないで帰るよ。親御さんも心配するだろうし。」
と無理やり、美保を起こして、家に向かう。
美保の家。
美保母「はいはい。美保ちゃん遅かったわね。今までどこに行ってたの? って、すごく目が充血してるじゃない。どうしたの。」
美保「シクシクシクシク(泣)」
さやか「おばさま、こんばんは。」
美保母「あら、さやかちゃん。こんばんは。美保の付き添いで送ってきてくれたのかしら。
ありがとう。美保に何があったの?」
さやか「ちょっと学校でつらいことがあったみたいで。話聞いてたんです。
もうちょっと慰めたいので、美保の部屋にお邪魔してもいいですか?」
美保母「あら、いいわよ、ありがとう。さやかちゃんは、やっぱり優しいのね。」
そして、美保の部屋に入る。
美保「綺麗だったおかあさんも、鼻が上向いてて、ちょっとブスになっているじゃない(泣)」
さやか「家族で、美保だけ豚顔になってたら不自然でしょう。
だから、家族にも豚顔化が作用するらしいのよ。
あたしも詳しくは知らないんだけど、この魔法を作った人によればね。」
美保「シクシクシク(泣) わたし、これからどうしようかな・・・。」
さやか「なーに、なるようになるわよ。」
とか言いながら、
あたしって自分勝手だな、いかにもブスのひがみみたいな感じで、
美保を豚顔にしてしまったけど、
悪いことしてしまったのかな・・・と思い始めていた。
いーやそれでも、美保があたしを助けてくれなかったのは事実だし、
これで良かったのよと言い聞かせるが、
泣き止まない美保を見ては、少し後悔が出てきた。
何だかんだで、美保は、翌日も学校に登校した。強い子だな。
しかし、美保の扱われ方は昨日までとは大違いである。
クラスメイトは元々、美保が豚顔で、ずっとからかっていたという認識に変わっており、
今までの可愛い女子グループに入れず、
美保は豚扱いを受けていた。
魔法のせいで、あたし以上の豚顔になった分、
あたしへのからかいは減り、
それが、美保に一極集中することとなっていた。
そんなことが続いた、ある日。
美保「さやか、楽に死ねる方法を教えて。」
さやか「え、何を言い出すのよ。」
美保「何かもう疲れちゃって。楽になりたいなって思えてきたの。」
まさか、ここまで思い詰めていたとは。
あたしは、美保を豚顔にしたことを完全に後悔していた。
さやか「ごめんね。私のせいで、こんなことになって。」
美保「さやかは悪くないわ。あの時は言葉を濁してしまっていたけど、
実際さやかが豚扱いされてるの見て、幼なじみなのに見て見ぬフリしてたのは事実だし。
そんな風に性格が悪い女だったから、
さやかに豚顔にされるのも当然のことだと思うの。
今更だけど、豚顔になってみて、さやかの気持ちが実感できたわ。
だから、豚顔に変えてくれたことで、自分の性格の悪さにも気づけたし、ある意味感謝してる。」
美保って、何でこんなに優しいんだろー!?
あぁ・・・・・、今にでも魔法をかける前の時間に戻りたい。
というか、魔法を自分自身にかけてもっと醜い豚顔になれば良かったわーとか思った。
美保「ただ、今のままでは、家では落ち着けるけど、学校では安心できなくて、というか死にたくなるのね。だから、さやかにだけでも愛してほしいの。」
さやか「え、それってどういう?」
美保「こういうことよ。」
次の瞬間、美保は、あたしにキスをしていた。
さやか「な、何するのよ。」
美保「何って、キスよ。どうだった?」
さやか「どうって? あたしレズじゃないし。」
美保「私もレズじゃないわ。レズではないけどさ、今の心理状態では誰かに愛されないと頭おかしくなって死にそうなの。だから、さやか、私と付き合ってみない? もちろんお互いに好きな男子ができたら、
関係を解消していいから。」
あたしは迷っていたが、こんな顔に変えてしまったのは私だという負い目も感じ、
美保と付き合うことにした。
さやか「分かったわ。お互い好きな人が出来るまで、愛し合いましょう。」
美保「よかった。うれしい。」
と言いながら、またあたしにキスしてくる、美保。
そんな感じで、美保の部屋orあたしの部屋で親や兄弟がいない時に、
イチャイチャしてキスしたり抱き合ったりする関係が数か月続く。
顔は豚顔だけど、匂いとか雰囲気とかが女の子っぽい、美保の感触に触れるにつれ、
この関係もいいかなぁと思えてきていた。
そして、美保がある日、言う。
美保「ごめん、さやか。私、好きな人ができちゃったんだ。だからこの関係を終わりにしてもいい?」
あたしは、すっかり美保に夢中になっており、
デートプランを熱心に考えるほどレズ化(?)していたため、
それを聞いたときはショックだったが、
こんな豚の顔にした手前、引き留めるのもどうかと思うので、
美保との関係を解消することとした。
数か月後。
さやか「美保、帰ろうよ。」
美保「ごめん。今日は駅で彼氏と待ち合わせしてるんだ。」
さやか「そうなんだ。って、彼氏!? 付き合えたの!?」
美保「ごめんね。言ってなくて。そうなの。もう付き合って1ヶ月になるの。」
と、幸せでホクホク顔の美保。
さやか「ねぇ。せっかくだったら、その彼氏に会わせてよ。」
美保「えー。」
さやか「嫌なの!? 私に会わせるのが。」
美保「うん。さやかに取られたら、困るし。」
さやか「何ふざけたこと言ってんのよ。あたしに惚れる男がいるわけないじゃない。」
美保「それがね。私の彼氏って、いわゆるブス専らしいのよ。彼には告白されたんだけど、
付き合って少ししてから聞いてみたのね。何で、こんなわたしのこと好きになったのかって。
そしたら、彼がさ、
俺、豚みたいな顔した子が好きなんだ。
美保ちゃんを初めて見た時にキュートな可愛い豚顔だったから一目ぼれしてた。
って言ったのさ。変わってるでしょ(笑)!?」
さやか「キュートな豚顔?」
美保「そうそう。私には自分の顔が醜い豚顔にしか見えないんだけど、
彼にとってはキュートな豚顔らしいのよ(笑)」
美保「それで、話を戻すわね。私の方が、豚に似てるから、さやかに心が移ることはないと思うんだけれども、ちょっと不安があるからさぁ。私は、こんな変なこと言う彼氏だけど、
これからもずっと愛し合っていたいし。」
美保「それにさ・・・・。
さやか!
私!や、ママ!をこんな顔!にしてくれたんだから、
私が彼と結婚するぐらいになるまで彼に会わないでくれない?」
こんな台詞は初めて聞いた。
美保は笑顔で言っていたが、瞳は笑っていなかった。
それこそ、もし彼氏に近づいたら、八つ裂きにして食べちゃうぞというような、
醜い豚の表情をしているように見えた。
さやか「そうよね。分かったわ。」
美保「分かってくれた? ありがとう。
あ、そろそろ私、駅に行かなきゃ。じゃあ、またね。」
と、駅まで走っていく美保を見送る。
やっぱり美保は根に持っていたんだな、そりゃそうかと思いつつ。
世の中には豚顔が好きとかいう変わった男性もいるんだなとか思いつつ。
あんな醜い豚の顔になっても彼氏ができるんだな、
私もいじけずに、こんな顔だけど笑顔を絶やさずに、頑張らなきゃと思えたわ。
最後に出てくる、美保の彼氏は、自分の考え方をモデルにしています。
自分も豚みたいな顔した女性に萌えを感じるので。
一方的なうらみから、幼なじみを豚顔に変えてしまってからの主人公さやかの心境の変化を書いたつもり・・・!?