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機嫌取り
「愛子様、光も、機嫌直しなよ」
将生は二人に告げる。
二人が去った後、雰囲気が悪くなったのだ。
歩いている最中も、基本無言だ。
「そうだ、今度新しく出来るテーマパーク行かない?」
機嫌取る為に珍しく将生が誘う。
「開会式に呼ばれてるわ」
「その後だよ」
二人の会話に、光は呆然とする。
愛子は普通とは違うと思っていたし、彼女が出歩いているなど聞いたことも無いからだ。
「……行く」
少し頬を赤らめ愛子は告げる。
将生は機嫌を直した愛子を見て安心した。
だが、新設したテーマパークとなれば人が多いのは目に見えている。
「俺一人では無理だな……」
「え?」
隣に居た光は独り言に反応する。
「光、一緒に行かないか?」
将生は光をじっと見つめた後告げる。
「後、宇野と透に言って……」
言い出しておいて約束を反故する訳にはいかない。
将生は護衛者と同行者を誰にするか、いつならいいか考えていた。
そうしているうちに下駄箱に着く。
「渉には黙っててくれ」
光にボソッと言うと、何事も無かった様に将生は歩きだした。




