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読書
「愛子様、何読んでるんですか?」
その日は渉、彼は愛子に積極的に声をかける。
勿論虐める為では無い。
「庶民の好きな本よ」
愛子は業とそういう言い方をする。
どっちかというと嫌がらせの類だ。
渉は負けじと本を覗き込む。
だが、日本語では無かった。
「ローリー・ムゥの冒険ですよ」
代わりに留美が答えた。
姉と再会しても留美が使用人なのは変わらない。
変わるのは近藤夫妻の家が出来たらそちらに引っ越す事だけだ。
「あれか、確かに人気みたいだね。俺は読んでないけど」
運動青年である渉は言った。
「漫画もありますよ。この間部費で買いましたから、読んでみます?」
「いいの?」
「はい。明日はどうです?」
「行く!」
仕事も部活も無いので渉は答える。
「愛子様、そういう事なので放課後は守護騎士とお帰り下さい」
「わかったわ」
愛子は多少留美に甘く、ため息をついただけだった。
そして、渉が帰ると日本語のローリー・ムゥの冒険を出して読み始めるのだった。




