ドラマチック
「あの……?」
留美は訳がわからず戸惑う。
「初めまして、近藤昌也です」
近藤昌也は親切に自己紹介をする。
「宇野留美です」
留美は反射的に自己紹介仕返す。
「中に入ろうか」
近藤昌也が言うので戸惑い和泉修介を見ると、首を横に振る。
「ここでお願いします」
留美はそれを見て、近藤昌也にそう返事した。
近藤昌也はため息をつく。
「お姉さん、いるよね?」
「え……?」
突然の問いに戸惑う。
引き取られた家で姉は居ないのだ。
「血の繋がったお姉さん。留依とは恋人なんだ。別れたけど」
近藤昌也は話を続ける。
「君をお姉さんの元に返したい」
それは揺るぎない決意。
留美はそれを近藤昌也に感じた。
だが、それは不可能だ。
「昌也!」
少し離れた所から突然聞こえる。
女性が黒服の男達と遠くから走って来るのだ。
「留依……何で……」
近藤昌也は唖然とする。
そして和泉修介を睨む。
「お前!留依を巻き込んだな!」
そう言っている間にも留依は近づいていた。
「昌也、もういいの!無茶はやめて!」
留依は言うと昌也に抱きついた。
「ここに来たら出られないのに……」
昌也は言うと座り込む。
「私は私の意志で来たの。あなたは留美を外に出す為私と別れたんでしょう?別れた時は何でって思ったけど、理由がわかったから。私はあなたの、あなたと留美の側に居る事にしたの。待遇も良くしてくれるそうよ。だからもうやめて」
留依の決意は固かった。
「あれ?終わったんだ」
店の入り口から将生が突然出てくる。
「あぁ、終わったよ」
和泉修介が言い返す。
それを見て昌也は唖然としていた。
「君、縛られてる筈じゃ……」
「切ったんだよ」
事態は収集したのであっさり答える。
「南里光、目を覚ましました」
和泉修介の部下が言う。
留美は光の方へ駆け寄った。
「やった事、無駄だったのかな?」
昌也が独り言の様に呟くと、留依は首を横に振る。
「あなたが事を起こさなければ私は別れた理由を知る事もここに来て留美に会う事も無かったわ」
「そうか……」
二人は騒ぎで人が居るのを忘れ微笑んだ。
「ドラマの撮影?」
「だったらいいね、テレビこっちで無いもんね」
二人のドラマチック展開に野次馬は言う。
それを聞き、和泉修介は思いを巡らせたのだった。




