覚醒
声が聞こえる。
近藤昌也が近くで喋っている。
「留依を、巻き込むな!」
突然の大声に、将生は完全に目を覚ました。
だが、眠らされた事以外自分にはわからない。
光がどうなったかもわからない為、どちらにしろ手を出せなかった。
近藤昌也はどうやら電話で喋っている、それを確認するとナイフを出した。
将生は縛られていたロープを少しづつきってゆく。
〈まさか役に立つなんてな〉
心の中で呟く。
それは出かけるしばらく前の事だった。
「将生、これを仕込んで行け」
透は自分が出かける前に指輪を出す。
「万が一の護身用だ」
そう言うと自分ではめて実演してみせる。
「へ~、便利だな」
将生が関心している間に透は将生の指に指輪ナイフをはめた。
「格好いいじゃん」
シンプルに見える指輪は、将生に合っていた。
「それはやる。普段から嵌めるといい」
そう言うと、透は出ていった。
将生はそれからしばらく後にBARに向かったのだった。
将生がロープを切っている間にも電話は続く。
「留美ちゃんに会わせてくれるんだな」
突然留美の名前が出てくる。
「わかった。南里光はその時渡そう」
切ったのがバレない様ロープを持ってると、そう聞こえる。
交渉は進んだのだった。




