中川渉
下校時間、その日は中川渉だった。
愛子は一層神皇として、渉に悟られないよう気を引き締める。
なのでできるだけ彼と喋らず、周りの生徒に神皇として気品を漂わせた。
「神皇様、疲れませんか?」
渉は愛子に話しかける。
愛子は、できれば話しかけてほしくなかった。
「これは当然の行動よ」
愛子は背を向けたまま、後ろに従えたまま話す。
「いつもこんな感じ?」
渉は同じく後ろに居る留美に問う。
「いえ、こん…」
「留美、余計な事は喋らないで」
笑顔で手を振りながら愛子は告げる。
それは見えない脅しだった。
「愛子様って、一緒に居るだけで疲れるな。あいかちゃんに会いたいよ」
渉は独り言の様に言う。
その言葉に、留美は食いついた。
「あいかちゃんって?」
「こっち来てすぐに知り合った子だよ。何か、好きだった子に似てるんだよね」
「へー」
留美は興味津々だ。
「姿は似てないんだけどね、からかうからオドオドしたり、俺に懐かなかったりして」
「それって、嫌われてるんじゃ…」
「好きだった子はそうだろうね。でも、初対面のあいかちゃんのリアクション見ると、本当思い出しちゃうんだよな…」
「へー、それって…」
「留美!」
愛子は大声で叫ぶ。
「はい!」
留美もつられて大声で返事してしまった。
「留美、私、カフェラテが飲みたいわ。買ってきて頂戴」振り向くと、有無をいわさぬ笑顔で言った。
留美は恐さを感じ、返事をしてカフェラテを買いに行った。




