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質問
「失礼します」
愛子は言うと、理事長室に入る。
抜け出したその日、二日後の約束でアポを取っていた。
勿論、問いただす為だ。
留美は部屋の外で待たせているので、和泉修介と二人きりだ。
「何かな?」
笑顔で和泉修介は言う。
愛子は表情を見せまいと無表情で聞いた。
「何故彼が、中川渉がこの町に居るのですか?」
「何か問題でも?」
不思議そうに和泉修介は首を傾げる。
「中川渉が、彼が嫌いなんです」
「理由は?」
「小学校の時、私を虐めたのが彼だから」
愛子がまっすぐに言うと、和泉修介は困った顔をした。
「たったそれだけの理由で言われてもな……もう招き入れちゃったし、生徒会に入れたしな……」
愛子は和泉修介の言葉に絶句する。
愛子としては、中川渉に関わりたくないのだ。
「大丈夫だよ。今の君は前の君とは別人なんだから」
和泉修介は脳天気に告げる。
だが、実は知っていた。
彼が愛子を虐めた張本人だという事を。




