予想外
「恐い思いさせてごめんね?」
声をかけた青年は謝る。
青年が謝った事で、残りの二人も警戒を緩めた。
「大丈夫ですか?」
青年をねじ伏せた青年、高塚透は振り返り言う。
愛子の手を引いて逃げようとした真鍋将生も、慌てて手を離した。
それよりも、愛子は声をかけてきた青年に目が離せなかった。
そして、体が震えた。
「どうした?」
将生が声をかけるが反応が無い。
気を落ち着かせる為、将生はカフェに行く事にした。
愛子を奥に座らせ隣に将生、正面に透、斜め前にはもう一人の青年が居た。
「あ…ありがとう…ございます」
愛子は小さな声で呟く。
だが、あまりの震えに皆心配していた。
「大丈夫か?」
「うん……」
将生の言葉に頷く。
「無事で何よりです」
「心配おかけしました」
透の言葉にも震えが残るもののちゃんと返す。
「君、大丈夫?」
青年の言葉にはビクッとなった。
「俺の名前は中川渉、君達は?」
渉は打ち解ける為に名乗る。
「高塚透です」
「真鍋将生。彼女は…」
「いま…こんの…あいか…」
素性を知られたくない、という思いもあり、嘘をつく。
「あいかちゃん?」
「は…い」
渉に言われ、ビクッとした。
「怯えないで、何もしないから。っていうかできないし」
何もしない証拠に手を上げる。
「あっ、行かないと!」
渉は慌てると、じゃあねと言って去っていった。愛子は渉が去ると、胸をなで下ろす。「何かあった?」
「何でもない」
愛子は落ち着きを取り戻すと、将生に言った。
それから、バイトを抜け出していた将生も去る。
愛子は透と二人になった。
「愛子様、ですよね?理事長の命令で、見守らせていただきました」
普段の愛子と全面的に違うので透は少し戸惑ってはいた。
学校に戻ると愛子はカツラを外し制服に着替える。
「今日はありがとうございました」
愛子は透に言うと、ソーラー車で帰っていった。




