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夏休み
夏休み、それは勉強という煩わしいものから解放される期間である。
世の高校生達はその間に遊んだり、部活動に励んだりする。
実際、週に一度だが留美も漫画部に顔を出す。
留美にとって、部室で黙って漫画を読む時間は至福の時間なのだ。
一方、愛子は違った。
学校自体は無いものの、時々学校や町に視察に行かなければならない。
笑顔を振り撒き、神皇として振る舞う。
なので家に帰るとクタクタだった。
「つまらないわ……」
愛子は呟く。
カフェやゲームセンター、愛子だと知られずに町を歩いたあの日だけは色鮮やかだった。
だが、それはもう出来ない。
相手に迷惑がかかるのだ。
自分が関わると、それだけでその人の平凡が変わってしまう。
普通の日常を望むなら余計にだ。
そんなある日、愛子は理事長室に呼び出された。
「ですから神皇様、生徒会に入ってもらいます」
「……はい」
あまりの退屈さに、ちゃんと聞かずに返事した。




