変装
「あんた、ここで何がしたいの……?」
将生は愛子の言葉につい聞いてしまう。
「私は……」
普通の生活がしたかった。
それはどれだけ贅沢な悩みなのか。
いや、その価値は人による。
「なら、やってみる?」
それは誘惑だった。
「そんなの!」
「無理じゃない」
無理だと言おうとすると防がれる。
「あんた、名前は?」
急に留美を見ると問う。
留美が名前を告げると、頼み事をする。
「宇野、私服を一セットとメイク道具も貸して。それから俺のバイトは休むように連絡も」
「は、はい!」
学生は簡単に連絡の仕様が無い為、同時に頼んだ。
それから、一度会議室から将生は出る。
コスプレショップに行くと茶髪でショートのカツラと眼鏡を買って来た。
「何に使うの?」
「あんたが出歩くと目立つからな。変装するんだよ」
留美の服に着替えさせ、茶髪のカツラを被せる。
「彼女にメイクしてやって」
留美はその言葉を聞くと頷いた。
最後に赤い縁の眼鏡をかけてやる。
「どう?感想は?」
将生は愛子に問う。
「これが、私?」
鏡を見て愛子は驚く。
服とメイクだけで、自分とは違う人間になっていた。
将生は愛子をこっそりと学校から連れ出した。




