遭遇
「はじめまして、真壁将生さん」
愛子は微笑んで出迎える。
「どうも、何の用ですか?」
将生は留美やクラスメイトに取っていた態度と変わらなかった。
「バイト行きたいんですけど」
将生は更に告げる。
優先順位的に、神皇よりバイトが上。
彼女に興味が無いし、今ギターが欲しいのだ。
「あなた、追試を楽々と突破したそうね」
「それが?」
「何故、本番でそうしなかったの?」
「バイト疲れだよ。上位取っても足しにならないし」
将生は椅子に座る。
「まだ?行きたいんだけど」
「……何故、バイトしたいの?」
「ギターが欲しいから」
「それだけ?」
「そうだけど?まだかかるの?」「私なら、ギターを取り寄せられる」
「それは神皇様だからだろ、俺はバイトか何かで手に入れないといけないんだよ」
その言葉には棘があった。
彼は一般市民なのだ。
「ここに来れば変わるかと思ったけど、全然変わらなかったよ」
「私を利用しようとは思わないの?」
愛子の突然の質問。
その質問は彼女がそうされた、叉はそうされそうになったが故の質問だ。
「自分でバイトするからいいんじゃん」
将生は利用するつもりはない、そういうつもりで答える。
「……私には、それができない」
神皇という立場上、愛子がアルバイトをする事は出来なかった。




