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始まり

それは差し出された手、愛子にとってそれは逃げる為の誘惑だった。

「愛子さま、我々の元へ来ませんか?」

イジメ、後継者問題、皇族としての役割、それらから逃げる為のもの。

愛子をそう誘惑する者は、日本内に日本であり日本ではない都市を作る準備をしていた。

「勿論、雅子様も一緒に」

娘を抱きしめて離さない母にも告げる。

思い通りにならない国民達、思い通りにならない政治家達、そんなものは捨て、国の中にありながら国とは違う理で動く国の為の都市。

若者を中心とした都市を父に依頼され創造した。

そして、その都市の象徴として彼は彼女を選んだ。

苗字を持たない彼女、慣れない場所へ来た事で苦しんだ母親、二人はあっさりと皇家を捨てる決意をした。

「和泉さん、これで変われるんですよね?」

「えぇ、この手術が終われば別人です」

愛子達を誘惑した和泉修介は笑顔で告げる。

あまりにも有名で父に似てお世話にも可愛いと言えない彼女と、同じく有名な母親に彼は整形を勧め、数時間後には二人の手術は済んだ。

日本特区内、特区中央病院。

まだ人の集まってないこの場所に入院し一週間後に退院すると、彼女達は我が家へと移った。


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