Ep-4 首都第1111街区 #2
「いいねぇベレッタ、カッコいいねぇ、欲しいなぁベレッタ」
ガンマニアかつガンコレクターのはずのエミリナは、レネのM93Rをしげしげと眺めた。
イタリアの名門ベレッタ社が、要人警護のために設計したマシンピストル、ベレッタM93R。ベースとなった同社のM92Fは、拳銃界のスタイリッシュ代表とも言われる有名なモデルだ。そのバレルとマガジンを延長し、折り畳みフォアグリップと3点バースト機能を採用したM93Rは、拳銃よりも高火力でかつフルオート拳銃よりも弾薬の消費量を押さえた、イタリアの誇る対テロ兵器として高名だ。
「しかし、ベレッタ持ってないんだな、リナ」
「そーなのよー、欲しいんだけどどうしても先にアンティークに手が出ちゃって」
これが変人ポイントその3、そもそも集める銃がアンティーク。機獣襲来前なのはもちろん、フリントロックやパーカッションロックなど、金属薬莢が普及する前の古い銃を集めまくるのが趣味なのだ。
「そういや、親父さんが何か買ったって言ってたけど」
ホノカが思い出したように口に出す。
「ああ…あれでしょ、テキサスパターソン」
サミュエル・コルトが作った回転式拳銃の祖、その名前がさらりと出てきたのでホノカは大いに驚いた。
「え、それ、倒産する前のコルトが3000丁くらいしか作らなかったっていう」
「正確には2700ちょっとね。ちくしょーこれは完全に先を越されたなー」
本気で悔しいらしい様子にレネも苦笑いをするしかなかった。
「でも仕事ではわりと新しい銃使ってるんでしょう」
「まあね。親父の自作もガバメントのクローンだし、今日は持ってないけど支給品もM19のコピーだからそこまで新しい訳じゃないよ」
エミリナは腰の二丁拳銃、コルトM1911A1「ガバメント」をもとに彼女の父親が製作したクローンを抜いた。「まあ親父もよくこんな古い型コピーする気になったよねぇ」
前述のM92Fが採用されるまでアメリカ軍の制式拳銃だったガバメントのオリジナルモデル、M1911が設計されたのは型式番号の通り1911年。機獣襲来など問題にならないくらい大昔だ。
エミリナに許可を取り、レネがガバメントを手にシューティングレンジに立つ。
「うわっ、反動もマズルジャンプも強いねこれ」
「そう?先輩のM9の三点バーストより軽いと思うんだけど」
「しょうがないよ。レネくんバーストするときはがっしりフォアグリップ握ってるもん」
なにそれー、貧弱ー。ホノカのカミングアウトとエミリナの容赦ないダメ出しに苦笑しながら、装弾数の7+1発を撃ち尽くす。複列弾倉のハイキャパシティではなく、より装弾数の少ないA1をコピーするあたりエミリナの父親らしい。「貧弱で悪かったな。体は弱いんだよ」などと言いつつ全弾8点圏内に命中させるのも、レネらしいと言えばレネらしい。
そのうち、話題はそれぞれの職場や同僚のことに移ってゆく。
里帰り(とは言っても首都だが)するたびに3人集まってこんなことをしているのも、変な習慣だとは思う。でも、これをやんないと帰った気がしないのよね。レネ達の小隊が機械化されるという話を聞きながら、エミリナは満ち足りた様子で笑っていた。