入学式
ピピピピピピピピ……
携帯電話のアラーム音が鳴り、僕は布団から出た。
さっき見たRPG主人公の部屋ではなく、いつもの自分の部屋の風景に安堵し、部屋を出る。
「おはよう」
「おはよう一輝。そういやアンタ今日から新しい学校でしょ? いつもより早く起きなくて大丈夫なの?」
「この前下見に行ったし、入学式は9時からだから大丈夫」
「アタシもお父さんも見に行くんだから遅れたりして恥かかせないでよ」
「はいはい」
母親のお説教に対して適当に相槌を打ち、テーブルに置いてあるトーストに手を伸ばした。
いつもと同じ光景だ。そしていつものように朝食を摂り、真新しい制服に着替えて、新しい学校に向かった。
「よう、一輝」
学校に向かう途中で声をかけられ、 僕は振り向いた。
「よう、裕也」
小学校時代からの親友が立っていた。
「そういや裕也も同じ学校だったな」
「うわぁ……酷ぇ……俺たち下見も一緒に行ったじゃん」
「そうだったっけ?」
他愛もない会話をしてると学校に到着した。
「あの人の集まってるところがクラス分けのところじゃね?」
祐也の指差す方には確かに人だまりと掲示板のようなものが見える。二人でそこに向かい、人垣を押しのけてなんとか最前列に到達し、クラスを確認した。立川……立川……2組に立川一輝と僕の名前を見つけ、人ごみから脱出する。
「くはー。酷い目にあったわ。で、一輝は何組だった?」
「僕は2組だったよ。裕也は?」
「一緒だよ。やったな」
「えー。 また裕也と一緒かー」
「なんだよ、何が不満なんだ?」
「宿題見せろとかー」
「うぐっ」
「テスト前にノート貸せとかー」
「うぎっ」
「漫画貸したら返ってこないとか」
「関係ないし返してるわ」
「まあ、一年よろしくな」
「おう」
入学式はお決まりの校長挨拶やら、生徒代表(メガネの男)の挨拶やらで大して面白いことはなく、欠伸を噛み殺すことに必死だった。
そして教室に戻り、担任教師の挨拶を終え、各自の自己紹介となった。
僕も型通りに挨拶と適当な趣味を言って真ん中の列の一番後ろの席に座った。
そして特別なことも起きず、自己紹介は終わった。
その後は、担任教師の明日以降の予定の確認があり、僕の高校初日はこうして幕を閉じた。
家に帰り、両親に「学校はどうだった?」やら「部活はどうするの?」やら聞かれる以外はいつも通りの夕食を済ませ、漫画を読んだり、裕也とメールしたりとまあ特に変わらない一日を過ごして、いつも通り布団に入った。
「―――起きて下さい勇者様」
寝たばかりなのに僕を起こす声が聞こえる。
僕は薄目をあけて声の方向を見ると昨日の妖精がいた。そしてまたRPGの主人公の部屋に紛れ込んでいた。