サクラサク
「すみません、読朝新聞ですけど! 田中さーん、居ませんかっ!」
チャイムを連打し、ドアを叩いたものの反応は無し。俺は額から吹き出す汗をTシャツの袖で拭うと、閉ざされた分厚いドアに向かって溜息をついた。
「しょーがねぇ。また出直しか……」
マンション七階の通路には、真夏と変わらない西日が照りつけ肌を焦がす。死ぬほど暑い。早く日陰に行きたい……。
「あのー、お隣さん出かけたみたいですよ?」
俺を陽だまりに引き止めた、か細い声。その主は、代金滞納者の隣人だった。薄く開いたドアの隙間に向かい、俺は頭を下げる……と、突然視界がぐにゃりと歪んだ。
「ちょっと、大丈夫っ!」
大きく開かれたドアから裸足のまま飛び出してきたのは、一人の美しい――天使。
俺は最後の力を振り絞り、彼女に伝えた。
「新聞、取りませんか……」
◆
この道を選んだのは、高校三年の秋だった。
『もういい、自力で結果を出してやる。それなら文句無ぇだろ!』
頭ごなしに夢を否定され、高ぶる心のままに宣言した俺は、金のありがたみなど何も知らない生意気盛りのガキだった。
憮然とした表情で「だったら一年だけやってみろ。受験費用も含め一切援助はしないがな」と告げた父。母はその隣でおろおろするだけで、兄と弟は「またかよ」という冷たい目で俺を見ていた。
春先に上京した俺は、いわゆる“新聞奨学生”として寮生活をしながら予備校に通っている。毎日午前二時半に起き、眠るのは日付が変わる直前。睡眠三時間に対して、労働は軽く十時間オーバー。唯一仕事から解放されるはずの日曜夕方も、こうして集金作業に追われるはめになる。
疲れた、腹減った、眠い、辛い、苦しい……。
俺の泣き言なんて、神様は聞いちゃくれない。なぜならここは『地獄』だからだ。
そうだ、俺にとってこの地獄から抜け出す方法は一つしかない。
早く帰って、勉強しなきゃ……。
「勉強……しなきゃ……」
「――あ、起きた? 大丈夫?」
朦朧とする意識の中、俺は例の天使と再会した。
水の入ったグラスを差し出す彼女の手が、俺の目の前でつるりと滑った。
◆
「まったく無茶し過ぎよ! ろくにご飯も食べないで歩き回るなんて、頑張るにしても本末転倒!」
「う、ゴメンナサイ……」
冷水シャワーによるスッキリ爽快な目覚めの後、俺は強引に彼女の部屋へ連れ込まれた。
まずは犬っころみたいに、バスタオルでゴシゴシとやられ。
濡れた髪とTシャツに、ドライヤーを当てられ。
水分摂取をと、スポーツドリンクをがぶ飲みさせられ。
血糖値を上げるべしと、アイスココアを飲まされ。
実家から大量に送られてきたからと、かの有名な『ぷくや』の明太子入りおにぎりを頬張らされ……というのが今の状況。
ココア&明太子。この甘さと辛さの組み合わせは絶妙に微妙だが、そんなことはたいした問題じゃない。空腹は最大の調味料。
「はい、具だくさんのお味噌汁もどうぞ。好き嫌いは許しませんよっ」
ローテーブルの上に置かれたのは、熱々どろどろの味噌汁……美味い。美味過ぎる。まるで先月寮の仲間とやって奇跡的に大成功した闇鍋のような味がする。
緑と茶色がマーブル模様を描く奇妙な色の味噌汁に、腹ペコの野良犬状態でがっつく俺を見つめ、彼女はふにゃりと目尻を下げた。
「そうやって美味しそうに食べてくれると、作りがいがあるなぁ。私ずっと一人暮らしだから、お料理作ってても張り合いが無くて。また困ったらいつでも食べに来てね」
新聞を半年も契約してくれた上、ご飯まで……サラサラの長い黒髪に光る天使の輪が、やけに神々しく映る。
なのに俺は、彼女の好意を百パー素直には受け取れなかった。
「それスゲー嬉しいんですけど、何でそこまで……?」
彼女のことは、佐倉七海さんという名前しか知らない。あとは実家が九州で、料理上手……と言えないものの栄養と愛情はたっぷり。なにより印象的な、透明感のある白い肌に映える黒髪と、天使のように可憐な笑顔。
彼女も、俺の名前と仕事内容しか知らない。見た目はそれなりに小ざっぱりしているし、半年で十キロ減った体重と疲れのせいで、ナイーブな勤労少年に見えるはずだ。少なくとも、悪人には見えないだろう。
しかし『人は見かけによらない』ということを、俺は東京で学んだ。一緒に頑張ろうと誓った仲間たちは、舌の根も乾かぬうちに次々と脱落。俺に仕事を一通り教えてくれた寮の先輩は、先月集金した金を持ち逃げした。優しくて真面目そうな人だったのに。
一見イイヒトほど信用できない……特に、美人で性格も良いなんてありえない。
そんな猜疑心たっぷりの視線をものともせず、彼女はなにやら含み笑いを浮かべた。
「さて、なぜでしょう? ヒントは部屋の中にあるよ。探してみて」
呑気なクイズに毒気を抜かれた俺は、遠慮がちに室内を見まわした。コンパクトなワンルームは、これぞ“女の子の部屋”という雰囲気だ。淡いピンクのカーテンと、白で統一された家具類。ベッド、ドレッサー、机、本棚――
「あ……赤本?」
「そう、実は藤井君のお仲間でした。今年で四年目だから大先輩だねっ」
四浪という悲惨なキャリアを、彼女はなぜか誇らしげに語る。俺は並んだ赤い背表紙を見ながら尋ねた。
「医学部、目指してるんですね」
「うん、正解。でも全然レベル足りなくて。今年も厳しいかなぁ」
彼女は味噌汁のお代わりをよそいながら、簡単に身の上話をしてくれた。
「うちの実家って、代々お医者さんなんだ。古臭い田舎の名家ってやつで、どうしても私が継がなきゃいけなくて。でも元々は違ったの。後継ぎにって期待されてた優秀な弟がいたんだけど、中学生のときに白血病でね……だから、君が倒れたときは本当にビックリしたよ。つい弟のこと思い出しちゃって……」
俺はそっかと呟き、テーブルに置かれた碗と箸を手に取った。ふと、黒いインクが染みついた自分の指先が目につく。逃げた先輩曰く、この手の黒ずみは『新聞配達員の勲章』とのこと。俺はこんなもの、誇りだなんてとうてい思えなかったけれど。
視線を少し先に移せば、そこには白魚のような彼女の手が見える。箸より重い物を持たないと言われても納得できるくらい、華奢な白い手が。
本音を言えば、見ず知らずの小汚い新聞配達員を部屋に上げるなんて、不用心な女だと思った。所詮金持ちのゆるい女子大生なのだろうと。でも、そうじゃなかった。
何かお礼をしなければ。俺にできる精一杯のことを……。
俺は一旦箸を置き、彼女にきちんと向き合った。
「あの、俺自分で言うのもナンですが、成績は良い方なんです。特にセンターはかなり自信あるんで、良ければ軽くアドバイスでも……いや、要らなければ別に」
「えっ、ホント? それすごく嬉しいっ」
彼女はふわりと微笑んで立ち上がった。育ちの良さをうかがわせる、綺麗な立ち居振る舞い。薄手の白いキャミソールと麻のロングスカートが、ナチュラルな黒髪に似合っている。笑うとえくぼができる頬が可愛らしい。
思わず見惚れる俺に、彼女はおずおずと一枚の紙を差し出した。
「実はこの間の模試がサイアクで、予備校の先生にもさじ投げられちゃって」
そこに並んだ数字を見た俺は、思わず叫んだ。
「――あんたアホかっ!」
「そのツッコミいいねえ。関西人ぽくて」
「誰だってツッコむわ! 国英社が満点、理数が三十点! これ私立文系ならとっくに合格してるだろ!」
「……だって私、どうしてもお医者さんに」
「何浪するつもりだよっ」
「……今年が最後、かも」
「落ちたらどーすんの?」
「……結婚」
「――はあっ?」
「今年ダメだったら、結婚しろって言われちゃった。お婿さんになってくれるお医者さん探す方が早いからって……」
語尾に悔しさを滲ませ、彼女は唇を強く噛みしめる。テーブルの上には、固い握り拳。
その話は決して本意ではないのだと悟った俺は、それ以上の追及を止め、代わりに一つのアイデアを伝えた。
「佐倉さん、俺と“契約”しませんか?」
「え……?」
「俺にご飯作ってくれたら、代わりに勉強教えます。どうせなら、最後まで悪あがきしてみましょうよ」
◆
彼女と“契約”を結んでから、俺は毎日彼女の家に通った。
栄養満点の夕食と風呂を提供してもらい、代わりに勉強を教える。お互い損をしないバーター取引……というのは建前で、本音は違った。
彼女にとって、俺は応援すべき苦学生で、優秀な家庭教師で、亡くなった弟の身代り。そう分かっていても、彼女に惹かれる自分を止められなかった。
彼女の髪に触れたくて我慢して……秋、冬と季節が過ぎた。
『受験が終わったら告白する』
その目標が新たなモチベーションとなり、俺は過酷な浪人生活を乗り切った。
俺の熱血指導のおかげか、彼女の成績もうなぎのぼり。最後の模試では合格圏内に入っていた。
そうして二人で駆け上った階段の先には――
「……本当にゴメンね、藤井君」
申し訳なさそうに頭を下げた彼女は、細い指先で横髪を耳にかけた。
その毛先は肩に届かず、彼女の頬をくすぐっている。
「もう謝るなって。佐倉さんは良く頑張ったよ」
結局奇跡は起こらず、彼女にサクラは咲かなかった。
不合格と判明した日の夜、残念会と称して呼び出された俺は、なぜか手芸用の大きなハサミを手渡された。
『今から断髪式するから、よろしく!』
溢れる涙を拭いもせず、彼女はくしゃくしゃの笑顔を俺に向けてきた。かけるべき言葉を失った俺は、唇を噛みしめながらそのハサミを受け取った。初めて触れた彼女の髪が、指の間をすり抜けて乾いた新聞へ落ちて行くあの感触は、たぶん一生忘れられない。
髪を切った彼女は心も軽くなったのか、涙の面影はもうどこにもなかった。
そして今日は、俺の祝勝会だ。「話があるから」と呼びだされたのに、部屋のドアを開いた途端クラッカーを鳴らされ、テーブルにはケーキが用意してあった。見たこともないような、サーモンピンク色のクリームが塗りたくられたケーキ。いびつなスポンジの上には、イチゴの代わりにプチトマト。今流行りの『野菜を使ったケーキ』に挑戦してみたらしい。
見た目は危険だけれど、やはり美味い。俺の舌は、すっかり彼女の味に慣れてしまったようで、ぺろりと平らげた。
彼女の手料理を食べられるのも、これが最後かもしれないと思いながら……。
「それで、話って?」
「うん……昨日、親から連絡来たんだ。来月でこの部屋解約するって」
「そっか……」
爽やかなパステルカラーの部屋が、今日はやけに薄暗く感じる。注がれたココアの湯気も消えてしまった。
彼女は「でも大丈夫」と俺を勇気づけるように微笑むと、お尻をもぞもぞさせ座布団の下から何かを取りだした。
それは見覚えがあり過ぎる、一枚のチラシ。
「ジャーン! 私も新聞奨学生になる!」
「――アホかっ!」
「そのツッコミ、やっぱりいいねえ」
「ていうか、マジでやめとけって! 俺のこと見てたら、どんな目にあうか分かんだろ?」
新聞奨学生の中には、確かに女子も居る。でも最後まで続けられるのは、ほんの一握りだ。
瞼の裏に、未来の彼女の姿がありありと浮かぶ。
インクで黒く染め変えられた、か細い指。疲労のせいで頬は痩せこけ、透き通るような肌はくすんでしまう。睡眠不足がたたり、授業中も半分居眠りして過ごす。集金作業では“女の子だから”と舐められて踏み倒される。新規の営業をかければ、もしかしたら変な野郎に誘われるかもしれない。
聡明な彼女は、そんな未来を充分理解しているはずだ。
なのに、彼女は微笑んでいる。
髪を短くしたせいだろうか。いつも通り、天使のような可憐さにプラスアルファ、雑草みたいな逞しさを感じさせる、目映い笑顔だった。
「うん、そう言われると思った。でも私、もう少し頑張ってみたいんだ」
俺は二の句がつけず、押し黙った。髪を切ったときと同じだ。一度言い出したら彼女はテコでも動かない。
ましてや“弟”の忠告なんて……。
ふて腐れた俺は、ココアの表面に浮かぶ膜をスプーンでかき混ぜた。ねっとりと軸にまとわりつくそれを剥ぎ落としたくて、何度もスプーンを動かす。
そんな俺の頭を撫でる、柔らかな手。俺の嫌いな“お姉ちゃん”の手だ。この手が薄汚れるところなんて、俺は見たくないのに。
「ねえ、いつも藤井君がお風呂入ってるとき、私が何してたか分かる?」
「……なんだよ、料理だろ?」
「ふふっ。それも正解だけどね。本当は、藤井君が毎日履いてるスニーカー見てたんだ。だんだん靴底がすり減って、つま先に穴が開いて……どんなにボロボロになっても、藤井君はずーっと大事に履いてたでしょう? それって、藤井君が夢に向かう姿勢と同じだなって思ったの。凄くカッコイイなぁって」
不覚にも、俺は涙が出そうになった。そんなものを見られていたなんて、ちっとも知らなかった。
そうやって、俺が死ぬ気で追いかけている夢は、まだ誰にも告げていなかった。俺なりの願掛けのつもりで。親父と母さんは薄々勘付いているけれど、何も言って来ない。弟の秋都は、もちろん気付いていない。去年、怪我でサッカーを諦めてから、腑抜けになっているアイツは。
「藤井君のおかげで気付いたんだ。私は自分に甘過ぎたんだって。もっと追い詰められて、もっと必死になって、それでも駄目なら諦めがつくと思うから」
「そーじゃねぇだろ……?」
唇から、掠れた声が漏れた。彼女が決めた道を否定する言葉が。
俺の真摯な眼差しを受け、彼女の穏やかな笑みが崩れる。どうしてと問いかけるように、小首を傾げる。
俺は、そっと彼女の手を取った。
手のひらのサイズは、俺よりふたまわりも小さい。この部屋と同じく“女の子”を感じさせる手だ。華奢で骨ばっているのに、柔らかくて温かい。
この手が常に何を握っていたのかを、俺は知っている。
「佐倉さん、本当は他にやりたいことがあるんだろ?」
「えっ……?」
「例えば、栄養士とかさ」
彼女は一瞬目を見開いた後、力強く首を横に振った。艶やかな髪が、ふっくらした白い頬で弾む。例え髪が短くなっても、浮かんだ天使の輪は決して消えない。
そんな彼女が眩しくて、俺は目を細めた。
大事な家族にさえ何も言わず、我が侭を押し通す形で家を飛び出した俺とは違う。彼女の眼差しに、全てを受け止めて包み込んでしまう、太陽のような優しさを感じた。
親の夢と失った弟への想いを抱え、彼女はこれからも医者を目指し続けるのだろう。例えそれが茨の道だとしても……。
「私はお医者さんになるの。確かに藤井君の専属栄養士も、楽しかったけどね」
「ったく、頑固なやつ!」
なによぅと唇を尖らせる彼女に、俺は不敵な笑みを浮かべてみせた。彼女の手を強く握りしめ、高鳴る胸を落ち着かせる。
気分は満身創痍のピッチャーだ。九回裏ツーアウト満塁、カウントはツースリー。勝てる自信なんて一パーセントも無い。それでも、俺はどうしても言いたかった。
大きく息を吸い、気合いを入れて……。
「でも俺は……そんな佐倉さんが好きだよ」
握りしめた手が汗ばんでいくのが分かる。心臓がうるさい。
彼女はそんな俺の手を握り返し、満面の笑みを浮かべて言った。
「ふふっ。奇遇だね。私もこんな私が好き!」
一球入魂、全力で投げた直球はあっさり打ち返されてホームラン。俺は心のマウンドに崩れ落ちた。
これはもうフルスイングで振られたってことだ、潔く負けを認めよう……そう納得しかけたのに、彼女は俺を逃がしてくれなかった。握ったままの手をぶんぶんと横に振りながら「冗談よ」と無邪気に笑う。「私も藤井君のことが好き」と、それこそ冗談みたいに告げる。
いたずらっ子のように細められた瞳と、軽やかな笑い声。俺はその態度に少しむっとした。こんなシチュエーションでも弟扱いだなんて、プライドが許さない。
だったら、と俺は彼女の手を解き、用意していた最終兵器に手を伸ばした。もぞもぞとお尻を動かし始めた俺を、彼女は興味津々といった表情で見守る。
俺が座布団の下に隠しておいたのは、サクラが咲いた証。その紙を取り出して、彼女の目の前に突き付けてやった。
返ってきたのは、予想通りのリアクション。
「――ええっ! なんでっ? だって藤井君、他の学部受かったはずじゃ……」
唖然とする彼女に、俺はしてやったりの笑みで告げた。
「実は俺も、医者になるのが夢だったんだ」
「嘘、ズルイ、信じらんない!」
「黙っててゴメン。落ちたらカッコ悪いから、言えなかった」
俺を可愛らしく罵倒し続ける彼女。言葉とは裏腹にその頬は緩み、瞳には涙まで滲んでいる。同じ夢を目指すライバルの勝利を、心から喜んでくれている。
彼女の優しさが伝播して、胸がじわりと熱くなる。
調子に乗った俺は、ダメ押しの攻撃を仕掛けた。座布団の下に仕込んでおいたもう一枚の薄紙を取り出すと、コホンと咳払いを一つ。
背筋を伸ばし、その紙をゆっくりと差し出しながら、俺は新たな“契約”の提案をした。
「あのさ、もし良かったら、俺にお父さんを説得させてくれないか? 卒業までもう六年、佐倉さんが俺のこと待っててくれるなら……」
◆
その年は、例年より少し早めに桜が咲いた。
満開の桜並木を、俺と彼女は寄り添いながら歩いている。淡いピンクの花びらが、祝福のシャワーとなって俺たちに降り注ぐ。
目的地は、市役所だ。
「ねえ藤井君、本当にいいの? 後悔しない?」
「七海さんはシツコイなぁ。大丈夫だって。俺次男だし、うちの親もなんだかんだ喜んでるみたいだし」
「でも、変な名前になっちゃうよ?」
「縁起良い名前じゃん。どうせなら、今日から下の名前で呼んでくれよ」
「うん……じゃあ、朔君」
あの日二人で名前を書いた紙は、蕾のまま六年。ようやく今日、花開く――。
あらすじでも軽く触れておりますが、こちらは『春夏秋冬』という長編の『秋の章』の主人公・藤井秋都の兄の話になります。頑固親父に反発して家を飛び出した彼がどんな人生を送っているのかを、コミカルなラノベにしてみました。本編の方はドシリアスですが、ラストの空気感は近いかもしれません。