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SunSet 前
例えば美しいと言われるこの空は、かつて弾丸を降らせたことがあったのだ。
阿鼻叫喚の地獄絵図。よくある表現だけれども、あの光景ほどこの表現に似合う光景を、私は知らない。
「蘭さん、今日も空を眺めているんですか」
不意に暗い声が背後から聞こえて、振り返ると二つの透き通った目が、こちらを見ていた。また村の子供たちに仲間外れにされてしまったのか。
「ねえ、蘭さん。俺さ、死んだ方がいいのかなぁ」
彼の家は、言ってしまえば大金持ちだ。この村は地理的な関係で大抵みんな貧しい暮らしを送っていたが、彼の家は例外だっだ。芝生の張った庭がある大きなお屋敷からすればほかの村人たちの家など犬小屋か、よくて倉庫のようなものだろう。そもそも彼はここの村人たちと何もかも違った。まず、肌の色。他の村人たちはみな健康的な焦げ茶色だが、彼のだけは青くみえるほど白かった。そして、目の色。彼を異邦人にしてしまう金の目。うつくしい目だ。しかし、それがまたいっそう彼の異常さを際立てていた。
「今日も言われたんだ。消えろ、って」