志望校判定
学校中お祭りモードだが受験は容赦なく迫ってくる。
文化祭準備で浮かれているところへ、2学期の最初に受けた全国模試が返ってきた。全国模試であるからには全国順位、偏差値が出る。そしてそれだけではない。志望校判定も出ている。1学期とは違いクラス中に緊張感で包まれる。
「次、椿」
名前を呼ばれて緊張の面持ちで先生から成績表を受け取る。席に着いてからそっと結果を覗いた。
成績はまあまあ。苦手だった数学も夏で完全に克服した。最後まで習得しきれなかった理科は少し劣るが、それ以外は概ね良好だった。そのまま期待を抱いて志望校判定の欄を見る。
「嘘……」
全体的な偏差値も1学期から上がっている、少しは判定に変化が出ていてもおかしくないはずだ。
しかし、美令の手にある成績表には「第一志望:N高校―C(あと少しで合格圏です)」という文字が印刷されていた。これは1学期と全く変わらない判定だ。
呆然としている美令の耳にすっかり聞きなれてしまった声が聞こえてきた。
「よ、どうだった?」
そう尋ねてくる元気の表情は明るい。模試の結果を見てなお明るいということは、結果が良かったとしか思えない。
答えたくはないが無視するのも変だ。
「全然よくなかった」
「まじでか!でも椿のよくなかったなんて当てにならないからなぁ~」
にやけながら言う元気が腹立たしい。美令はぶっきらぼうに「そっちはどうだったの」と聞いた。
「いやさ、ついにB判定になったんだよ!」
そう言って見せつけられた紙には、確かに「第一志望:N高校―B(合格圏内です)」という文字が印刷されていた。
美令は驚きのあまり言葉を失った。
なぜ、文化祭の準備やら部活の後輩指導やら勉強以外の活動にも時間を割いていた元気が、好きな人と同じ学校を受けるという動機の元気がB判定なのか。なぜ、全ての時間を勉強に注いできた自分はC判定のままなのか。
呆然としたまま動けなくなってしまった美令に元気が声をかけようとしたところでHRが始まった。
その日、美令は元気から逃げるようにして学校を出た。