03
仁が案内されたのは、予想通り常に厳重に警備されてる女王の部屋だった。
護人になってからもう数年が経つが、一般人の立ち入りが禁止されているこの部屋に足を踏み入れたのは初めてのことだ。女王の部屋に入った者など極僅かだろう。
部屋は普通の庶民である仁には到底想像つかないような物ばかりが置いてある。
見るからに高級そうな白磁の壷。おやあの刀は何だろう。恐らく有名な刀匠が打った物に違いない。
ふと足下に視線を向ければ、恐ろしく細かい花の刺繍が施された絨毯。何だか眩暈がしてきた。
そんなことを考えていると、部屋の奥から人影がやって来るのが見えた。
やっとお出ましか、仁は声には出さず心の中でそう呟いた。
「待たせたの」
そう言って現れたのは、顔を扇で隠した女王凛だった。同時に仁は頭を低くして跪く。
王女は見たことも無い鮮やかな赤色の着物を着ていて、長い髪を何らかの宝石で出来た花の飾りがついた簪でまとめていた。
女王はこれまた煌びやかな刺繍の入った椅子に座ると、仁以外の人を部屋の外へと追い出した。
「・・・・人払いなどして良かったのですか?」
少し顔を上げて仁がそう聞くと女王はかっかっか、と笑った。
「良いのじゃ。扉の外にはちゃんと警備も者を置いておる。それにこの部屋に窓はないのでな。外から侵 入してくる賊もおらんて」
顔が見えないので表情はよく分からないが、存外王女は仁が想像していたよりも人のよさそうな明るい声で笑いながらそう言った。
「お話とは?」
仁は王女よりも早く話を切り出した。王女がどんな人だろうと仁は一刻も早くこの部屋から出たかった。
こんな豪華な部屋にいては息が詰まる。第一、お喋りをしに来たのではないのだ。
すまんの、と王女は仁を呼び出した用件を話し始めた。
「ぬし、<竜の塔>は知っておろう?」
「はい。庶民街の外れにある塔のことなら」
「単刀直入に言うとな、ぬしにその塔へ他の者と一緒に向かって欲しいのじゃ」
竜の塔とは、街外れにあるその名の通り塔の一番上が竜の形をしている塔だ。
いつ誰が何のために作ったのか分からない謎の塔である。そんな塔に行けなんて意味が分からない。
第一、
「しかし、あそこは扉が開かないのでは?」