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剣と魔法の隙間産業的勇者生活  作者: 田丸環
第4章 聖水教会にて
33/43

第32話 ケルベロスの吠える草原

 割り当てられたテントで寝泊まりして、はや2日。

 ソーマ達異分子が加わったことで、行動を共にしている1班の連帯感はあまりよくない。

 第5騎士隊所属の50名とカティヤの班分けは、本隊が19名で、4つの偵察班はそれぞれ8名だった。追加の5名が全て1班に編入され、4名が他班へ移ったため、新規メンバーが過半数を占めているのだ。

(これはこれでやりづらいけど、シシリー達と別々にされるよりはマシだよな)

 ソーマからすればありがたい判断と言えたが、それを決めたクレメッティ隊長は頭が痛かったことだろう。


 8頭の馬が適度な距離を保ちつつ、定期的に北西を巡回していた。

『トラフロ』の騎乗スキルの影響か、乗馬経験のなかったソーマでも躾られた馬なら問題なく操れた。馬に乗れないシシリーだけが、アストレアの後ろにしがみついている。

 先頭を行くのはダグの馬で、後ろを気にかけず、先を急ぐことがたびたびあった。

『ダグは虚栄心が強くてさ。まだ若いから、やる気が空回するタイプなんだ。パウリにすり寄ってるのも、利己的な理由だと見てる』

 というのが、幾度か助言してくれたトビアスの評だった。

 神殿で行われたソーマの試合中も、乱入してきたり、対戦を希望したりと、彼の無茶な積極性が見て取れる。


 合図の呼び笛が聞こえた。

「……長音2回!」

 隊長が断じる中、周囲を見渡した騎士達は、南東の空に上がった狼煙を見る。

「くそっ! よりにもよって4班か!」

 馬首を返したダグを班長が一喝する。

「待て! どこへ行くつもりだ?」

「狼煙の上がった場所ですよ! 決まってるじゃないですか!」

「それは許さん!」

「どうしてですか!?」

 詰め寄るダグに、班長は表情も変えずに告げる。

「シシリー様を危険にさらすことは許さん」

「……俺達はケルベロス退治が仕事でしょう! 仲間達だけ闘わせて、戦いから逃げるつもりですか! シシリー様だって闘うために来たはずです!」

 強く断定されて、シシリーが思わず身をすくめてしまう。当人は危険を覚悟したつもりでも、動じずにいられるかはまた別の話だ。

「これは、クレメッティ隊長の指示だ。従え」

 歯がみするダグが、思わずシシリーを睨みつける。お前のせいで、戦いから遠ざけられていると。


 視線を遮るようにソーマが割って入る。

「シシリーを恨むのは間違ってる。指示を出した隊長や班長を恨むべきだし、どうしても不満なら、俺が枢機卿に伝言してやる」

 シシリーが同行したのは本人の意図ではない。言い出したブロムステット卿や、活躍させたくないパーテライネン卿による綱引きの結果だ。

「……ちっ!」

 舌打ちするも、ダグはそれ以上抗弁しなかった。シシリーの参加が当人の意志だと思い込んでいた、彼の考え違いがそもそもの原因だ。

「じゃあ、どうするんですか、班長?」

「このまま待機だ。いずれ、終了の連絡がくるだろう」

 思いはさまざまで、狼煙のあがった南東を皆がただ眺めている。

 草原と言っても起伏があるため、戦闘状況などはとても見えない。

 事態が判明するのは、次に呼び笛の合図が聞こえた時だろう。


 弛緩した雰囲気の中で、馬が騒ぎ出した。

「どうどう。落ち着け」

 騎士達が乗馬をなだめる中、1頭が甲高いいななきを上げた。

 ヒヒーン!

 叫んだ馬の遠くから、こちらへ向かってくる動物の群れ。

「ケ、ケルベロスだっ! 気をつけろ!」


 混乱する騎士達を尻目に、恐慌を起こした馬がケルベロスに襲われた。

 騎乗していた騎士が地面に投げ出される。

 馬はモンスターとの戦闘には向かないため、あくまでも移動の足として使用されるものだ。

「馬から下りて、シシリー様を守るぞ! ケルベロスを近づけるな!」

 当初の予定を変更して、1班長が部下達に命じる。

 1班が最初に遭遇したのなら、シシリーは本隊との合流を優先し、残りがその場で足止めする手はずだった。しかし、他班が交戦中となって本隊との合流も難しく、シシリーを向かわせるべき安全な場所が存在しない。

 1班長の指示で、ひとりの騎士が呼び笛を鳴らす。

「狼煙は俺が!」

 宣言したダグが発煙筒に火をつけた。


 こちらを囲んでいるのは、6頭のケルベロス。

 体長は2m程度。

 狼と虎を掛合わせたような頭部が、横に3つ並んでいる。1つの胴体に3つの首だ。

 全身が黒い毛で覆われており、赤い房が何カ所かを彩っている。

中級メガ氷結魔法フリーズ中級メガ氷結魔法フリーズ

『比翼の剣』の双方に、ソーマの魔法が付与される。

 やはり驚きの目を向けられるが、ソーマはすでに慣れ始めていた。

「アルマス、属性支配をかけろ!」

「はっ! 聖水支配下テリトリー

 僧侶でもあるアルマス・ティモという騎士が、自分たち周辺を水属性とする魔法陣を描き出す。

 教会内に施されている魔法建築と本質的には同じで、水属性の威力が底上げされるため、ケルベロス相手では非常に有効な手段だ。

魔力障壁陣フィールド

 続いて使用したのは、魔力によって物理衝撃を半減させる結界だ。あくまでも結界なので、効果対象も人間ではなく場所であった。

 障壁陣の境界ぎりぎりに立って、騎士達がケルベロスの牙に対抗する。

 しかし、単純な噛みつきならばまだしも、唾液や血に混じる毒は、剣で防ぎようがなかった。


「俺が敵を引きつけてみる。隙を見て後ろから襲ってくれ」

 そう告げてソーマが行動を起こす。

追風移動フォロー身体加速アクセル浮遊足場フロート

 飛びついてきたケルベロスの牙を、上方にかわしたソーマは、敵の後背へと飛び越えていた。

 群れから孤立したソーマを襲いやすいとみて、襲いかかるケルベロス4頭。

 ガウッ! バウゥゥゥ!

 実数以上に頭部が多いため、その咆哮がいくつも重なっていた。

剣舞踏行進カーニバル

 バフッ!?

 残像を産みだすと、驚いたケルベロスが動きを止めていた。

 ソーマもはたと気づく。囮として突出したはずなのに、分身で警戒させても意味はない。教会を襲った盗賊と違って、ケルベロスにはソーマだけを狙う動機は薄いのだ。

解除オフ

 ソロ戦闘ではないため『悪戯精霊の加護』も使用できない。騎乗していたため『エンジェルステップ』も履いていない。そのため、防御面で頼れるのは自分の脚力頼のみだ。


三段連撃トリプル

 体力の自然回復を待ちながら、初級の体術でケルベロスを突き崩していく。

飛燕連撃スワロー

 ペットを飼った経験がないため、ソーマは動物相手でも過度な思い入れはせずに済む。

 神殿のように制限を課されるでもなく、ただ暴れるだけでいいなら、モンスター戦の方がソーマにとっては気が楽だ。


 1班は総出で2頭のケルベロスを相手どっていた。

「あいつっ!?」

 ひとりで4頭を翻弄するソーマの姿に、ダグが悔しさを見せる。

「こっちにもいるぞ! かかってこい!」

 戦列から単身で駆けだしたダグが、ソーマの方へ向かって行く。

 壁に空いた穴を、アストレアが慌ててふさぐ。これでシシリーが襲われでもしたら、聖水騎士の存在意義に関わる問題だ。

「ダグ! 暴れるつもりなら、勇者と協力しろ!」

 班長の指示は、彼の意志を汲んだというよりも、ダグへの指揮を拒んだ結果だろう。

 そのあたりを察することなく、ダグは我が意を得たりと大声で応じていた。

「はいっ!」


 ソーマに牙をむけていたケルベロスの尻へ、ダグが氷結細剣で斬りつける。

 振り向いた鼻先へ、切っ先を向ける。

全開フル三段連撃トリプル

 奇襲の形となった当初は良かったが、3つ首による絶え間ない攻撃に、ダグの攻勢も長くは続かない。

 細剣も含めた片手剣や短剣は、扱いやすい一方で、ちょっとした制限がある。他の武器と違って中級以上の体術が使えないのだ。初級体術からの発展形に限られてしまい、単純な威力が不足しがちとなる。

 牙や毒を受けて体力を減らし、ダグの内心に焦りが浮かんでいた。

氷結魔法フリーズ氷結魔法フリーズ氷結魔法フリーズ

 間合いから遠ざけようとして、敵の嫌がる魔法を繰り返し発動させる。


「ばかもん! やめんか!」

 班長の叱責も耳に届いていたが、ダグの行動は改まらない。

 体力勝負の戦士達は、もともと魔力が少ない。その場合、体力が尽きて仮死状態となった場合、蘇生猶予時間は魔力残量に左右される。戦士にとって魔力とは命綱とも言えた。

全開フル十文字斬クロイツ

 自分の敵ではなく、ダグを襲っていたケルベロスを双剣が斬りつける。

「じゃ、邪魔をするな! 俺の敵だ!」

 状況をわきまえず非難する声に、ソーマも言い返した。

「あんたが手間取っているからだ。嫌なら、もたもたしてないで、さっさと倒せ!」

 ライトソードでケルベロスを貫き、こじるようにして傷口を大きく開く。

 ケルベロスが断末魔にのたうち回った。

「貴様っ……!」

 にらまれてもソーマは知らん顔だ。


「あの人に回復魔法を」

「後にしてください。今、近づくのは危険です!」

 シシリーを押しとどめるアストレア。

「……アルマス。属性支配でシシリー様とダグに手を貸してやれ」

「はい! 聖水支配下テリトリー

 この魔法は複数発動ができない。

 そのため、皆の足元を覆っていた魔法陣が消え去り、ソーマとダグに届くよう、あらたな魔法陣が出現した。

「ありがとうございます。聖水回復レストア聖水回復レストア

 礼を告げたシシリーが、ダグに向けて治癒魔法をかける。

 本来なら、回復対象者へ接近しなければならないが、同じ聖水支配下にいる場合は距離制限が発生しない。

 アルマス本人も回復魔法は使えたが、この場はシシリーに花を持たせてくれたのだ。魔力の節約という一面もあるだろう。


 ケルベロスに単独で挑んだダグだったが、味方の攻撃力を分散させただけで、客観的に見れば悪手の類だろう。

 その証拠に、班長達は2頭目を屠り、ソーマを狙っていた3頭目に移っていた。

 ソーマ自身はあくまで囮のつもりだが、回避だけでは危険なので、鼻先を斬りつけるなどして、ケルベロスの攻撃を封じていく。

 結果的に、ケルベロスを葬ったとしても、それは彼が望んでの事ではない。ダグは悔しそうだったが。

 残念ながらダグの見せ場がやってくることはなく、無難にケルベロスの掃討が成功した。


「班長! 別行動をとっていても、また襲撃される恐れがあります! 本隊と合流してはどうでしょうか?」

 ダグの意図は透けて見えたが、検討した班長はすぐに頷いた。

「そうしよう。これより我々は本隊と合流する」

 この場を逃げ出していた馬も、笛の音で集まるように躾られている。

 馬を失った騎士がトビアスの後ろに同乗し、馬の数を1頭減らした1班が南東へ向かった。



 ○



 到着した時、地面は白かった。

 生い茂っていたはずの草地が、降り積もった雪で広く覆われている。

 目立つのは、倒れて動かないケルベロスの黒い毛皮や、雪を赤く染めている大量の血だろう。その数は10頭。


「何故ここへ来た!? 待機を命じていたはずだ」

 めざとく見つけて問いかけるクレメッティ隊長に、1班長が負けじと声を張り上げる。

「待機していた北西でケルベロスと遭遇し、6頭全てを討伐しました! 他にもケルベロスがいる可能性があり、シシリー様の安全確保のため、本隊との合流を優先しました!」

「了解した! こちらはロニーとボルイェがやられた。敵はまだ13頭残ってるが、数ではこちらが有利だ。第1班もこれよりケルベロス討伐に加われ!」

『はいっ!』

 隊長に代わって、班長が部下に命じる。

「アルマスとシシリー様は仲間の回復に専念。残りは、ケルベロスをねじ伏せろ!」

『はいっ!』


 いまだ、そこかしこで戦闘は行われている。

 雪の上に聖水支配下の魔法陣が光って、ケルベロスとの戦いを有利に導いている。

 交戦の間をすり抜けるようにして、多くのケルベロスを補足できる位置まで移動するソーマ。

 彼はマジックポーチから、奇妙な短剣を取り出した。

 クリスタルナイフ。刀身が六角柱の水晶となっていて、物を斬れるような形状をしていない。

 それもそのはずで、このナイフの価値は攻撃力ではなく、短剣には珍しい魔法力上昇という恩恵にあった。杖や魔導書を頼れない戦士系にとって、クリスタルナイフの価値は非常に高い。

並列パラ暴風雪魔法ブリザード

 魔法に反応してクリスタルナイフが、青と緑に輝いた。

 空気中の水分が急速に凍りつき、ソーマを中心とした広範囲に、低温の嵐が吹き荒れる。

 実際のところ、威力の心許ない魔法だったが、現状で彼の使える広範囲魔法はこれしかない。敵が火属性であり、聖水支配下という条件ならば、多少は威力の底上げが期待できる。


「聖水支配下の解けているものは、もう一度かけ直しなさい!」

 カティヤの指示が飛ぶと、幾人かがそれに応じて魔法を発動させる。

聖水支配下テリトリー

聖水支配下テリトリー

 隙間を埋めるように展開されるふたつの魔法陣。それを踏んでいるケルベロスの数は11頭だ。

上級ギガ 白 雪 スノーホワイト

 聖女と称される事実も、皆の尊敬を集めるのも、伊達ではない。カティヤが使用したのは上級調整魔法だった。

 数拍を要して彼女の魔法が発動する。

 青空の下、白い雪がしんしんと降り注ぎ、再び草原を白く塗りつぶしていく。

 調整の目的はソーマの暴風雪魔法同様に、長時間、広範囲、連続ダメージを狙ったのだろう。

 ダメージ回数だけは暴風雪魔法が優っているものの、効果範囲も、持続時間も、魔法攻撃力も『白雪』の方が上だった。特に最終的なダメージ総量は桁違いだ。

 補足しておくと、風属性特有の効果を組み込んだ並列魔法では、水属性を3倍に掛合わせる純粋な上級魔法に及ばないのは、当然の結果と言えた。


 カティヤの魔法を受けて、7頭がその場に倒れている。

「残りは6頭だ! 油断するな!」

 隊長が仲間を奮起させ攻勢に出る。

「倒しましたっ!」

 喜色を混じえた若手の声があがった。

「こちらもです!」

 聖水騎士達が攻撃魔法の範囲内にいても、大きなダメージを受けていないのは、『神の加護』と呼ばれる効果のおかげだった。

 今回の例で言えば、水属性の騎士達に対して、水属性魔法のダメージが一定値に達しない場合は、無効化されてしまう。ソーマの暴風雪魔法やカティヤの白雪が、断続的な発動形態なのは、その効果も狙っているからだ。


 ここで、遠くから鳥の鳴き声が聞こえてきた。

 残っていた4頭が、戦闘をやめて瞬時に身体を翻す。

感電魔法テイザー

 最後尾のケルベロスにかろうじてソーマの魔法が届いた。

武器投擲スリング

 ビルドから購入した硬化鋼鉄製投擲用短剣を投じて、ケルベロスの足を傷つける。

 残念ながら、追撃まではできなかった。マジックポーチの所持容量は、種別によって圧迫されるため、残りの6本は全て束ねた状態で収納してあるのだ。

 とどめを刺したのは、追いつけた騎士のひとりだった。

 逃げ出した3頭を、人の足で追いかけるのは不可能だ。


「ロニーとボルイェの様態はどうか!?」

 隊長の問いかけに、司祭でもある騎士が応じた。

「魔力に十分な余裕があるため、1週間は仮死状態が続くはずです。次のアルバトロスによる巡回で帰還すれば問題ありません」

 討伐隊に聖女が同行していたため、神殿との間には定期的にアルバトロスが往復しているのだ。

「これ以上、手間取っては聖水教会の威信にかかわる。取り逃がした3頭は、このまま追って確実に仕留めるぞ」

「さっきの鳥の声がなにかの合図だとすると、操っている黒幕がいるかもしれませんよ」

 トビアスが念を押したのは、獣使いを想定したからだろう。

「あの数の、それもケルベロスを使役する可能性は極めて低い。だが、もしも獣使いだったら、なおさら捕える必要がある。加勢しなかったことも考えれば、残りの戦力は多くないはずだ。今は追撃を優先する」


 隊長は、倒れた騎士2人が所属していた2班と4班に残留を命じた。

「カティヤ様もシシリー様も大切なお身体です。おふたりはこの場にとどまってください」

「わかったわ」

「はっ、はい」

 シシリーを後ろに乗せたアストレアもまた同様だ。

 追撃を行うのは本隊19名と1班7名と3班9名の、総勢35名となった。

『トラフロ』でのモンスターは、イベント戦を除けば、敵が逃走するという事態は発生しない。逃走を選ぶのはあくまでもプレイヤー側だけだ。

 こうして、追いかけるのは、ソーマにとって初めての経験である。

 第5騎士隊とソーマは、負傷したケルベロスを追って、東へ向かうのだった。


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