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ぼくはいじめっこ  作者: 文記佐輝
一章『最初の壁』
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『最初の傍観』

入学式を無事に終えた僕は、第二の人生を後悔のないように過ごしたかったが、今日もまた憂鬱な目覚めに舌打ちをついていた。

姉「リンネ〜、ご飯できたってよ〜!食べるぞ〜!!」

リンネ「…はーい…。」

今朝も元気な姉、愛咲ミズハに呼ばれ、だるい体を無理やり起こす。

リンネ「……」

あの日、小学の入学式の日から、ずっと同じ夢を見る。

いや、夢と言うにはあまりにも現実的で、子供である僕には刺激が強すぎるものだ。

それに…、今日は特に嫌な気が漂っている。

リンネ「…記憶、やっぱり無くならないんだ…」

僕はいつものように肩を落とし、階段を降りリビングへ向かう。


リビングについた僕に、ミズハは「遅いよリンネくん。」と、某サングラスのおじさんのように手を組み、僕を見る。

リンネ「ごめんなさい。ちょっと、嫌な夢を…」

ミズハ「今日もなの〜?

仕方ないな〜!今夜だけは、お姉ちゃんが一緒に寝てあげよう!」

リンネ「あ、全然大丈夫です。」

ミズハ「ガーンッ!?…オネェチャンサビシイ…」

変なことを言うミズハが悪いのだろうと思いつつ、僕は用意された朝食を前に、合掌して食べ始めた。

母「いっぱい食べるのよ、リンネ。」

黙々と食べ始めた僕に、優しく声をかけてくれた母は、大盛りのサラダを僕の前に置いた。

それを見た父は飲んでいたコーヒーを吹き、むせた。

父「おいおい!流石に多すぎるだろ!リンネが緑になっちまうよ!」

母「緑になっても、私たちの可愛いリンネよ?」

父「それはそう!だけど流石にこれは多すぎるって…!」

朝から仲のよい場面を見せつけられた僕ら姉弟は、目を背けご飯を食べた。

父「放置は流石に酷くない??」

なぜか寂しそうに僕らを見る父と母に微笑みかけ、僕と姉は「どうぞ、続けて」と言うのだった。


ー…

学校へ向かっている僕は、徐々にざわついていく気持ちに気付き、その原因を探るため記憶を漁る。

しかし、小学生の時の事を完璧に覚えることはできるはずはなく、断片的な記憶しか呼び起こせない。

ミズハ「大丈夫?…最近変だよリンネ。」

頭を悩ませていた僕に、ミズハは心配そうに尋ねてきた。

リンネ「…うん、全然平気だよ。」

僕は心配をかけてしまったことに申し訳なさを感じながら、返事を返した。

彼女は何か言いたげだったが、口を閉ざした。

リンネ「…」(…心配かけてばっかだな…)

僕は心のなかで謝罪を述べ、とりあえず、学校へ行くことにした。


学校に着いた僕は、教室が少し騒がしいことに気がついた。

何事かと思い、少しだけ早足で教室に向かう。

リンネ「…!!」

僕の目に写った光景は、僕がなぜか忘れていたいじめの光景だった。

リンネ「…太一っ…!」

太一「おい、書け書け!!」

ギャハハと笑いながら、最初のいじめっ子である太一が、か弱そうな生徒たちに落書きを強要していた。

教室の入り口にいた僕に気づいた太一は、嫌な笑みを浮かべながら近づいてくる。

太一「おい!そこで突っ立ってねぇでこっち来い!」

リンネ「…ん」

太一は僕の服をつかむと、シュウの机の前まで連れてきた。

太一「お前も書けよ!楽しいぜ!」

リンネ「……」

鋭い眼光で睨見つけてくる太一は、「それとも…」と続け、再び僕に、あの質問を投げかけてきた。


太一「お前もしかして、カンナギのこと好きなんだろ…?」


ニタァと笑い、一回目の人生とは違い、僕にだけ聞こえる声でそう言ってきた。

リンネ「……」

僕は太一の取り巻きからペンを受け取り、キャップを外す。

太一「…さぁ、書けよ!愛咲!」

リンネ「……」

僕はペンをしっかり握りしめると、取り巻きの一人に向け投げた。

取り巻きA「おい!何すんだよ!?」

太一「…お前…」

僕が反抗するのが意外だったのか、太一は動揺を隠しきれていなかった。

リンネ「…畑野、僕はね…。こんなしょうもないことはしないよ。」

太一「…はぁ?」

プライドを傷つけられたのか、太一は顔を真っ赤にして胸ぐらをつかんできた。

それでも僕は、いたって冷静に、太一の睨みに睨み返す。

リンネ「汚い手を離してくれるかな?」

太一「…っ!?」

彼は大人しく言う事を聞いてくれた。

どうやら彼のなかで僕は、親と同等もしくは、それ以上の脅威だと感じたらしい。

僕は乱れた服を整え、一旦廊下へ出た。


リンネ「……」

正直、恐怖心は無いわけではない。ただ、僕は僕に腹が立っていたから、先のように反抗ができたのだ。

なぜ一回目で、彼を止めることが出来なかったのか、自問する。

確かに、一回目での僕は、自身の身の保証のために立ち回っていたことは違いない。しかし、反抗出来なかったのかというと、きっと出来ないわけではなかったはずだ。

リンネ「…忌々しい…」

シュウ「何が忌々しいの?」

僕が自問していると、いつの間にか隣に来ていたシュウに声をかけられた。

少しだけ驚いたが、僕は「おはよう、シュウ」と挨拶だけした。

シュウは軽く笑い、「おはよう、リンネくん。」と返してくれた。

とても純粋で、無垢な笑顔。

こんなにも愛おしい女の子を、僕は第一の人生で、見捨ててしまった。

リンネ「…ごめんね、シュウ。」

僕は無意識に、彼女に謝罪を述べていた。

彼女は頭の上にハテナを浮かべながらも、「大丈夫だよ」と返した。本当の、愛おしい。


今なら、まだ彼女の心が汚されていない。

今なら、彼女が悲しむことはない。

今度は、僕はが助けることができる。


リンネ「…シュウ、君のことは、僕が守るからね。」

彼女の頬に手を当て、僕はそう誓う。

くすぐったそうに笑いながらも、彼女は僕の手を優しく包み、

シュウ「うん。じゃあ、リンネくんに守ってもらうね。」

と、愛くるしい笑顔で言うのだった。


ー…

畑野はたの太一。

彼の親は大手企業に勤め、その地位は幹部レベルだとか。

プライドが高く、その影響から太一は、自身よりも身分の低い、立場の弱い者たちを虐げるガキ大将へとなった。そして、親のプライドの高さも持ち合わせる人間になっていた。

リンネ「…僕一人で彼を止めるのは難しい、か。」

昼休憩になったので、僕は第一のいじめっ子である、太一の対策を考えていた。

シュウ「リンネくん〜!私も、そこに行っていい??」

リンネ「ん?…高いとこは平気なの?」

シュウ「平気だよぉ!私、お父さんからお猿さんって言われてるから!」

リンネ「…へぇ。じゃあ、僕が手伝わなくても大丈夫だね。」

元気いっぱいな彼女に癒されつつ、メモ帳を閉じ、上着のポケットに隠す。


ほとんどの小学校ではあまり見ないジャングルジムに、ひょいひょいっといとも容易く上がってくるシュウに感心しつつ、頂上まで来る彼女を見守った。

リンネ「そこ、濡れてるから気をつけて。」

シュウ「ん!わかっ…」

彼女が返事を返そうとした時、足が滑ったのか、体勢を崩した。

リンネ「…シュウ!!!」

全身から血の気が引くのを感じ、僕はすぐに動いたが、彼女の手を掴むことができなかった。

シュウは、恐怖をその目に宿し、真っ逆さまで落ちようとしていた。

リンネ「シュウーー!!!」

手を伸ばすが、やはり届かず、僕は彼女が落ちていくのを見ることしかできなかった。




落ちていくシュウを見ていたはずだったが、彼女は不思議な体勢で落ちずにいた。

リンネ「…ぇ?」

シュウ「…ぁっ?」

戸惑う僕とシュウに、声をかける者がいた。

???「…は、早く登ってくれるかな…?」

苦しそうな声を聞き、彼女は体を全力で起こし、縄につかまる。

僕はシュウを引き上げると、彼女の下にいた者を見た。

リンネ「…幸輝くん?」

そこにいたのは、第一の人生で世話になった男子だった。

幸輝「…あんまり急いで登るなよ…。俺がいなかったら、落ちてたんだからな。」

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