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ぼくはいじめっこ  作者: 文記佐輝
序章『僕がやり直すまで』
3/5

『遡る』

「…終わったか?」


廃校の屋上にいた僕に、よく知った男がやって来た。

彼のことを見ず、僕は月を見続ける。


「…まだ終わりじゃないよ、まだ、一人残ってる…」


「アレが最後じゃなかったのか…。後は誰が残ってんだ?」


彼はため息をつきながら、僕の隣に座る。


「…安心して、後は僕一人で出来るから…」


「そうか?…なら、そろそろ俺も行くか…」


「死なないよね…?」


「死ぬかよバァーカ…。そんな勇気がありゃ、楽なんだろうけどよ…」


軽く笑った彼は、スマホでとある場所へ電話を始めた。

僕はそれを聞きながら、最後の一人を、どう殺ろうかと考えていた。

しばらくして、電話を終えた彼は、スッと立ち上がると背伸びをした。


「…まぁ、なんだ…。…あんまり無理すんなよ…」


「……」


僕はそれに応えず、登りきった月を眺めた。

彼はそれ以上何も言わず、その場を去った。

屋上にのこった僕は、しばらくしてから立ち上がり、太一の倒れるグラウンドに目を向ける。


「…あの世で待っていてよ…、僕もそっちに行くからさ…」


そう告げ、僕は最後の目標を見るため、家へと帰った。


ー…

「…やぁ、…最後はオマエだよ…」


「……」


ソイツは何も言わない。僕のナイフを見ても、なんの動揺もない。

僕は、手に握られたナイフを見つめ、もう一度ソイツを見つめる。


「…なぁ、オマエはなんで助けなかったの…?」


「……さぁ?」


問いかけには答えるソイツは、特に悪びれる様子はない。


「…いつも見るだけで、助けにもはいらなかったのは、怖かったからか…?」


「…そうだ…」


しっかりと僕の目を見据え、全てを諦めるような眼光を僕に見せる。


「…傍観者は楽だったか?」


「…どうだろう…、僕は楽じゃなかったかな…」


「…どうして?」


「…僕は、助けることで僕が狙われるんじゃないかって…、怖くて動けなかったんだ…。

…ずっと罪悪感がすごかったよ…、押し潰されてしまいそうだった…」


ソイツは、そう言うと、手に持っていたナイフを手首に構えた。


「…リストカット…、うまくいけばいいね…」


「…うまくいかなくても、僕は構わないよ…」


………


「…けど、ここでするのは止めようかな…。大家さんに迷惑が掛かっちゃう…」


僕はナイフを下ろし、綺麗に掃除をした部屋を最後に見納め、最低限の荷物で近くの山に向かった。


「…ここなら、警察に発見されなくても、熊のエサぐらいにはなれるかな…?」


僕は微笑すると、ナイフを取り出し、ゆっくりと手首に押し当てた。

血がよく巡る血管に刃を立てる。


「…そろそろ、いくか…」


そう言い、僕はナイフを突き刺し、痛みに耐えながら肉を切り裂き血が流れ出るのをその目で見た。


痛みはかなりの時間続いたが、それも意識が途切れるよりも早く失せ、綺麗な夜空を眺めながら、その命を終えた…。


…そのはずだった…。


ー…

???「ー?リンネ?リンネ〜?」


懐かしいその声は僕に、死んだということを十分に証明してくれるものだった。


リンネ「…姉さん…」


僕が中学生の時、姉さんは修学旅行へ行く道中に、事故に遭いその人生を終えてしまった。

まさか、自分を迎えに来るのが姉さんだとは思ってもみなかった僕は、ゆっくりと目を開く。


???「リンネ〜?昨日はちゃんと寝た?くまひどいよ〜」


久しぶりに見た姉さんは、どこか若々しく見えた。


リンネ「…姉さん?」


姉さんは高校生で亡くなったのに、今目の前にいる彼女は、それよりもはるかに若い、まるで小学生の時の姉さんに見えた。

僕は辺りを見渡し、一体ここがどこなのかを確認する。


リンネ「…え…?」


そこでようやく、ここがかつての活気あふれる南勇石みなみゆうせき小学校だった。


リンネ「これって…、どういう…」


姉「いつまで寝ぼけてるの?

そろそろ入場なんだから、もっとシャキッとしなさい!」


姉さんは僕の背中を叩く。

ジンジンと痛む背中を、成長途中の腕でさする。


リンネ「入場?なんの…」


姉「何のって…、今日はリンネの入学式でしょ?!」


そう言われ、ようやく僕は思い出した。


ー…

入学式を無事に終えた僕は、二度目となる自分のクラスで、生前にも見た担任の挨拶とこれからの流れを聞いた。


アズマ「ーということで、今日はこれで終わりだから、気をつけて帰るんだぞ〜」


クラスメイト達「はぁーい!」


本当にあの時のままだった。

僕はクラスメイトがはしゃぐ姿を見ながら、次々と教室から出ていくのを見守った。

そして、あの日のように、この教室に残った僕と…


???「…帰らないの…?」


リンネ「…君こそ、帰らないの?」


そんな僕に話しかけてきた、心の優しい少女。


???「…私の家族は…、今日来てないから…」


彼女は寂しげにそう言い、背負っていたランドセルの肩紐をキュッと握りながら、可愛らしく笑った。

その顔を見ると、僕の心は締め付けられた。


???「…ねぇ、君の名前は?」


リンネ「…僕は…」


彼女の問いかけに応じようとした時、教室の入り口から顔を覗かせた姉さんが僕を呼んだ。


姉「リンネ〜、そろそろ帰るわよ〜」


姉さんは彼女の顔を見ると、少しだけ目を細めた。

彼女は姉さんの視線に気づき、お辞儀を素早く済ませると、急ぎ足で教室を出て行った。

それを見た僕の足は、あの時とは違い、瞬時に動いていた。

教室を勢いよく飛び出し、彼女を呼びとめる。

周りの目など気にせず…


リンネ「僕の名前はリンネ!愛咲あいざき リンネ!

君の名前は…!!」


きっと変な奴だったろう。

まだ一日しか、いや、まだ数分しか話していないのに、こんなに必死に叫んで。

らしく無いことは僕が一番よく理解していたが、もう後悔はしたくなかった。だから僕は、彼女を止めた。


???「…リンネ君…、良い名前だね!」


彼女は僕に、勿体ないほどの笑顔を見せながら、応えた。


「私はシュウ!神凪かんなぎ シュウだよ!リンネくん!」

今回のメイン

愛咲あいざき リンネ

神凪かんなぎ シュウ

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