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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第4章 課税の街

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54 やっておしまいなさい!

 助さん格さん、やっておしまいなさい!


 なんて言うまでもなく(それに、言うとしたら私じゃなくて、ジークなんだろうけど)、地下室での戦闘が始まった。


 人数でいえば、こちらの圧倒的不利。けど、どうやら相手の剣の技量は、それほど高くないらしい。ジークたちの振るう剣で、相手の兵士たちは次々に倒されていった。あれ、倒れたと思ったら、起き上がったな。血も流れてない。そうだ、今回はできれば峰打ちにしよう、と決めてたんだっけ。

 ここでまたしても、「あるある」の登場だった。黄門様御一行が悪役たちを峰打ちにしている(確認したわけではないけど、たぶんそうだよね)のは、TVドラマだと血が流れたり、まわりに死体がごろごろ転がってしていたら視聴者に嫌がられるから、だと思っていた。けど、これにもまた、理由があるのかもしれない。

 さっきも言ったけど、私たちはこの場では、間違いなく不審者だ。目の前に不審者がいて、上司に戦えと命じられたら、兵士が私たちに剣を向けてくるのは当たり前の話。そんな人たちまで問答無用に殺してしまうのは、さすがに気がとがめる。

 そう言う考えもあって、ジークは、今回は戦いになってもできるだけ峰打ちにして、あんまり大事(おおごと)にはするな、って言ってたんだ。だから、今回は私の出番はなし。私、攻撃魔法の威力調整って、あんまり得意じゃないんだよね。強くするのは簡単だけど、弱くするのって難しい。もちろん、みんなが危なくなったら、使うけどね。

 ちなみにだけど、西洋の剣は日本刀と違って両刃だから、正確に言うと「峰」は無い。ジークたちは、剣の腹の部分で打ってるみたい。けど面倒だし、結果は同じなので、「峰打ち」と呼んじゃいましょう。


 ん? 兵士の一人が、少し後ろに下がった。と思ったら、そこで何やら詠唱を始めたっぽい。どうやらあいつ、攻撃魔法が使えるみたいね。そこで私も、急いで詠唱を開始した。


「<目的地としての運命は

  一義的な存在論的基礎に隔てられる

  たとえそれが最後の審判であっても

  もはや到達することはない>」


 詠唱と共に、私たち四人のまわりに、不可視の壁のようなものが作り出されていく。申し訳ないけど、ハイラインは除外だ。だってあいつ、どこにいるのかわからないんだもの。


「<それは本来的歴史性の逆転

  原因に対する結果の先行

  そして勝利を産み出す>


  ……<リフレクト>」


「 ……<サンダーボール>!」


 私の詠唱が終わるのとほぼ同時に、魔法を詠唱していた兵士が魔法名を叫んだ。そして白く輝く雷の弾が、トライデン目がけて飛び出した。けれど着弾する直前、その弾ははじき返されて、魔法を使った兵士の元に戻っていった。小さな稲光が上がり、兵士は悲鳴を上げて体を痙攣させ、その場に崩れ落ちた。

 

「……君は魔法を使うな、と言っておいたはずだが」


 自分の前に立つ兵士をにらんだまま、ジークがこう言った。こっちを見てないけど、にらみたい相手は間違いなく、私だろうな。私は、軽い調子でこう答えた。


「こっちから仕掛けたわけではないんやで。相手の使った魔法を、反射させただけや」


 「リフレクト」は、光魔法の系統に属する防御魔法だ。名前の通り、敵の攻撃魔法を防ぐだけでなく、術者の元にはね返してしまうという効果がある。強力な魔法が相手だと魔力の壁が壊されて、はね返せないけどね。でも見た感じ、相手側にそこまで強い魔術師はいなさそう。これでしばらくの間は、敵の魔法攻撃は防げるだろう。

 あ、メルヒオールだけはちょっとヤバそうだけど、彼はまだ傷ついた手を押さえてうつ伏せになったままで、戦闘には参加していないので。


 そうしている間にも、敵の数はどんどんと減っていった。そしてとうとう、無傷で立っているのはオーガストただ一人となった。

 それまでは、倒されていく兵たちを「たった四人を相手に、何を手こずっておる!」「ふがいない! それでも我が軍の兵士か!」なんて怒鳴りつけていたオーガストも、怒鳴る相手がいなくなったと知ると、急にあわあわとうろたえ始めた。

 そして、倒れた兵が落としていた剣を拾った彼は、この時になってようやく、正面から私の方を見つめた。そして、驚愕の表情を浮かべた。


「なに! 貴様は、まさか……!」


 あんぐりと口を開けるオーガスト。それを見たジークは、構えていた剣を下ろして、一歩前に出た。


「どうやら、私の顔に見覚えがあるようだな」

「え? ……も、もしかしてあなたは、ジークベルト殿下……?」

「ようやく気がついたか。それでオーガスト子爵、君はここで、何をしようとしていたのだね? なぜ私たちに、刃を向けた?」

「そ、それはその……まさかあなた様とは、気づきませんで……おまえたち、何をしている! この方は、我が国の第一王子殿下だぞ。控えい! 頭が高い!」


 そう叫びながら、オーガストはあわてて片膝をついて頭を下げ、王族に対する礼の姿勢を取った。倒れていた兵士たちも、なんとか体を起こして、オーガストに(なら)った。ジークは、彼らの姿をぐるりと見まわすと、ゆっくりとうなずいて、


「うむ。さて、オーガスト子爵。君たちが王族である私に刃を向けた件については、こちらも身分を開かさなかったという落ち度があるゆえ、不問としよう。だが、この部屋で行われてきた行為、これは見逃すことはできない。

 国や領民のためではなく、ただ自らの望みのために高額な税をかけ、あまつさえ数十人の領民を犠牲にして、魔術の実験材料にした。そのために、無辜の領民に冤罪をかけ、連れ去ることまでした。罪状は明白かつ悪質であり、とうてい見逃すことはできない。

 貴族の領地は、王家からそれぞれの貴族家に与えられ、統治が任せられた土地ではある。が、それは適切な統治がなされ、国の発展への寄与が期待できるという前提の上での話だ。明らかな悪政、暴政が行われている場合は、所領の召し上げ、家の廃絶、さらには領主自身の断罪も考えざるをえない。

 残念ながら今回は、その明らかな場合と思われる」


 こう言いながらジークは、下ろしていた剣に再び両手を添えた。


「本来であれば、この一件は王都に報告し、王家からの処断を待つところである。が、今回の卿の行為は、あまりにも醜く、また著しく人道を外れたものだ。どのような弁明の余地もあるとは考えられない。

 そこで、王家の一員である私の判断として、この場で卿の首を落とすこととする。クライトン家の今後については、その存廃も含めて、王家の判断を待ってもらおう。

 せめてもの情けとして、卿を断罪する役は、私自身で行うことにしよう」




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