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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第4章 課税の街

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47/50

47 似たような光景

 マイカウンドの街を出た私たちは、北へと続く道を再び進んでいった。このあたりは山岳地帯とあって、街から街の間の道は、どこもたいていは山道。時には、はっとするような絶景もないことはないけど、だいたいは以前にもどこかで見たことがある感じの、似たような景色が続く。

 似たようなのは、景色だけでなかった。しばらく歩いた後で少し休憩しようとなった時、私は以前にもどこかで聞いたことがあるような台詞を耳にしていた。


「聖女様、どうぞこちらへ」


 声の方を見ると、道沿いにある岩に、ぶ厚い布がかけてあった。その声は続けて、


「それにしても、先ほどの光魔法もお見事でした」

「いや、お見事っちゅうほどのもんでもないで。ゾンビが一匹出てきて、それにライトショットの魔法を使っただけなんやから。たいしたことはしてない」

「それでも、俺たちが倒すよりは、あのアンデッドにとっても良かったはずです。浄化されて、天に帰ることができたんですから」


 私は、たぶんちょっと困ったような顔に見えるだろうな、という感じの笑顔を浮かべた。ここでエイブラムが、これで何回目かになるセリフを口にした。


「困りますよトライデンさん。そういうのは、ぼくがやりますから」


 ……そうなんです。布を敷いてくれたのはエイブラムではなく、トライデンでした。マイカウンドでの騒ぎの後、どういうわけか、こうなってしまったんだ。

 まあ、恩人が助かったんだから、感謝してくれるのはわからなくはない。結果的にマーサさん助命の切り札になったアルマンの逮捕、あれをハイラインに頼んだのは私だったし、そもそもハイラインを仲間? にしたのは私、ってことになってるからね。けど、だからって私を聖女扱いするのは、ちょっと違うと思うよ。


「聖女様のお世話係は、ぼくなんですから」

「そんなの決まってないだろ。それ以前におまえ、聖女様を聖女様って呼ぶんじゃない」

「言ってることがおかしいですよ。トライデンさんだって、同じじゃないですか」

「俺はおまえと違って、他の人がいるところでは、聖女様なんて呼ばんぞ」

「ぼくだって、できるだけ注意するようにはしていますよ。でも、心の中で思ってることが出てきてしまうのは、仕方がないじゃないですか」

 :


 私とジークがあきれた視線を投げる中、二人の不毛なやり取りは続いた。まあ、仲良きことは美しきかな、と思っておくことにしよう。

 これも、ちょっと違うような気がするけど。



 こうして私たちは次の街、ヘリータウンに到着した。ここまで来ると、そろそろゴールも近くなってきたなあ、と嫌でも感じられてしまう。というのは、ヘリータウンはカーペンタリア王国と魔王国の国境線に、一番近い街だからだ。


 あー、もうゴールが近くなっちゃったのか。


 正直な話、めっちゃ嫌だった。

 ここまで、魔物とは戦ってきたし、魔法で倒したこともある。けど、私はまだ、人を倒したことはなかった。パーティーとして山賊と戦ったことはあるけど、そういうのはジークやトライデンに任せていたんだ。申し訳ないけど。やっぱりね、人を殺すのって、気持ちとしてはちょっと違うからね。

 でもこのまま行ったら、最後には、魔王と戦うことになってしまうかもしれない。

 運が悪ければ。まだ戦争が続いてれば。そして魔王が前線に出ていなくて、私の前に現れれば。そうならなければいいんだけどな。なんとかそれまでに、戦争が終わってくれますように……。


 マイカウンドとは違って、ヘリータウンの門の前には、長い行列ができていた。

 どっちかというと、こういう光景の方が普通だ。街に入る際には、その人が不審者やお尋ね者ではないか、門兵がチェックするものだから。ただ、マイカウンドで行列が0人だったのもおかしいけど、ここの行列も、ちょっと長すぎる気がする。

 っていうか、進み方が遅い。人数は三十人程度でたいした人数ではないのに、一人が入るのに、すごく時間がかかっているんだ。


「なんか、あったのかな。えらく手間取っとるみたいやけど」

「ここは国境の街だから、厳重な審査をしているのだろう。ただそれにしても、時間をかけすぎだとは思うが」

「あれ、もしかしてあんたら、ここは初めてかい?」


 私がジークと話していると、私たちの前で列に並んでいた二人組の男の人が声をかけてきた。一人は四十代くらい、もう一人はまだ二十代前半くらいだろうか。二人とも、けっこうたくましい筋肉質の体つきで、冒険者風の革鎧を装備している。若い方の男の人は、狩ってきたばかりらしいボアの死体を背中にかついでいた。


「ああ、南のマイカウンドから来たんだけどな。いくらなんでも、時間がかかりすぎじゃねえか? いくらここが、国境の近くにしたって」

「違う違う。警備で時間がかかってるんじゃないよ。見てみろ、列の先頭にいるのは商人の馬車だろ? おおかた、関税の高さについて門番に不満を言っているか、でなけりゃ、税がかかる品かどうか、荷物を一つ一つ調べられてるんだろう」


 トライデンの質問に、ルーカスさんという年上の方の男の人が、親切に答えてくれた。

 彼の説明によると、以前はこの街もこんなことはなかったらしい。けど数年前、領主が代替わりして今の領主になってから、様子が変わった。税金が格段に上がって、それと同時に、街の人への締め付けも厳しくなったんだという。


「最近になって、また税金が上がったんだよ。特に、街に品物を持ち込む時の税金が跳ね上がってね。だからああして、商人がトラブってるんだ」

「代替わりで変わった、って話やけど、それにしてもどうしてそんなに税を取っとるんや? お金が欲しい、ってのはもちろんそうなんやろうけど、それを何に使っとるんやろね?」


 私の問いに、若い方の男性は苦笑いを浮かべながら答えた。


「それがなあ。ちょっと情けないことなんだが……領主様の、縁談のせいなんだ」




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